へその緒の異常(臍帯異常)が原因で、胎児の発育不全や分娩中の新生児仮死、死産などにつながるケースはいくつもあります。
たとえば
臍帯異常は事前に防ぐ方法がなく、エコーでも発見が難しいんですが、死産にまで至る確率は高くはありません。
妊婦は妊娠中、常に出血やおなかの張り、腰痛、腹痛、めまい、頭痛などの症状が出続けるので、それらの症状があっても何の影響かはわかりません。
ただ臍帯異常が起こるのは妊娠20週以降です。わずかな確率ですが、共通点を予測することで臍帯異常の可能性がないかを考えることができるかもしれません。
そこで今回は、臍帯異常による死産の確率、臍帯異常を発見する方法がないかを考えてみたいと思います。
目次
臍帯異常の種類と発生確率
まーさ
臍帯巻絡
臍帯巻絡は出産全体の25%ほどに見られる臍帯異常ですが、ほとんどが身体のどこかに1周巻き付いているだけです。
2周以上巻きついている臍帯巻絡は、臍帯巻絡全体の10-15%ほど(出産全体の2.5-3.75%)、3周以上の臍帯巻絡は、臍帯巻絡全体の0.2%ほど(出産全体の0.05%)です。
臍帯が身体に巻かれて圧迫が強いほど血流が悪くなり、胎児ジストレスや新生児仮死の原因になります。詳しくは以下を参考にしてください。
臍帯過捻転・臍帯過少捻転
過長臍帯・過短臍帯
過長臍帯は臍帯内血管の血行不良を起こしたり、胎児の身体(心臓)に負担をかけるだけじゃなく、臍帯が長いことで臍帯巻絡や臍帯真結束の原因になります。
臍帯下垂・臍帯脱出
臍帯脱出が起こると分娩時に臍帯が圧迫され、新生児仮死や死産などの原因になります。
臍帯真結節・臍帯偽結節
臍帯真結節は結び目が緩ければいいんですが、何かの影響で固く結ばれると血管を圧迫し、胎児ジストレスや新生児仮死の原因になります。
卵膜付着
通常、臍帯内の血管はワルトン膠質に覆われていますが、卵膜付着が起こると付着部分から胎盤まで伸びた臍帯にワルトン膠質が無く、薄い卵膜に覆われただけの状態です。
そのためほぼむき出しの血管が圧迫され、胎児機能不全や胎児死亡の原因になります。
前置血管
前置血管は卵膜付着で血管が圧迫されて胎児死亡を起こす確率が高いだけじゃなく、子宮口を塞いだ血管が分娩の邪魔になるので卵膜付着よりリスクが高い状態です。
前置血管自体の確率は低いんですが、早期発見が大切で帝王切開までは前期破水を起こさないように気を付けなければいけません。
臍帯異常による死産の確率
まーさ
出生1000あたりの周産期死亡(妊娠満22週以後の死産+早期新生児死亡)は3-4人で、日本の周産期死亡は世界でもトップの死亡率の低さです。
以下の周産期死亡原因の内訳グラフを見ると、臍帯異常による周産期死亡は死亡数全体の15%ほどです。
(日本産科婦人科学会の周産期登録データベースが参考とのこと)
つまり年間出生数が100万人なら、臍帯異常による胎児・乳児の死亡率は0.05%ほどです。
100万人×0.033×0.15=495人
まーさ
と思うかもしれませんが、妊婦にはたった0.05%でもゼロじゃないので心配です。
臍帯異常の発見方法はある?
まーさ
確実に臍帯異常を発見する方法はありません。ただ日々の状況を記録して確認することで早期発見をしたり、臍帯異常があるかも?と注意することはできます。
妊婦ができる日々の状況の記録は胎動カウントが最適です。
- STEP.1胎動カウントを行う妊娠20週頃から胎動カウントを始めます。
- STEP.2胎動の状況を確認する臨月までに胎動が弱くなってないか、少なくなってないか確認する。
- STEP.3胎動の状況を医師に告げる胎動が弱くなっていたら医師に状況を報告してエコーをお願いする。
- STEP.4カラードプラ法を希望する血流の状態を把握するために医師にカラードプラ法を希望します。
- STEP.5帝王切開か経過観察の判断を仰ぐ血流異常があって医師が臍帯異常の可能性もあるとした場合は、帝王切開による早産も意識する。
胎動カウントを行う
胎動カウントは産婦人科医の指導で妊娠28週以降から始めることが多いですが、もし赤ちゃんの異常を早く発見したいなら妊娠20週ごろから始めてみましょう。
このころの赤ちゃんは生活リズムがなく、胎動も不定期です。そのため正確な胎動カウントを取るのは難しいんですが、トータルでどんな変化があるかを知るために行います。
胎動の状況を確認する
以下のような流れを感じる妊婦は、臍帯異常があるかもしれないと疑います。
- 赤ちゃんの胎動が激しい、よく動き回っている
↓ - 一方向ではなくうねるような胎動をしている
↓ - あるときから胎動が弱くなった、少なくなった
この流れは日々の胎動カウントを記録していればわかります。胎動は臨月に向かって強くなっていくことが一般的です。
胎動の状況を医師に告げる
以前に比べて「胎動が弱くなっている」「胎動の数が減っている」ということを胎動カウントシートとともに医師に伝えて、エコーなどの検査を行ってもらいましょう。
カラードプラ法を希望する
もし違和感があった時期が妊娠28週間近なら、カラードプラ法(カラードップラー法)を希望しても良いでしょう。
カラードプラ法とは血流の速度や方向を二次元マッピングして、色を使って血流の状態を把握する検査方法です。
これによって臍帯の血流の状態がわかれば、「血流が弱くなってるから臍帯異常かも?」と考えられるようになります。詳しくは医師に確認してください。
帝王切開?経過観察?判断を仰ぐ
カラードプラ法で血流の異常があり、臍帯異常の可能性を医師が認めた場合は、妊娠週数や胎児の心拍数、妊婦の健康状態によって帝王切開を行う可能性が出てきます。
もちろん医師は帝王切開をするか、経過観察をするかなどあらゆる可能性を妊婦に伝え、医師としての選択肢を勧めたうえで妊婦に選択を迫る可能性があります。
臍帯異常の発見方法に関する注意点
臍帯異常は良いことじゃないですが、早期発見できるなら素晴らしいことです。
臍帯下垂など発見しやすい臍帯異常もありますが、その他の臍帯異常はどんな方法でも予測の範囲は越えません。
ただし臍帯異常による周産期死亡率は0.05%ほどですが、臍帯異常の確率は出産の25-30%ほどもあります。そのため妊婦が神経質になり過ぎることもよくないですね。
また臍帯の血流が弱いことがわかったとしても、明らかに胎児に異常があると言えない限り、経過観察をせざるを得ないかもしれません。
これは妊婦にとって歯がゆくストレスが溜まる状況です。ただ医師に命を預けている以上、しっかり説明を聞いたうえで、ある程度の判断は受け入れなければいけません。
信頼すべき医師との関係性が悪くなることも、出産に悪い影響を与えます。
今回話した内容は、あくまでも臍帯異常の発見確率を上げる考え方の1つとして心にとどめておいてください。