産休(産前産後休業)と育休(育児休業)は、労働者に与えられた権利です。
産休・育休の行使を会社が妨げることはできません。と言ってもルールの中で取得しなければ、権利をうまく行使できません。
たとえば会社に対する産休と育休の申請期限もルールの1つです。
産休も育休も、何も考えずに最大日数で取得する決まりなら楽なんですよね。また、出産を機にスパっと会社をやめるならまだしも、職場復帰したい女性は、産休と育休の上手な使い方を考えなければいけません。
そのため、会社に対する産休と育休の申請も、気がつけば期限ギリギリになってしまうかもしれません。
ところで、会社への産休申請の期限、育休申請の期限はいつまでなんでしょうか。また、会社にはいつまでに妊娠の報告をすれば良いのでしょうか。
今回は、会社に産休と育休の申請を行う期限、会社に妊娠報告をするタイミングなどについてお話したいと思います。
目次
産休の会社への申請期限
産休を会社に申請する期限は会社によって違います。ただし会社は「産前産後休業取得者申出書」を産休中に年金事務所に提出しなければいけません。
一見余裕があるように感じますが、それはわたしたちの解釈。提出するのは会社なので、「原則として産休に入る1ヶ月前まで」など、社則で申請期限が決まっているはずです。
仮に、会社に対する産休の申請期限が「産休開始日の1ヶ月前まで」と決まっていた場合、産前休業は一般的に42日間のため、「出産予定日の42日前のさらに1ヶ月前」が会社に対する産休申請の期限になります。
例えば、出産予定日が11月25日の場合は、産休開始日は10月15日、会社への申請期限は9月15日ということになります。
出産予定日はあくまでも予定なので、実際の出産日に応じて産前休業の日数は以下のように変わります。会社に対する申請期限に影響はありませんが、合わせて押さえておきましょう。
たとえば上図の様に、出産日が出産予定日より3日間遅れた場合は、遅れた3日間が産前休業の42日に加算され、産前休業は45日になります。
産前休業日数が増えても、産後休業の日数は減りません。この場合の産休日数は、最大で「産前休業45日+産後休業56日=101日」になります。
逆に、出産日が出産予定日より3日間早まった場合は、早まった3日間が産前休業の42日から減算され、産前休業が39日になります。
産前休業日数が減っても、産後休業の日数は増えません。この場合の産休日数は、最大で「産前休業39日+産後休業56日=95日」になります。
育休の会社への申請期限
次に育休を会社に申請する期限ですが、こちらは育休開始後に会社が「育児休業給付受給資格確認票・(初回)育児休業給付金支給申請書」をハローワークに提出して、手続きを行なわなければいけません。
そのため、産休と同じく「原則として育休に入る1ヶ月前まで」など、社則で会社への申請期限が決まっているはずです。
産休と育休の違いは、会社が規定する育休申請期限に遅れると、以下のように会社都合で休業開始日を決められる場合があるということです。
事業主は、労働者が休業を開始しようとする日以後申出の日の翌日から起算して1ヶ月を経過する日(申出の日の属する月の翌月の応当日、例えば、申出の日が4月1日であれば5月1日)までの間で休業を開始する日を指定することができます。
また、産休が始まると女性は出産~新生児育児で忙しく、会社に育休の申請を出す暇がないなど、つい忘れてしまいがちです。
そのため、少し早いのですが、育休申請も産休申請と同時にしてしまった方が良いでしょう。というよりも、会社によっては産休申請と育休申請の期限が同じことも多いはずです。
また、育休の延長(1歳から1歳6ヶ月まで、または1歳6ヶ月から2歳の誕生日の前日まで)を望む場合は、それぞれの育休終了予定日の2週間前までにハローワークに申請しなければいけません(育児・介護休業法施行規則第15条)。
そのため、会社に申請する必要書類等は余裕を持って提出する必要があります。育休延長の詳細は以下を参考にしてください。
その他、育休期間を繰り上げ開始する場合は育休開始予定日の1週間前まで、育休期間を繰り下げ終了する場合は育休終了予定日の1ヶ月前までにハローワークに申請しなければいけません。
育休届(申請書)はテンプレートがたくさん
会社に対する育休申請書は、社内で書式が決まっていればそれを使いますが、書式が決まっていなければ、自分で育休申請書を用意しなければいけません。
「え、自分で用意?何だか心配……。」と思っている人は安心してください。「育児休業届 テンプレート」で検索すればたくさん出てきます。都内の会社に勤めている人なら、東京労働局の書式が無難だと思います。
【一覧】モデル例・様式集 | 東京労働局
また、厚生労働省雇用均等・児童家庭局が行っている「イクメンプロジェクト」のサイトにも、可愛い育児休業届テンプレートが用意されています。会社で使えるかどうかはわかりませんが。
妊娠と産休・育休はいつ会社に報告すべきか
前述した通り、会社に対する産休と育休の申請期限は、産休開始日の1ヶ月前までとなっていることが多いと思います。
では、それまで会社には産休と育休について、何も報告しなくても良いのでしょうか。
バリバリ働いている女性ならよくわかると思いますが、仕事で長期間人が抜けてしまうことは会社にとって大きな損失です。そのため、早目にその期間を伝えなければ、会社に迷惑をかけてしまいます。
どちらにしても、妊娠で少しずつ体型は変わりますし、妊娠初期症状が重ければ、誰が見ても妊娠しているとわかります。
そのため、会社への妊娠報告は、流産の確率がぐんと低くなる安定期(妊娠5ヶ月/妊娠16-19週)に入ってからが良いでしょう。もちろん、妊婦健診で医師から順調だという確認が取れている方が良いですね。
その際、まだ育休期間が決まっていなくても問題はありません。まず産休をフルで取得する旨と育休も取得したいことは伝えておきましょう。育休の期間については、改めて報告してください。
男性が会社に育休申請をする場合
もし旦那さんが育休を申請する場合、奥さんも育休を取得しているはずなので「パパママ育休プラス」が適用されます。
この場合、旦那さんが育休を取得できる期間は、赤ちゃんの出産日から生後1歳2ヶ月になるまでの期間の中で最大1年間(365日間)になります。
旦那さんが会社に対して育休を申請する期限も、育休開始希望日の1ヶ月前までが多いと思います。就業規則で申請期限が決まっているかもしれないので、ママが産休に入る2-3ヶ月前には会社に確認してください。
もちろん、旦那さんの育休申請も早いほど会社に迷惑をかけることはありません。パパママ育休プラスの詳細は、以下で確認をしてください。
仕事と育児を両立するなら報告・申請はお早めに
産休申請の期限も、育休申請の期限も、会社のルールによって決められています。
「えー、産休も育休も権利で認められてるのに、何でわざわざ会社に申請出さなきゃいけないの?」という尖った人もいるかもしれません……。
もし自分でハローワークに申請を出すなら良いのですが、どちらにしろ会社で用意してもらわなければいけない書類もあります。
産休開始前も育休開始前も無理はできませんし、面倒な手続きはストレスが溜まります。早めの申請期限でも、会社にお願いした方が圧倒的に楽だと思いますよ(^_^;)
もちろん、出産後の育児や職場復帰を考えると、適当に産休・育休申請書に記載して完了!というわけにはいきません。
ママが育休を取るということは、出産後に仕事に復帰することが大前提のため、将来のことを踏まえて育休期間を決めなければいけません。
そのため、産休期間はフルで取得するとして、育休期間も単純に「長ければ長いほど良い!」ではなく、以下のようにいろいろ踏まえて休暇期間を決めた方が良いでしょう。
「育休期間が決まらないから、なかなか申請書を提出できない……。」など、考えるほど悩ましく思えますが、出産はそれだけインパクトが大きなこと。ひたすら悩んで答えを出すしかないですね。