赤ちゃんには生きるためにいろんな反射行動が備わっています。赤ちゃんに大切な反射は、大きく「原始反射」と「姿勢反射」があります。
- 原始反射とは
脊髄、脳幹に反射中枢をもち、ある刺激に対して中枢神経系を経由して起こる反射行動のこと。原始反射の多くは、胎児のときから備わっているが、神経機構の発達に伴って徐々に消失する。 - 姿勢反射とは
姿勢や平衡を維持するために、乳児の成長に伴って発現する反射行動のこと。神経中枢による筋緊張反射(原始反射)と姿勢や平衡を維持する反射に分けられる。
今回ご紹介するのは、姿勢反射の「パラシュート反射」です。赤ちゃんに必要なパラシュート反射とは、どんな反射なんでしょうか。また、出現時期や消失時期はいつなんでしょうか。
パラシュート反射の確認方法、出現しない場合の原因と合わせてお話します。
目次
パラシュート反射(保護伸展反応)とは
パラシュート反射には、「側方パラシュート反射(横パラシュート反射)」と「前下方パラシュート反射」があります。
側方パラシュート反射
側方パラシュート反射とは、赤ちゃんが座位の状態で後ろからわきの下を持ち、左右どちらかに傾けると倒した側の手を伸ばして身体を支えようとする反射行動です。このとき、頭は倒した側の反対に傾きます。
前下方パラシュート反射
前下方パラシュート反射とは、赤ちゃんをうつ伏せの状態で抱き上げ、頭を下にしながら徐々に下ろしていくと、手を出して身体を支えようとする反射行動です。
パラシュート反射の出現理由
どちらのパラシュート反射も自分の身を守る防衛の反射で、人間の身体の中でもっとも大切な頭部が傷つかないように手で体重を支えようとしたり、頭を傾けて守ろうとします。
わたしたちも転びそうなときに無意識に手が前に出ますが、これはパラシュート反射です。赤ちゃんも同じように、パラシュート反射で身体を守る行動をとるわけです。
パラシュート反射の出現時期・消失時期
パラシュート反射はいつから?
側方パラシュート反射の出現時期は生後6-7ヶ月ごろです。赤ちゃんは側方パラシュート反射が出現することで、お座りでバランスを崩したときに頭を守れるようになります。
前下方パラシュート反射の出現時期は生後7-8ヶ月ごろです。赤ちゃんは前下方パラシュート反射が出現することで、つかまり立ちなどでバランスを崩したときに頭を守れるようになります。
パラシュート反射はいつまで?
パラシュート反射は姿勢反射なので消失しません。ただし高齢になると脳が衰えてパラシュート反射の反応速度が遅くなり、転倒事故につながりやすくなります。
パラシュート反射が出現しない原因
6ヶ月健診の側方パラシュート反射、9-10ヶ月健診の前下方パラシュート反射で医師からパラシュート反射異常と診断される場合もあります。その場合、どんな原因があるんでしょうか。
成長の個人差
パラシュート反射の出現時期には個人差があり、多くのパラシュート反射異常は発達の遅れです。そのため他の所見や程度に応じて、1ヶ月程度の経過観察を言われるでしょう。
性格の個人差
性格的に怖がりの赤ちゃんや緊張が強い赤ちゃん、また泣きわめく赤ちゃんは、医師の確認時に腕や手をぎゅっと閉じてしまい、パラシュート反射が出現しないこともあります。
この場合も乳幼児健診の発達が正常であれば、少し様子を見るように言われます。
脳性麻痺や運動麻痺
もし十分な期間の経過観察をしたうえで、赤ちゃんにパラシュート反射が備わっていないと診断された場合は、神経発達の遅れ、脳性麻痺などの障害、また手の開き方がおかしい場合は上下肢の運動麻痺などが疑われます。
もちろん、赤ちゃんが小さい時期のパラシュート反射の遅れだけで、脳性麻痺や運動麻痺などの異常の有無を判断することはできません。
どちらにしろ、乳幼児健診の項目は他にもあるため、何ができて、何ができないのかを見極めて、赤ちゃんがある程度成長するまで見守るしかないでしょう。
あまり悲観的な気持ちにはならずに、慎重に判断をする姿勢が必要です。