厚生労働省によると全国208箇所の児童相談所での児童虐待相談対応件数は、平成27年度で103,260件もあるそうです。1日280件以上の児童虐待の相談があることになります。
ただ児童相談所に相談するハードルは低くはないですよね。そのため、この件数が氷山の一角なのは多くの人が予想できます。
ちなみに平成26年度の相談対応件数は88,931件なので、1年で大幅に増加しています。
多くの親は児童虐待に憤りを感じ、大人が子供に危害を加える理由が理解できません。現実味がないので、自分とは関係ないと感じる人もいるかもしれません。
たしかに、わたしたちには児童虐待の加害者の気持ちがわかりません。そのため、児童虐待の詳細や実態を把握していない人が多いでしょう。
そこで今回は児童虐待がどのようなものなのか、児童虐待の件数推移や加害者の内訳、被害者の年齢内訳などについてお話します。
児童虐待は決して対岸の火事じゃありません。身近なものとして捉えることで、児童虐待を減らす意識を共有できるはずです。
目次
児童虐待とは
まーさ
児童虐待(child abuse)とは、乳児・幼児の保護者(親または養育者)が、子供に身体的・精神的な苦痛を与える行為で、とくに幼児の場合は「
児童虐待は1970年代までは身体的な虐待のみでしたが、精神的苦痛も児童虐待とみなされるようになり、現在は以下の4種類に分類されます。
身体的虐待
身体的虐待とは子供を殴る、蹴る、投げる、激しく揺さぶる、やけどを負わせる、溺れさせる、首を絞める、逆さ吊りにする、異物を飲ませる、食事を与えない、戸外にしめだす、軟禁する、タバコの火やアイロンを押し付けるなどの暴力行為です。
児童虐待の防止等に関する法律|第2条第1項
揺さぶられっ子症候群の一次被害は、この身体的虐待にあたります。
性的虐待
性的虐待とは子供に対する性的行為、性的行為の示唆、性的暴行、性的行為を見せる、性器を触る、性器を触らせる、ポルノグラフィの被写体にするなどです。
児童虐待の防止等に関する法律|第2条第2項
ネグレクト(育児放棄)
ネグレクト(育児放棄)とは子供を家に閉じ込める、食事を与えない、不潔にする、自動車の中に放置する、放置して外出する、学校に登校させない、重い病気でも病院に連れて行かないなど保護の怠慢・拒否・放置で子供の健康や安全を損なう行為です。
児童虐待の防止等に関する法律|第2条第3項
心理的虐待
心理的虐待とは子供に対する言葉による脅しや暴言、自尊心を傷つける言動、無視、兄弟姉妹間の差別的な扱い、子供の目の前で暴力をふるうなど子供に著しい心理的外傷を与える言動です。
児童虐待の相談件数と推移
全国の児童虐待の明確な件数はわかりません。潜在的な虐待も多いので、児童相談所への相談対応件数を数えるしかありません。
冒頭通り平成27年度は103,260件ですが、それ以前の相談対応件数はどう推移しているでしょうか。以下は、平成2年-26年までの児童虐待相談の対応件数推移です。
平成2年の1101件から児童虐待の相談件数は増え続けています。平成27年度は103,260件なので、25年で100倍に増加しています。
もちろん単純に虐待が100倍になったんじゃなく、相談できる環境が整ったことや世間の関心が高まったことで潜在的な児童虐待が表面化した良い面もあるでしょう。
ただし相談件数が常に右肩上がりなのは、児童虐待の件数自体も増加したと考えるのが妥当だと思います。
児童虐待の加害者の割合と被害者年齢の割合
まーさ
では児童虐待の加害者は一体誰なのか、また何歳の子供が児童虐待を受けているかを見てみます。
児童虐待の加害者内訳
- 実父|29.0%
- 実父以外の父|6.2%
- 実母|57.3%
- 実母以外の母|0.8%
- その他|6.7%
まず児童虐待の加害者は「実母」が57.3%を占めています。さらに「実父」が半分の29.0%で、実の両親が虐待の加害者になる割合は86%を超えます。
ニュースでよく見る「子供の母親の恋人」が加害者なのは「その他」です。そう考えると、メディアはもっと実父母の児童虐待を取りあげた方が良いように思います。
児童虐待の被害者年齢内訳
- 0-3歳未満|18.8%
- 3歳-学齢前|24.7%
- 小学生|35.2%
- 中学生|14.1%
- 高校生等|7.2%
次に被害者の年齢ですが、3人に1人は「小学生」で35.2%、次に「3歳-学齢前」が24.7%、「0-3歳未満」が18.8%です。乳幼児の合計で43.5%にも上ります。
加害者と被害者年齢の内訳から単純に考えると、実母や実父が乳幼児から小学生に対して児童虐待を行うことが多いようです。
大人が力で負けない幼児・小学生を虐待する……考えただけで気分が悪くなります。
児童虐待の問題点と必要な法改正
まーさ
虐待がある環境を改善するには社会規範が必要ですが、前提として法整備が急務です。
児童虐待の現場で何が問題なのか、必要な法改正や法整備は何か、子ども虐待・性犯罪をなくす会の「シンクキッズ」は以下の問題点と必要な法整備を指摘しています。
虐待の現状、問題点と必要な法制度(概要) | Think Kids(シンクキッズ)こどもの虐待・性犯罪をなくす会
児童虐待対策の具体的な問題点
現在の児童虐待への対応には、以下の問題点が考えられます。
- 病院、学校、共同住宅からの児童虐待の通報が少ない
- 児童相談所が児童虐待を知りながら保護できていない
- 警察が児童虐待の発見、保護、検挙活動が不十分
- 児童虐待を繰り返す親に対する指導が不十分
- 刑罰による児童虐待の抑止力が不十分
- 児童虐待被害者の治療や精神的ケアが不十分
- 児童相談所の人員が不足している
- 一時保護所の受入れ人数が不足している
児童虐待に必要な法制度の改善
児童虐待は「児童虐待の防止等に関する法律」による防止・抑止が求められていますが、まだ以下の改善点が不足しています。
- 病院・学校等からの通報を促す制度の整備
- 警察による虐待被疑がある子供の緊急保護
- 児童相談所による子供の安全を最優先とした一時保護の義務化
- 児童虐待死を起こした保護者に対する罰則の強化
- 児童ポルノの単純所持に対する罰則
- 児童虐待を受けた子供の治療全般に対する負担
- 養育費の支払いを確保するための制度の整備
- 子供が死亡した場合の死因検証制度の整備
最近児童相談所の対応が問題に取り上げられることは多いですが、そもそもその前に十分な法整備が必要なはずです。
穴の空いたバケツで水を汲んでも、水は溜まりません。水を汲む人を責める前に、穴が空いてないバケツを用意するべきです。
大人は児童虐待の実態を知るべき
一般的な親は児童虐待の加害者の気持ちがわからないので、実態に深く興味を持てません。またストレスになるので、無意識に情報を避ける気持ちもわかります。
ただ児童虐待が増えた中で、自分とはまったく関係がないとは言えない人もいるはずです。
わたしも保育の現場で、何度か「この子虐待受けてる……?」と思ったことがありました。もちろん、子供の様子が普段と違うだけで虐待を決めつけられません。
児童虐待は実態が見えにくいので保育士単独では動けず、園内で情報共有し、児童相談所や自治体に入ってもらって対応するので時間がかかります。
疑わしい親・養育者の中には、躾として子供に手を上げることもあります。虐待と躾を区別する難しさもあるので、潜在的虐待を見極めることは難しいんです。
昔ながらの躾すべてを虐待と言って良いかわかりませんが、潜在的な虐待を減らすためにも、親が躾と虐待の定義を深く考える必要はあるはずです。
少なくとも年間述べ10万件以上の児童虐待相談があるのは事実なので、子育て世代の親にとって児童虐待は対岸の火事ではありません。
わたしたち大人が関心を持って児童虐待の実態を理解し、地域で相互監視を強くできれば、潜在的な児童虐待の被害も減らすことができるんじゃないかと思います。
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