まーさ
体を自由に動かせない赤ちゃんには、生きるために必要な反射が備わっています。
反射と聞くと、ベルの音でよだれを垂らすパブロフの犬の「条件反射」を思い出す人も多いですね。条件反射とは、経験に基づく条件があると自然に体に起きる反応のことです。
たとえば梅干しを見るとよだれが出るのは「条件反射」ですが、熱いものを触ったときに手を引っ込めるのは、経験と関係ない「無条件反射」と言います。
そんな赤ちゃん特有の無条件反射を「原始反射(primitive reflexes)」と言います。原始反射が起こるのは、未発達な赤ちゃんの成長や生命維持を反射で助けるためです。
そのため赤ちゃんに適切な原始反射が起こらなければ、何かの障害を抱えている可能性もあります。つまり、原始反射は赤ちゃんの成長を確認する重要な反応なんです。
今回は、赤ちゃんの原始反射の種類や特徴、また原始反射の動画をご紹介しますね。
目次
原始反射と姿勢反射の違い
赤ちゃんの反射には、原始反射と姿勢反射があります。
原始反射とは
原始反射とは、脊髄、脳幹に反射中枢をもち、ある刺激に対して中枢神経系を経由して起こる反射行動のことです。
原始反射の多くは、赤ちゃんがママのおなかの中にいるときから備わってますが、一定時期をすぎると徐々に消失します。
原始反射は赤ちゃんの発達に欠かせない反射行動で、原始反射が備わってなかったり、消失しない場合は、発達の遅れや脳や神経系の障害が原因の場合があります。
姿勢反射とは
姿勢反射とは、赤ちゃんが生まれたときには備わっていませんが、成長に伴って発現する反射のことです。
脊髄から橋の神経中枢による筋緊張反射(原始反射)と姿勢や平衡を維持するための反射に分けられます。つまり、一部原始反射も含まれます。
姿勢反射も発達に欠かせない反射行動で、一定時期を過ぎて発現しない場合、成長過程で消失したり、反応が弱い場合は発達の遅れや障害が原因の場合があります。
原始反射 の種類
モロー反射
モロー反射(moro reflex)は、赤ちゃんが物音や温度変化などに驚いたとき、不安を感じたときに両手を大きく伸ばして抱きつこうとする反射行動です。「抱きつき反射」「驚愕反応」とも言います。
これは昔人間が木の上で生活をしていたときに、木から落ちそうになってしがみつく防衛本能の動きが残っていると考えられています。
「抱っこで寝た赤ちゃんを布団に置いたらビクッとして起きちゃった……。」これも憎きモロー反射です。モロー反射の消失時期は、生後4ヶ月ごろです。
歩行反射
歩行反射は赤ちゃんが歩くための足の動き、必要な機能の発達の助けとして起こります。歩行反射(原始歩行)の消失時期は、生後1-2ヶ月ごろです。
定位反射
「踏み出し反射」「台またぎ反射」「台乗せ反射」「定位反応」とも言います。
定位反射は、転びそうなときに足を踏み出しす防衛反応として起こります。定位反射の消失時期は、生後5-6ヶ月ごろです。
把握反射
手掌把握反射は手に触れたものをつかもうと指を握り込む反射行動で、足底把握反射は足の裏に何かが触れたときに足の指をギュッと握り込む反射行動です。
この反射は木の上の生活で枝を掴む記憶が残っているためと言われます(足も同様)。手掌把握反射の消失時期は生後4-6ヶ月、足底把握反射の消失時期は生後9-10ヶ月ごろです。
バビンスキー反射(足底反射)
バビンスキー反射(Babinski reflex)は先の細いもので、爪先に向かって足の裏をなぞることで足の親指が甲側に曲がり、他の4本の指は扇状に開く反射行動です。
バビンスキー反射は神経系が発達することで消失しますが、2歳以降もバビンスキー反射が現れる場合は、運動神経の
屈曲反射
屈曲反射は脊髄反射の代表的な反射で、消失時期は生後3-4ヶ月ごろです。
潜水反射
潜水反射があるため、水中出産やベビースイミングが推奨される場合もありますが、赤ちゃんは意識して呼吸を止めてはいないので、大量に水を飲んで溺れる危険性もあります。
潜水反射の消失時期は、生後4-6ヶ月ごろです。
ギャラン反射(背反反射)
ギャラン反射(galant response/galant reflex)は、赤ちゃんの背骨の脇をなでたときにぴょこんと揺れる反射行動です。
背骨の右側は右、左側は左に動くので可愛いです。「ガラント反射」「
ギャラン反射は胎児期から備わっていて、子宮内でギャラン反射を起こして体のバランスに必要な筋力や組織を発達させます。ギャラン反射の消失時期は、生後4-6ヶ月ごろです。
バブキン反射
バブキン反射(Babkin’s reflex)は、赤ちゃんの両方の手の平を押すことで、口を開ける、頭を前に突き出す、頭を回転させるなどの反応をする反射行動です。
バブキン反射の消失時期は生後1週間ごろです。バブキン反射が起こらない場合は、脳性麻痺や発達障害を疑う必要があります。
非対称性緊張性頸反射
赤ちゃんが顔を向けて物を見たときに、手足を伸ばして触ろうとする行動を助けます。非対称性緊張性頸反射の消失時期は、生後4-6ヶ月ごろです。
対称性緊張性頸反射
これは赤ちゃんの四つん這い姿勢を助ける反射で、視界を広げるために赤ちゃんが頭を上げると腕が伸び足が曲がります。対称性緊張性頸反射は生後4-6ヶ月に出現し、生後8-12ヶ月に消失します。
手掌オトガイ反射
手掌オトガイ反射は1-2歳で40%が消失し、以後9-14歳までに完全に消失します。
9-14歳以降でオトガイ筋の収縮が見られる場合は、脳内病変を疑う必要があります。手掌オトガイ反射の誘発方法と判定は以下を参考にしてください。
報告者 | 方法 | 反射陽性の定義 |
---|---|---|
Little and Masatti | 綿棒で母指球をしっかりとこする | 2回以上オトガイ筋が収縮 |
Jacobs and Gossman | 母指球を鍵で勢いよくひとこすり | 同側のオトガイ筋が収縮 |
Marti-Vilalta and Graus | 別の時間に2人の験者が母指球を示指の爪でこする | オトガイ筋の強い/弱い収縮 |
Otomo | 母指球を鍵でこする | オトガイ筋が5回連続で収縮する |
手掌おとがい反射とは – goo Wikipedia (ウィキペディア)
哺乳反射 の種類
赤ちゃんが母乳を飲むために必要な反射を「哺乳反射」と呼びます。ただし
口唇探索反射
誰も教えなくても、赤ちゃんがおっぱいを口に含むことができるのは口唇探索反射があるためです。口唇探索反射の消失時期は、生後5-6ヶ月ごろです。
補足反射
補足反射の消失時期は、生後6ヶ月ごろです。以下は保健師さんがあげている動画で、口唇探索反射と補足反射を確認できます。
吸啜反射
吸啜反射の消失時期は、生後5-6ヶ月ごろです。
授乳で痛い思いをするママはたくさんいますね。「もうちょっと優しく飲んでよ……。」と思いますが、力強く乳首を吸う反射があるため、赤ちゃんは成長できます。
舌挺出反射
赤ちゃんは食べ物を咀嚼、嚥下する力が未熟なので、押し出し反射で誤飲のリスクを予防します。この反射は哺乳瓶では起こらず、授乳に影響がないことが分かっています。
舌挺出反射の消失時期は、生後5-6ヶ月ごろです。舌挺出反射の消失は、赤ちゃんが離乳食を始めるサインの1つになります。
姿勢反射 の種類
ランドウ反射
ランドウ反射(Landau reaction)は、うつ伏せ姿勢の赤ちゃんの胸部を支えて持ち上げ、顔を上げると脊柱と足が伸び、顔を下に下げると脊柱と足が曲がる反応です。
ランドウ反射は、生後6ヶ月ごろに出現し、2歳半まで続きます。
パラシュート反射
パラシュート反射(parachute reaction)は、赤ちゃんをうつ伏せ状態で抱き上げ、頭を下にしながら徐々に下ろすと手を出して体を支えようとする反射行動です。「保護伸展反応」とも言います。
この反射は自分の身を守る防衛の反射で、生後7-8ヶ月ごろから反射が出始め消えることはありません。わたしたち大人も、転びそうなときに無意識に手が出ますよね。
緊張性迷路反射
仰向けとうつ伏せを繰り返して体のバランス感覚を養うために起こります。緊張性迷路反射は生後5-6ヶ月ごろに統合され、徐々に消失しますが、消失しない子もいるそうです。
前方緊張性迷路反射が残る子は、うつ伏せ寝でよく眠る傾向があります。うつ伏せ寝をする子は手足を曲げて小さくなって眠りますよね。
引き起こし反射
引き起こし反射(traction response)は、仰向け状態の赤ちゃんの両腕を持ってゆっくり体を起こすと、自分から肘など四肢を曲げようとする反射行動です。
引き起こし反射がわかりやすいのは、首がすわってきたときです。首がすわると、両腕を持って体を起こしたときに頭を首と平行に起こしてついてきます。
生後6週ごろには引き起こされたときに頭がついてくるようになり、生後20週ごろには頭が体といっしょに起き上がるようになります。
立ち直り反射
立ち直り反射(neck righting reaction/body righting reaction)は、頭部、肩部、体幹、腰部を正しい位置に保って、自動的に正常な姿勢に修正する反射です。
体がねじれていた場合、もとに戻そうとするので「立ち直り反応」とも呼ばれます。立ち直り反射は、生後4-6ヶ月ごろに発現し、5歳ごろまで継続します。
ホッピング反応
ホッピング反応(hopping reaction)は、赤ちゃんの体を前後左右に倒そうとしたときに足を踏み出す反射行動です。「ホッピング反射」とも言います。
二足での立ち姿勢が崩れた際に反射的に平衡を保とうとする行動なので、つかまり立ちやつたい歩きができれば、ホッピング反応が発現しているということになります。
ホッピング反応は生後10ヶ月前後から現れますが、発現が見られない場合は神経発達や脳発達に遅れが考えられます。