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哺乳瓶を消毒する理由は?しないと赤ちゃんに影響がある?

哺乳瓶を消毒する理由は?しないと赤ちゃんに影響がある?

赤ちゃんが口にするものはとりあえず清潔にして、雑菌やウイルスから遠ざけたいと思うのが親心です。とくに哺乳びんは、1日に何回も使うため、隅々まで洗って、1回毎に消毒をして……とがんばっているママも多いでしょう。

ところが、最近よく聞くのは、哺乳瓶は消毒する必要がないというお話。

たしかに、雑菌が気になるなら、赤ちゃんが普段から口にくわえるおもちゃやタオル……むしろ床を這いずり回るため、指を消毒しても良いのではないかと思うくらいです。

ただ、育児書を見ると哺乳瓶の消毒方法は必ず載っているため、消毒の必要がないという意見はにわかに信じられません。

毎日育児で忙しいママは、「本当に哺乳瓶を消毒しなくても良いなら助かるんだけど……。」と思いますよね。

では、そもそも哺乳瓶の消毒が必要な理由は何でしょうか。また、哺乳瓶を消毒しなくても良いというのは、本当の話なのでしょうか。

今回は、哺乳瓶の洗い方といくつかの消毒の仕方、哺乳瓶の消毒の必要性についてお話したいと思います。

哺乳瓶の消毒が必要だと言われる理由

哺乳瓶の消毒が必要な理由は、単純にそこらにある雑菌・バイキンから赤ちゃんを守りたいからではありません。

稀に粉ミルクに混入する「サカザキ菌(Enterobacter sakazakii)」「サルモネラ菌(Salmonella bongori)」という食中毒の原因菌の繁殖を防ぐためです。

サカザキ菌とは

乳児がサカザキ菌に感染すると、数日間の潜伏期間を経て発症します。1歳未満の乳児が感染すると、発熱、食欲不振、発作等を起こすほか、菌が脳や脊髄に侵入し、髄膜炎を引き起こす可能性があります。

しかも、サカザキ菌の感染による乳児の致死率は10-80%、また髄膜炎を起こした乳児の致死率は40%とかなり怖い感染症です。とくに、生後2か月未満の新生児や低体重児は感染リスクが高いと言われています。

食品安全に関するリスクプロファイルシート|農林水産省

サルモネラ菌とは

乳幼児がサルモネラ菌に感染すると、6-72時間の潜伏期間を経て発症します。吐き気、腹痛、38℃前後の発熱、下痢などを起こし、重症の場合は致死率が0.2-0.5%ほどになります。

食中毒(サルモネラ菌)とは?|知っておきたい!家庭の感染と予防|サラヤ株式会社 家庭用製品情報

サカザキ菌はとくにリスクが高い!

どちらも乾燥した粉ミルクの中では増殖しないものの、調乳時に70℃以上のお湯で死滅させないと、増殖して感染の原因になります。

さらに、サカザキ菌は乾燥に強いため、感染しないまでも微量に哺乳瓶のラテックスやシリコン部分などに残っていると、後から繁殖する可能性があります。

哺乳瓶の消毒が必要だとする意見

では、哺乳瓶の消毒の必要性について、世界の各期間はどのような対応を求めているのでしょうか。

WHOとFAOの見解

世界保健機関(WHO)及び国連食糧農業機関(FAO)は、「乳児用調製粉乳の安全な調乳、保存及び取扱いに関するガイドライン」において、哺乳瓶などは使用前に徹底して洗浄及び滅菌することが重要だとしています。

E.Sakazakii は環境中に広く存在しており、ラテックスやシリコン及びステンレス鋼のような、一般的に、乳児の哺育器具に使用される表面部分に付着し増殖(「バイオフィルム」を形成)することが示されている。従って、全ての哺乳器及び調乳器具(例えば、哺乳カップや哺乳ビン、リング及び乳首)は、その使用前に徹底して洗浄及び滅菌することが重要である。これは、これらの器具類の表面におけるバイオフィルムの形成が感染の温床となり得ることがその理由であって、こうしたバイオフィルムは調乳された粉ミルクを持続的に汚染し続ける可能性がある(Iversen、Lane 及びForsythe、2004 年)。

乳児用調製粉乳の安全な調乳、保存及び取扱いに関するガイドライン(仮訳)

厚生労働省の見解

上記のWHO、FAOのガイドラインに対して、厚生労働省は「乳児用調製粉乳の安全な調乳、保存及び取扱いに関するガイドラインについて」を発表し、都道府県、関係団体に情報提供を行っています(2007年6月)。

厚生労働省は、本ガイドラインは以下の3点がポイントだとしつつも、哺乳瓶の消毒の必要性について独自の見解は出していません。ただ、関係団体に情報提供を行っていることから、WHO、FAOの意見に賛同していると言えます。

  • 乳児用調製粉乳の調乳の際、使用する湯は70℃以上を保つ
  • 調乳後は直ちに冷やす
  • 調乳後2時間以内に使用しなかったミルクは廃棄する

哺乳瓶の消毒が必要ではないとする意見

アメリカ小児科学会(AAP)の見解

アメリカ小児科学会では、使用する水の安全性が疑わしい場合は、哺乳瓶などを煮沸消毒をした方が良いとしていますが、そうでない場合は、哺乳瓶の消毒をする必要はないとしています。哺乳瓶に関するポイントは以下の3つです。

  • 哺乳瓶を触る場合は必ず手を洗う
  • 使う哺乳瓶や乳首などのパーツは洗剤でをよく洗うこと
  • 使った哺乳瓶を煮沸消毒する必要はないが乾燥できる食洗機で洗うこと

How to Sterilize and Warm Baby Bottles Safely – HealthyChildren.org

つまり、消毒の必要性がない代わりに、食洗機が必要だということです。たしかに食洗機は70-80℃ほどのお湯ですすぐため、サカザキ菌を殺菌できる温度であることは間違いありません。

吉留厚子教授の論文の見解

鹿児島大学の吉留厚子教授は、哺乳瓶消毒と子供の消化管疾患に関連性があるかを以下のように実験し、論文を発表しています。

哺乳瓶に細菌を付着させ、「お湯を入れて5分間放置する」「水を入れて電子レンジで加熱する」「食洗機とブラシで洗う」「水道水とブラシで洗う」という方法で、細菌がどれくらい残るかを調べました。

その結果、「お湯を入れて5分間放置する」は90℃以上のお湯、「水を入れて電子レンジで加熱する」は3分以上の加熱、また「食洗機とブラシで洗う」という条件で、細菌が検出されないことがわかりました。

家庭における哺乳瓶消毒の実態および哺乳瓶消毒方法と児の疾患との関連

つまり、哺乳瓶はわざわざ消毒する必要はなく、家庭用食洗機があれば十分にサカザキ菌を防ぐことが可能だという結果です。

ただし、この実験は細菌付着後すぐに実験をした結果です。細菌付着後に時間が経って、細菌が生物膜(バイオフィルム)を形成してしまうと、容易に除菌・殺菌ができなくなるものと考えられます。

哺乳瓶は消毒すべき?しなくても良い?

さて、「哺乳瓶は消毒する必要がある」「哺乳瓶は消毒しなくても良い」という2つの見解がありますが、どちらが正しいのでしょうか。

専門家が議論していることなので、わたしがどちらが正しいと言うことはできませんが、以下の2点ははっきりしています。

  • サカザキ菌はとても怖い細菌で、赤ちゃんが感染すると命の危険性がある
  • サカザキ菌の感染リスクは、とくに生後2か月未満児や未熟児が多い

そのため、面倒だとしても、最低限生後2か月までは哺乳瓶の消毒をした方が良いのでしょう。余裕を持つなら生後3-4か月ごろまでと考えても良いかもしれません。

ただし、WHOのガイドラインは1歳未満を対象としており、1歳未満はガイドラインに従うべきだと記載されています。

一部で、哺乳瓶を毎回消毒するなんて気にしすぎという声もあります。たしかに個人的には、毎回徹底的に消毒をするのはやりすぎな気もしますが、万が一のことを考えたら気にしすぎくらいでも良いのかもしれません。

もちろん、家庭用食洗機があれば80℃のお湯ですすぐため、毎回消毒をする必要はないと思います(個人の見解です)が、赤ちゃんが哺乳瓶から感染しないために、以下のことは十分に気をつけてください。

哺乳瓶からの感染を防ぐための注意点

  • 哺乳瓶使用後はすぐに洗うこと
  • 哺乳瓶は洗剤とブラシで隅々まで洗うこと
  • 食洗機に入れる場合も事前にきれいにあらうこと
  • 最低生後2か月までは煮沸消毒などをした方が良いこと
  • 低体重児はそれ以上十分な消毒期間を設けること
  • 哺乳瓶を触る際は十分に手を洗うこと
  • しっかりと乾燥させて水分を残さないこと

哺乳瓶消毒つらい…SNSに悲痛な悩み 米国では不要論 [ニュース4U]:朝日新聞デジタル