哺乳瓶は赤ちゃんの必須アイテムです。搾乳した母乳を入れて飲ませたり、調乳した粉ミルクを入れて飲ませたり、ときには麦茶などを入れて飲ませることもあると思います。
そんな哺乳瓶で気を付けなければいけないことは、赤ちゃんに感染症が起こらないように、哺乳瓶自体を常に清潔に保つことですね。
とくに粉ミルクには乳児に感染しやすい「サカザキ菌(Enterobacter sakazakii)」や「サルモネラ菌(Salmonella bongori)」が潜んでいる可能性があり、感染すると重篤な症状を起こします。
哺乳瓶は毎日使うものなので、センシティブに考えている人は、WHOが出した「Safe preparation, storage and handling of powdered infant
formula Guidelines(通称PIFガイドライン)」のことも知っているでしょう。
ただ、ガイドラインだけあって読むのになかなか一苦労だったりします。
そこで今回は、哺乳瓶使用時の調乳・洗浄・消毒の注意点についてWHOのPIFガイドラインの要点をまとめてみました。
目次
乳児用調製粉乳の安全な調乳、保存及び取扱いに関するガイドラインの説明にあたっての注意点
翻訳のニュアンスが異なる場合がある
注意点として、本ガイドラインの説明は、WHOのPIFガイドラインを2007年に厚生労働省が翻訳したものを元にしています。そのため、翻訳の段階で原文とはニュアンスが異なる場合があります。原文を見たい人は以下を参考にしてください。
なおガイドライン内にあるPIF(Powdered infant formula: PIF)とは、粉ミルク(乳児用調製粉乳)のことです。
あくまでもWHOのガイドラインである
説明内容は、WHOのPIFガイドラインの内容であり、その他の機関によっては解釈や方法論自体が異なる場合があります。たとえば、アメリカ小児科学会(AAP)では、家庭用の食洗機を使用すれば、哺乳瓶を消毒する必要はないとしています。
わたしの知る限り、WHOのPIFガイドラインがもっとも厳しい制約での哺乳瓶の取り扱い方を示しているため、慎重に考える場合は本ガイドラインに従うことをおすすめします。
WHOのPIFガイドラインの要点
哺乳瓶を触る前には手を洗う
哺乳瓶を触る際は、ハンドソープで手を洗ってきれいな水でしっかりすすいで、清潔なタオルで拭いてください。
調乳用の容器・哺乳瓶等を洗浄・滅菌する
調乳に使用する容器、哺乳便・乳首、コップ・スプーンなどの調乳器具は、熱いお湯と洗剤できれいに洗ってください。
調乳は70℃以上の湯冷ましを使う
調乳に使うお湯は湯冷ましを作り、70℃以上の湯冷ましで作ってください。ペットボトルの水も菌がいないわけではないので、使用前に沸騰させた方が良いでしょう。
電子レンジで加熱をすると温度が不均衡になるため、調乳では使用しないでください。また、粉ミルクはダマができないようにゆっくり振って、完全に溶かしきってください。
乳後の常温ミルクは2時間以内に使う
調乳したミルクは、冷たい流水下に置くか、冷水を張ったボールに浸して素早く冷却してください。ミルクは調乳から2時間以内に、赤ちゃんに飲ませきってください。
すぐに使わない場合は冷蔵保存する
調乳に70℃以上のお湯を使っても、細菌が死滅しない場合があります。残った細菌は冷蔵温度でも増殖しますが、増殖速度を遅らせることはできます。そのため冷蔵保存した場合のリスクは、1.3倍弱に増加します。
冷蔵保存は5℃以下の温度で保存することで、サルモネラ菌やサカザキ菌の増殖を防ぐことができますが、それ以上の温度では急速に増殖する恐れがあります。冷蔵庫は、調乳後1時間以内に5℃未満にまで引き下げられる能力がなければいけません。
常温ミルクは2時間、冷蔵は24時間で捨てる
常温のミルクは調乳後2時間以内、冷蔵保存した調乳済みのミルクは調乳から24時間以内で使いきってください。どちらもその時間を超えた場合は廃棄してください。
冷蔵ミルクの再加温は15以内にする
冷蔵保存した調乳済みのミルクは、使用する直前に取り出して再加温してください。再加温する場合は15分以内にしてください。とくに、ボトルウォーマーなどに長時間入れておくと、有害細菌の増殖に理想的な温度になる場合があります。
また、再加温する場合は温度ムラができるため、電子レンジを使わないでください。
残ったミルクは捨てる
使い残したミルクを後で再使用したり、新しく調乳したミルクを足してはいけません。時間が空く場合は、1度使用したものとして、ミルクを捨てて、すぐに洗浄してください。
使った哺乳瓶はすぐに洗う
使った哺乳瓶はできるだけすぐに洗ってください。使用して洗うまでに時間が経つと、細菌が生物膜(バイオフィルム)を形成してしまい、滅菌が難しくなる恐れがあります。
すぐに洗浄できない場合は、最低でも水で何度かすすぎ、できるだけ早いうちに洗浄・消毒をしてください。※
注意これはWHOのPIFガイドラインに書かれていません。
専用ブラシ・洗剤で哺乳瓶を隅々まで洗う
哺乳便と乳首は、専用ブラシを使って、熱いお湯と洗剤できれいに洗ってください。
清潔な哺乳瓶用ブラシで哺乳瓶の内側と外側、乳首用ブラシで乳首をこすり、残ったミルクを確実に除去してください。洗浄した後は、安全な水で十分にすすいでください。
哺乳瓶・乳首・スプーン等を煮沸消毒する
消毒は哺乳瓶・乳首だけでなく、スプーンや哺乳瓶用ブラシなどの調乳器具も消毒することが望ましいです。
煮沸消毒をする場合は、鍋など大型の容器に水を満たし、洗浄した哺乳瓶や調乳器具を完全に水中に浸して、中に空気の泡がないことを確認してください。哺乳瓶や調乳器具を取り出す際は、滅菌したピンセットやトングを使用することが望まれます。
安全策を理解して哺乳瓶・粉ミルクを扱おう
あらためて「乳児用調製粉乳の安全な調乳、保存及び取扱いに関するガイドライン」を読み直してみましたが、WHOは哺乳瓶の取り扱い方、粉ミルクの取り扱い方に、かなり厳しい制限を設けているようです。
ただし、WHOのPIFガイドラインは海外で起こったアウトブレイクが元になっており、日本とは環境が異なります。また、アメリカのように消毒は行う必要がないとしている国もあるため※、WHOのPIFガイドラインをどこまで厳密に守るかは、個人の裁量に任せられるものでしょう。
注意アメリカ小児科学会(AAP)の見解:How to Sterilize and Warm Baby Bottles Safely – HealthyChildren.org
わたしはWHOのPIFガイドラインほど厳密ではなく、消毒は1日1回だけでしたが、哺乳瓶使用後は毎回10分以内に洗っていました。近年は無菌の液体ミルクが出てきたため、ママの授乳環境も変わるかもしれません。
まずは最大の安全策をよく理解したうえで、自分なりの解釈も交えて哺乳瓶・粉ミルクを取り扱ってください。最後に要点をまとめておきます。
- 哺乳瓶を触る前には手を洗う
- 調乳に使用する容器・哺乳瓶等を洗浄・滅菌する
- 調乳は70℃以上の湯冷ましを使う
- 乳後の常温ミルクは2時間以内に使う
- すぐに使わない場合は冷蔵保存する
- 常温ミルクは2時間、冷蔵は24時間で捨てる
- 冷蔵ミルクの再加温は15以内にする
- 残ったミルクは捨てる
- 使った哺乳瓶はすぐに洗う
- 専用ブラシ・洗剤で哺乳瓶を隅々まで洗う
- 哺乳瓶・乳首・スプーン等を煮沸消毒する