以前、赤ちゃんの歯磨きを始める時期や虫歯になる原因について話しましたが、子供が自分で歯磨きをできるのはいつごろからでしょうか。
0歳で生え始めた乳歯は、2歳から2歳半ごろに生える第二大臼歯(乳歯の最奥歯)でようやく生え揃います。
子供が自分で歯磨きをするのは最短でも乳歯が生え揃い、ママが生え揃った子供の歯を磨くことに慣れてからの方が良いでしょう。そのため、子供が自分で歯磨きをし始めるのは、2歳後半から3歳前半が多いかと思います。
3歳の子供が行う歯磨きはとてもつたないものです。0歳からママが歯を磨き続け、嫌がっても泣きわめいても、押さえつけて歯を磨いていたことを考えると大きな進歩ですが……。
もちろん、子供が自分で歯を磨けるようになったとしても、虫歯にならないように歯を磨けることとはまったく違います。
むしろ、ママは今まで以上に子供の歯磨きと虫歯予防に気遣って、本当に1人で歯をきれいに磨けるようになるまで、環境を整えたり、丁寧な指導をしていかなければいけません。
そこで今回は、3歳以降の子供の歯磨きと虫歯予防でママが意識した方が良いこと、気をつけた方が良いことについてお話したいと思います。
目次
子供の虫歯予防の注意点1.虫歯は元に戻らないと認識する
転んでケガをしたり、運悪く骨折しても治療を続ければ治ります。風邪をひいたり、インフルエンザにかかっても治ります。
よくあるケガや病気は、正しく治療すれば必ず元に戻ります。ところが、重度の虫歯になると、歯を正しく治療をしても元には戻りません。
一般的な虫歯の治療方法は、虫歯部分を削って、詰め物をして、銀歯などを被せて歯として使える状態にすることです。このように治療した歯は、以前の健康な歯に比べるととても弱いものです。
そのためママは、「子供が虫歯になると元に戻らない」ということを認識して、子供の歯磨きや虫歯ケアに取り組まなければいけません。
ちなみに、永久歯は生えてから60-70年以上使う歯ですが、ほとんどの子は10代の間で虫歯になってしまいます。
子供の虫歯予防の注意点2.永久歯のために乳歯ケアを行う
「乳歯で虫歯になっても、永久歯に生え変わるし大丈夫でしょ!」
いいえ、虫歯のないきれいな歯並びの乳歯であれば、永久歯へのスムーズな生え変わりを促進しますが、乳歯で虫歯になると、次に生えてくる永久歯もすぐに虫歯になる可能性があります。
乳歯の時期に虫歯になるのは、子供の口の中にミュータンス菌などの虫歯菌が感染して、虫歯ができる環境が作られているからです。
虫歯菌が感染して定着しやすいのは2歳半ごろまでのため、それまで虫歯菌の感染を最小限に抑えれば、子供が虫歯になる確率が低くなります。
つまり、虫歯になる原因は歯磨き方法だけに問題があるのではなく、乳歯の時期の子供の口腔ケアが大きく関係しているということです。
そのため、たとえ乳歯を全て永久歯に入れ替えたとしても、口の中に虫歯菌が多く定着していると、永久歯も虫歯になる可能性が高まります。
子供の虫歯予防の注意点3.歯科医は虫歯予防のために行く
「虫歯になると歯医者さんに行って痛い思いするよ!」と、歯磨きしない子を怒鳴ってしまうママもいると思います。でも、この言い方はやめましょう。
なぜなら、「歯医者さん=虫歯を治療するところ、痛い思いをするところ」と子供にイメージをさせてしまうと、普段の虫歯ケアがしずらくなってしまうからです。
わたしたち大人も勘違いをしていますが、歯科医は虫歯治療ではなく虫歯予防に活用した方が効果的です。
医院や歯の状態にもよりますが、平均して3,000円~4,000円程度で歯科健診を受けることができ、歯周病や虫歯のチェック、歯石の除去などの基本的な診断項目は全て保険適応の範囲内で可能です。
レントゲンを行わない場合は、さらに1,000円ほど安くなります。また、乳幼児や子供の場合は歯の状態のチェックと虫歯予防のフッ素塗布で2,000円程度で健診を受けることができますが、市や区の負担率により保険診療なら無料、定額200円の場合もあります。
虫歯ができやすい子供は、虫歯予防のために行うシーラント、ブラッシング指導、フッ素塗布、定期歯科健診などが、「乳幼児医療費助成」の対象になる場合があります。
乳幼児医療費助成の対象は、歯科医の判断で変わるため問い合わせて欲しいのですが、たとえ少々お金がかかっても、虫歯になったり、泣いて嫌がる子供を歯科医に連れて行く手間を考えたら安いものです。
もちろん、虫歯ができにくい口内環境は、大人になってからお金で買えるものではありません。
子供の虫歯予防の注意点4.仕上げ磨きは10歳までは続ける
子供は、3歳ごろから1人で歯磨きするようになりますが、終わった後は必ず仕上げ磨きが必要です。ところが、ある程度子供が1人で歯磨することに慣れたと感じると、磨きをやめてしまう親がいます。
うちの6歳の息子と3歳の娘を比べると、もちろん息子の歯磨きの方がしっかりしていますが、まだまだ意識してきれいに歯を磨けているとは思えません。
たとえ、何でも子供に自分でやらせる教育方針の家庭でも、足りないものを続けさせては意味がありませんし、虫歯は一度なってしまうと二度と元には戻りません。
そのため、仕上げ磨きはある程度の年齢まで続ける必要があります。ところが、その年齢は歯科医師によっても見解が違うようで、調べてみると
「小学校2-3年生までは仕上げ磨きをした方が良い。」
「10歳ごろまでは仕上げ磨きをした方が良い。」
「小学校の高学年までは仕上げ磨きをした方が良い。」
などの意見が見られました。ただ、どの歯科医師の意見も、小学生以降も仕上げ磨きを続ける必要性に触れています。最低でも小学校2-3年生まで、できれば高学年まで、親が仕上げ磨きをした方が良いということでしょう。
もちろん、親が正しい歯の磨き方を知っていることが前提です。
子供の虫歯予防の注意点5.おやつの時間は必ず決める
おやつの時間といえば3時です。午前中も含めるなら10時です。
最初はおやつの時間を守っていたママも、イヤイヤ期の必須アイテムとしてお菓子を使い出したり、お友達と遊ぶことで定時のおやつ時間がずれたり、パパがご機嫌取りにお菓子を買い与える姿をみると、「……ま、いっか……。」と半ば諦めてしまいます。
小さな子供のおやつは、食事量を調整したり、栄養の補完のために必要なことも多いでしょう。ただし、無節操なおやつは虫歯菌の働きを活発にし、確実に虫歯リスクを高めます。
また、おやつを何度も食べる機会があったり、時間が不定期になると、大切な歯磨きもおざなりになってしまいます。そのため、3時に限定する必要はありませんが、おやつはある程度時間を決めなければいけません。
「おやつの時間は○時から○時まで」「おやつを食べたら必ず歯をみがく」というルールを徹底するだけで、子供の虫歯リスクは軽減します。
子供の虫歯予防の注意点6.歯間の歯垢が虫歯になる
子供の奥歯の隙間は誰が磨いても、磨き残しが気になります。そこで歯科医師に歯のケア方法を聞くと、デンタルフロスを使うように言われます。
デンタルフロス(歯間ブラシ)とは、歯間の歯垢を清掃する細い糸のことです。もちろん、デンタルフロスは子供だけではなく、大人にも効果的です。
デンタルフロスにはホルダータイプと糸巻きタイプがありますが、子供の歯に合わせてママが使いやすい方を選んでください。種類は以下を参考にしてください。
また、デンタルフロスの使い方は以下を参考にしてください。
ただし、デンタルフロスを使って全ての歯を隅々まできれいにするのは面倒です。そのため、うちではデンタルフロスではなく、水圧で歯間の汚れをとる口腔洗浄機を使っています。
水跳ねがすごいですが、一時期使っていたデンタルフロスよりも短時間ででき、驚くほど汚れも落ちるのでおすすめです。水圧が強いので初めは嫌がりますが、慣れるととても楽です。我が家では夫が大絶賛する今年1番のヒット商品です。
子供の虫歯予防の注意点7.乳歯と永久歯の混在時期に注意
乳歯から永久歯への生え変わりは、通常4-6歳ごろから乳歯が抜け始め、5-6歳ごろから永久歯が生え、12-13歳前後に全ての歯が永久歯に生え変わります(第3大臼歯を除く)。
つまり、6-8年ほどは乳歯と永久歯が混在していたり、永久歯がしっかり生え揃っていない状態が続きます。
当然、乳歯が抜けると磨きにくい箇所ができるだけでなく、永久歯が生えてきても大きさが違う乳歯と永久歯が混在することで歯に隙間ができやすく、凸凹しているため歯垢もたまりやすい状態です
これは子供の虫歯が、乳歯・永久歯に限らず5歳-10歳ごろに集中している原因の1つです。
逆に言うと、この時期を乗り切れば一生虫歯ができにくい口内環境の基礎が整うと言っても過言ではありません。
虫歯予防に歯科医は欠かせない
例外はありますが、やはりどんな世界でも専門家の意見は信用できますし、頼って損はないものです。そのため、子供の歯磨きと虫歯予防には、定期的に歯科健診に行くことをおすすめします。
定期的に歯科健診に行けば、子供の歯の磨き方、デンタルフロスの使い方、仕上げ磨きの方法なども教えてもらえますし、歯磨きの大切さを子供に意識させられれば、ママの負担が軽くなります。
乳歯から永久歯の生え変わり時期である5-6歳になれば、虫歯の治療以外なら泣いて暴れることもない……でしょうから、まだ子供に虫歯がないうちに歯科医に通って、歯の大切さを教えてあげましょう。
以下のようなニュースもありますが、未就学児であれば多くの市区町村で乳幼児医療費対象のため、経済格差は生まれにくいはずですし、虫歯ができる前に予防の意識を持った方が圧倒的に経済的です。
兵庫県内の小中高・特別支援学校で2016年度に行われた歯科検診で、虫歯などが見つかり「要受診」とされた約3万5千人のうち、歯科の受診が確認できない児童・生徒が約2万3千人、65%に上ることが県保険医協会の調査で分かった。未治療の虫歯が10本以上あるなど「口腔(こうくう)崩壊」の子どもがいる学校の割合も35%に上った。同協会は「全体的に子どもの虫歯は減少傾向なのに二極化が進んでいる。背景に貧困などの厳しい社会状況がある」と指摘する。(森 信弘)
調査は17年3月、医師や歯科医師らでつくる同協会が初めて実施。県内の1409校を対象に行い、19%に当たる274校(11万415人分)から回答があった。大阪府や長野県などでも各保険医協会が同様の調査を行ったが、似たような傾向があるという。
受診が確認できなかったのは、小学校が46%、中学校で64%、高校は84%と年齢を経て高くなり、特別支援学校は62%だった。
口腔崩壊の児童・生徒がいる場合、家庭状況について尋ねた(複数回答)ところ「一人親家庭」が37%で最も多く、「保護者の健康への理解不足」(33%)、「経済的困難」(32%)などが目立った。口腔崩壊は調査で計346人おり、同協会は「単純計算で県内に1500~2千人程度と推定できる」としている。
神戸新聞NEXT|医療ニュース|子供の虫歯二極化、口腔崩壊も 経済格差背景か
昨今はたくさんの歯科があります。もちろん、良し悪しや合う合わないはあるので歯科医選びは慎重に。
また、歯科医に行って得た知識は、仕上げ磨きなど子供の生活習慣を作るためにアウトプットしてください。仕上げ磨きは、たとえ子供が嫌がっても、ママが面倒でも、10歳過ぎまでの虫歯を防ぐために続けましょう。