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子供の躾と虐待の違い、境界線はどこにある?

子供のしつけと虐待の違い

あまり触れたくない話しですが、親が子供をしつけと称して虐待したり、ときには小さな命を奪ってしまう事件をニュースで見かけます。警察で取り調べを受けた親はこう言います。

「自分は躾をしていただけ。少しやり過ぎたのかもしれない。」

子供がいる親にとって児童虐待は信じられない、考えられない行為だと思います。悲しさを通り越して怒りが湧いてきますよね。

ただ人によって虐待の定義は違います。子供を叩いて育てる人もいれば、大声を出しただけで虐待と言う人もいます。

自分は心から愛情を持って子供に接していても、人から見たら虐待と言われたらやるせないです。躾と虐待の境界線は、親になるとほんとに意識します。

そこで今回は、躾と虐待の違いについてお話します。

躾と虐待の定義

まーさ

躾って難しい……。どこまでが躾でどこからが虐待になるのかな。

躾とは

躾と虐待の違いはよく話題になりますが、明確な境目は決まっていませんし、定義も難しいものです。

わたしが思う躾とは、「一般的な経験と環境に基づいて決められたルールを守って教育する過程で、そのルールを逸脱した者を、個人の感情に左右されずに、ルールを守るように導くこと」だと考えています(先輩保育士の受け売り)。

もしかしたらルールを守るように導くときに大きな声を出すかもしれません。おしりなどを叩くかもしれません。ただ子供を導く過程に、個人的な感情があってはいけません。

躾という漢字は身を美しくすると書きます。親が感情で殴ったり、蹴ったり、食事を抜いたり、怒鳴ったり……などの行為を受けた子供の身は美しくなりません。ボロボロになります。

どれだけ子供が悪いことをして、それを強制するために「躾をした」と主張しても、子供の身がボロボロになる行為は躾とは言いません。

さらに虐待で子供が受ける傷は身体だけではありません。心に強いストレスを受けて、成長まで阻害してしまいます。

児童虐待とは

児童虐待とは、子供の人権を侵害し心と体の形成に影響を与える行為のことです。

つまり親が「自分の行動は間違っていない。これは躾だ。」と思っても、子供が苦痛を感じたり、客観的に見て有害なら児童虐待と判断されます。

まーさ

わたしは勉強で苦労したし、コンプレックスもある。だから子供が泣いても毎日勉強させて良い大学に行かせたい!それが子供のためなんだ。

パパ

昔は部活の顧問に毎日怒鳴られたり殴られたりしたけど、今の自分があるのは当時の厳しい指導の賜物だ。子供にも同じ体験をさせたい。

これは人によって賛成・反対が分かれます。一方は賛成で、一方は反対の人もいます。でも親が子供のためを思った行動でも、子供自身が苦痛を感じれば虐待です。

もちろん子供の行動をすべて容認する話ではないですし、放任する話でもありません。

……躾と虐待の定義が難しいということが、わかってもらえたでしょう。これらを踏まえた上で、躾と虐待の違いを見てみましょう。

躾と虐待の違い

まーさ

人の価値観で躾と虐待が変わるってこと?曖昧すぎない?

家庭環境によって多少の違いはありますが、躾と虐待を混同してはいけません。躾と虐待にはどんな違いがあるんでしょうか。

行動の起こし方

躾と虐待は、行動の起こし方に違いがあります。

躾はルールに沿って行動を起こしますが、虐待は個人的な感情で行動を起こします。以前に「怒る」と「叱る」の違いを話しましたが、この違いと同じですね。

怒ると叱るの違い
「怒る」は感情がスイッチで、「ママが怒る」「パパが怒る」という風に自ら腹を立てることを言う。対象の相手がいなくても成り立つ。
「叱る」は誰かがある基準に反したことがスイッチで、「ママが子供を叱る」という風に他人の良くない行動を指摘してとがめることを言う。対象の相手がいなければ成り立たない。

時間のかけ方

躾と虐待は、行動にかける時間に違いがあります。

子供が悪いことをした場合、何が悪いことか理解させ、どういう行動をとった方が良いか教える必要があります。ただ子供はそれがなぜ悪いことなのかすぐ理解できません。

なぜ悪いのか、その行動をしたら誰にどんな影響があるのかを”学ぶ”時間がかかります。

ところが虐待は「今言ってもわからないなら叱る。」など、子供のレベルを考えない行動です。虐待する親は、子供が学ぶ過程はどうでも良いと考えます。

行動に対する一貫性

躾と虐待は、行動に対する一貫性の有無に違いがあります。

躾で大きな声を出したり、おしりを叩いたとしても、その行動にはルールに沿った一貫性があります。良し悪しは別として、行為がエスカレートすることはありません。

ところが虐待は感情による行為なので、自分の感情が高ぶれば行為がエスカレートする場合があります。

行動に対する理由

躾と虐待は、行動に対する理由に違いがあります。

躾は子供の将来のため、どんな行動をさせたいかを考えて繰り返し行います。そのため子供を叱る明確な理由があり、子供が理解できるように何度も説明して導こうとします。

虐待は子供の将来のためと思っている行動でも、子供が理解できるように何度も説明はしません。親の意思や思い込みで強制することの方が重要になっています。

叱るのは子供の社会性のため

子育てをしていて、子供に一度もイラッとしたことがない人はいません。つい感情的になって大きな声を出してしまうこともあります。

それでも感情のまま突っ走ると、子供に「自分がした悪いことは、ママやパパを怒らせてしまった。」と間違った認識を与えるかもしれません。

子供がそう思うことは親の本意じゃないですね。「子供は親の顔色を伺って、命令に従ってさえいれば良いんだ。」とは考えないはずです。

子供が感情を素直に表現できなくなるのは悲しいことです。子供が自分の感情を持って、叱られた内容に向き合う成長がないとただのロボットです。

子を持つ親として、今一度子供に感情的な叱り方(怒り方)をしてないか確認しましょう。

ちなみに児童虐待には、身体的虐待、性的虐待、ネグレクト(育児放棄)、心理的虐待という種類があります。これらの内容も踏まえたうえで、躾と虐待の違いを明確に持つようにしましょう。