子供に対する虐待は年々増加していて、平成27年度には児童相談所に対する児童虐待相談対応件数が103,260件にも増えています。
厚生労働省の調査によると、児童虐待相談対応件数は25年前の平成2年に比べて100倍近い件数に伸びています。
また保護者のいない子供や虐待されている子供などが入所する「児童養護施設」の入所者のうち、59.5%が児童虐待を受けていたそうです(2013年2月時点約2万9900人中)。
このように虐待を受けた子供の体の傷と心の傷は、子供の成長を大きく阻害する要因になります。それが、児童虐待が原因で起こる「脳の萎縮」による成長阻害の影響です。
目次
脳萎縮とは脳の容積が減少すること
まーさ
とても怖いことに感じますが、脳の萎縮は30歳前後から始まっていて、生涯脳萎縮は止まりません。つまり加齢とともに脳機能はドンドン衰えていくんです。
脳萎縮の原因はいろいろありますが、以下の5つが代表的な原因です。
加齢
脳萎縮は30歳前後から始まり、とくに40-60歳過ぎに顕著になります。
アルコール
アルコールの過剰摂取は脳の神経細胞を破壊するので、脳萎縮を起こします。もちろん、タバコでも脳萎縮は起こります。
脳や血管の病気
脳梗塞や脳出血などの脳の血管障害、アルツハイマー病、レビー小体病などの病気だけでなく脳の外傷でも脳萎縮を起こします。
生活習慣
運動不足や寝不足、過度なダイエットによる栄養不足など生活習慣の乱れで脳萎縮を起こしてしまいます。
強いストレス
うつ病やPTSDなどストレスが発端となる病気も脳萎縮の原因です。もちろん、児童虐待もストレスを受ける要素です。
人生経験が少なくストレスを解消できる手段を知らない子供にとって、児童虐待で受けるストレスはあまりにも強すぎるので大きな脳萎縮が起きてしまいます。
児童虐待と脳萎縮の関係性
福井大学の友田教授とハーバード大学の共同研究によると、子供のときに受けた虐待が脳に与える影響について以下のことがわかっています。
アメリカに住む18-25歳の約1500人の中で幼少期に児童虐待を受けた経験のある者とない者を分けて知能検査とMRI検査を行ったところ、虐待の種類によって脳萎縮の部位と割合が変わることを明らかにしました。
1.激しい体罰による前頭前野の萎縮──幼少期に激しい体罰を長期にわたり受けると、感情や理性をつかさどる「前頭前野」が約19%萎縮する。
2.暴言虐待による聴覚野の拡大──幼少期に暴言による虐待を受けると、会話や言語をつかさどる「聴覚野」の一部が約14%拡大する。
3.性的虐待による視覚野の萎縮──幼少期に性的虐待を受けると、視覚をつかさどる「視覚野」が約18%萎縮する。
4.両親のDV目撃による視覚野の萎縮──幼少期に頻繁に両親のDVを目撃すると、視覚野の一部が約6%萎縮する。
「身体的虐待」は脳の感情や理性を司る前頭前野が萎縮し、「心理的虐待」は会話や言語を司る「聴覚野」が拡大し、他人に対する暴言やDVを見聞きすると「聴覚野」が萎縮し、「性的虐待」を受けると視覚を司る「視覚野」が萎縮します。
心理的虐待で脳が拡大してますが、理由はわかりません。虐待の鮮明な記憶が残るため、脳が拡大をするというものなんでしょうか。
身体的虐待の脳萎縮
大人の暴力で子供が心身的なストレスを感じると、脳の前頭葉が萎縮します。
前頭葉は思考、自発性、感情、性格、理性をコントロールするため、前頭葉が萎縮した子供は感情をコントロールできず暴力的になったり、物事に関心ややる気を示せなくなる場合があります。
性的虐待の脳萎縮
子供自身または身近な人の性的虐待を見ることで、後頭葉にある視覚野が萎縮します。
視覚野は視覚対象を認識して形状などを長期記憶として留める機能があるので、視覚野が萎縮した子供は相手の認識が薄れ、長期記憶に残さない影響が出ます。
性的虐待、体罰、言葉による暴力で脳が萎縮
ネグレクト(育児放棄)の脳萎縮
親の育児放棄で子供が愛情を感じられなくなると、側頭葉内側の扁桃体が萎縮します。
扁桃体は記憶力や学習能力を司り、怒り、恐れ、喜び、悲しみなどの感情に関連付けた記憶の形成と貯蔵をするので、扁桃体が萎縮した子供は情緒不安定になります。
心理的虐待の脳萎縮
加害者から言葉の暴力を受けたり、夫婦喧嘩など身近な人に対する暴力・暴言を見聞きすることで、 側頭葉の上側頭回、横側頭回にある聴覚野が萎縮します。
聴覚野は音などの聴覚情報、言語情報の処理を担う領域なので、聴覚野が萎縮した子供は聴覚や言語の発達に障害が起こる可能性があります。
躾と児童虐待の境目は愛情の共有
まーさ
本来子供に脳萎縮は起こりません。加齢、アルコール、病気などはほぼ子供に関係ありません。ところが虐待で子供がストレス受けると脳が萎縮し、成長に影響があります。
では強く叱る、おしりを叩く、兄弟が叱られるところを見るなどは虐待にあたり、脳萎縮につながるんでしょうか。
もちろん正当な理由でも、子供は叱られるとストレスを感じます。そのため親は子供を叱った後の愛情表現が必要です。
子供が虐待でストレスを感じて脳萎縮につながるのは叱ることに親の愛情がなく、子供も親の愛情を感じられないためだと思います。
もし親が愛情を持って叱っても、子供が愛情を感じなければ虐待と同じように脳萎縮が起こる可能性があります。子供は愛情の認識が難しいので、普段の接し方や愛着関係から対象が信用できるかどうかが大切です。
そのため「これは愛を持った躾だ!うちの育児に口出すな!」と親が言っても、子供が親を信用できなければ親の行為は躾じゃなく虐待です。
子供を良い未来に導くには信頼関係が不可欠です。普段の子供との接し方と愛着関係の築き方が大切だということですね。躾と虐待の違いは以下も参考にしてください。
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