妊娠・出産に関する用語には、違いがわかりにくい似た言葉がいくつもあります。そんな似た言葉に、「お産」「出産」「分娩」があります。
たとえば医師と話をすると頻繁に「分娩」という言葉を使います。出産のことだとわかりますが、それでも「分娩と出産って違いあるんだっけ?」と考えてしまいます。
もちろん、妊娠して初めて「分娩」という言葉を聞く人もいるでしょう。
わたしたちは赤ちゃんを産むことを「お産」や「出産」と言い、何となく「分娩」も赤ちゃんを産むことだと知ってますが、なぜ言葉が違うかはよくわかりません。
「お産」「出産」「分娩」は、使い分けなければいけない言葉なんでしょうか。それとも曖昧なだけで同じ意味の言葉なのでしょうか。
今回は、お産、出産、分娩の意味の違い、それぞれ正しい使い方があるのかどうかについてお話します。
お産とは、出産とは
お産と出産は言い方が違うだけで、同じ意味で使います。「産」はそれ自体に「子をうむ」という意味があるので、「お」をつけてお産という言葉になっただけです。
出産とは、赤ちゃんを妊婦の子宮内(胎内)から外に出すことを言います。出産は赤ちゃんを産むことを総称して表す言葉で、社会的、文化的側面も含んだ一般的な用語として広く使われています。
赤ちゃんを胎内から外に出す方法は、産道を通る経腟分娩でも、帝王切開でも何でも構いません。また、外に出した赤ちゃんがすでに死亡している場合も、「死児の出産」という言い方をします。
ただし妊娠22週以前に胎児を胎外に出す場合は、胎児に命がない状態のため死児の出産ではなく流産として区別して使われます。
- 流産|妊娠22週未満の胎児が娩出されること
- 初期流産|妊娠12週未満の流産
- 後期流産|妊娠12週-妊娠22週未満の流産
- 死産|妊娠22週以降の死児の出産
分娩とは
分娩とは、出産と同じくどのような方法でも良いので赤ちゃんを妊婦の胎内から外に出すことです。
ただし出産が赤ちゃんを産む総称を指すことに対して、分娩は医療用語なので分娩の開始と終了が明確に決まっています。
正常分娩の場合、陣痛発来(10分周期の定期的な陣痛など)によって分娩が開始されます。この時期を「分娩第1期(開口期)」と呼びます。
そして「分娩第2期(娩出期)」を経て、「分娩第3期(後産期)」で胎児と子宮内容物を娩出すると、分娩終了と見なします。詳しい分娩の流れは以下を参考にしてください。
異常分娩の場合は分娩の開始は同じく陣痛発来、または帝王切開を開始したとき、そして分娩の終了は胎児と子宮内容物を母体外に娩出完了したときになります。
つまり、分娩は赤ちゃんを産む行為の総称ではなく、開始と終了が決まった赤ちゃんを子宮から取り出す医療行為なんです(助産院では医療行為に当たらない)。
出産(お産)と分娩の使い方
このように出産と分娩は、「子を生む」という同じような意味に思えますが、細かく比べると違いがあることがわかります。
わたしたちが赤ちゃんを産むことを表す場合は「出産」「お産」で良いと思います。これには赤ちゃんを胎内から取り出す行為の他に、産む・産まれるという現象を含みます。
「来週には出産のために入院します。」
「ママが○ちゃんを出産したときはねぇ~~」
一方、「分娩」は赤ちゃんを胎内から取り出す医療行為のみを明確に表す言葉なので、上記の様に使うと意味は通じますが多少違和感を感じます。
「来週には分娩のために入院します。」
「ママが○ちゃんを分娩したときはねぇ~~」
分娩はその行為が行なわれる際の細かい状況を聞きたい場合、医師と話して正確な知識を得たい場合に、積極的に使えば良いでしょう。
分娩行為のどの段階でどのような処置があるのか、胎児や母体がどんな状態なのかを詳しく知ることは、出産に臨むママの安心材料になるからです(人による)。
出産やお産ほど日常的に使われませんが、分娩も一般的に使われる言葉なので、堅苦しく使い分けを気にする必要はありません。まぁそこまで気にしませんよね。
同じように、「生まれる」と「産まれる」にも違いがあります。以下を参考にしてください。