「出産のときに赤ちゃんの首にへその緒が巻き付いていて大変だった。」などの話は聞いたことがあると思います。
へその緒の異常には種類があり、胎児の首などに巻き付いて出産リスクになったり、へその緒の過剰なねじれや結び目が発育阻害や新生児仮死などの原因になることもあります。
このようなへその緒(臍帯)の異常を総称して、「
臍帯異常はよくあることで、出産の3割近くが臍帯異常を伴います。また臍帯異常による周産期死亡は出産全体の0.05%、周産期死亡全体の15%を占めています。
臍帯異常による周産期死亡率は0.05%なので心配は少ないですが、赤ちゃんに影響がないわけじゃないので心配ですよね。
そこで今回は、臍帯異常の中でもとくに数が多い「
臍帯巻絡とは
臍帯巻絡とは、胎児が母体内または出産時にへその緒が胎児の首や体に巻き付いて圧迫されることです。新生児の25%ほどが臍帯巻絡で生まれてきます。
まーさ
臍帯巻絡はへその緒が首に巻き付くイメージがありますが、臍帯巻絡の8割が首への巻きつきで、残りは胎児の身体のどこかに巻き付くものです。
胎児は肺呼吸じゃないので首が締まって窒息とはあまり関係ありません。
臍帯巻絡が赤ちゃんの死産や新生児仮死の原因になるのは、産道を通る際に臍帯が圧迫されて血流が弱まり、胎児への酸素や栄養素が遮断されるためです。
どちらにしろ胎児の身体と狭い産道に臍帯が圧迫されて新生児仮死などが起こる可能性があるので、分娩には十分な注意が必要です。
臍帯巻絡の原因
赤ちゃんに臍帯巻絡が起こる原因はいくつかありますが、正確には分かりません。
ただ通常よりも長い臍帯(過長臍帯)の赤ちゃんが激しい胎動をしたり、前置胎盤、羊水過少、多胎妊娠などで子宮内が狭いなどの条件が重なって起こると考えられます。
ちなみにへその緒の平均的な長さは50-60cmですが、過長臍帯は75cm以上を言います。
へその緒が巻き付く回数の影響
まーさ
通常の臍帯巻絡は首などへの巻きつきが1周の場合がほとんどですが、臍帯が長いと2周、3周巻き付くこともあります。
前愛育病院院長、前東京大学医学部講師の堀口貞夫先生が以下のように話しています。
1979年に都立築地産院でこの点を調べたことがあります。この一年間に生まれた1830例のうち、「へその緒」が巻き付いていたのは584例(31・9%)もありました。生まれた直後の赤ちゃんの元気さを示す*アプガー指数が10点満点の7点以上である元気な赤ちゃんは「へその緒」が巻き付いていた584例のうち545(93・3%)、「へその緒」が巻き付いていなかった1237例のうち1161例(93・9%)とほとんど差がありません。ただし、「へその緒」がグルグルと2回以上巻き付いていると、元気な赤ちゃんは88・7%と少し少なくなります。へその緒が2回以上巻き付いている例は、分娩全体の3・9%だけです。
つまり臍帯が胎児に巻き付く数が多いほど、大事に至る可能性が高いということです。
引用内では臍帯が2周以上になる確率は分娩全体の3.9%、アメリカの産科学の教科書によると3周以上巻きつくケースは臍帯巻絡全体の0.2%だそうです。
1回の巻きつきなら分娩時にほぼ問題はないですが、2回以上の巻きつきは圧迫が強くなるので、状況によっては経腟分娩から緊急帝王切開に切り替えることになります。
結果として赤ちゃんが新生児仮死状態で分娩された場合は、以下の影響や早急の分娩処置が必要になります。
- 正期産での新生児仮死の割合|0.71%
- 正期産で新生児仮死の新生児死亡割合|0.01%未満
- 正期産で新生児仮死の脳性麻痺割合|0.04%未満
- 新生児仮死から後遺症が残る割合|5.71%
臍帯巻絡を防いだり治す方法はある?
まーさ
母体内で胎児に臍帯巻絡が起こっても直ちに母体に影響が起きたり、状態が変化するわけじゃないので妊婦に自覚症状はありません。
また母体内で臍帯巻絡が起きても、羊水に浮かぶ胎児にはある程度余裕があるので子宮内で臍帯が圧迫されることは稀です。
そのため臍帯巻絡は分娩時の発見が多く、事前に防ぐ方法はありません。出産前に運良く臍帯巻絡を予測できても、外部からは治療できないので経過観察するしかないんです。
そして経過観察で万が一胎児の胎動が弱くなったり、心拍が弱まった場合は、できる限り妊娠期間を継続したうえで緊急帝王切開などの対応が取られます。
ちなみにしゃっくりをよくする子は臍帯巻絡やダウン症の可能性があるという噂がありますが、そう言及する医師はいないと思います。心配なら担当医に尋ねてください。
もう一度言いますが臍帯巻絡の多くは臍帯が身体に1周巻きついたもので、1周では胎児にほぼ影響はありません。
臍帯異常は出産の25%程度で誰にでも起こりうるものです。そのため妊婦が過剰に心配するとストレスになり、健康な出産の妨げになります。
臍帯巻絡などの臍帯異常が心配な人は、病院で医師にいろいろ質問してみてください。