妊娠未経験の人が、妊娠と聞いて思い浮かべる言葉の1つに「つわり」があると思います。「うっ……ま、まさか赤ちゃん……?」というベタなドラマはたくさんありますね。
つわりは全ての妊婦に起こる症状ではないですし、個人差もあります。また「うっ……。」と吐き気を催すだけがつわりではありません。
吐き気も常に気持ちが悪かったり、だんだん吐き気がしたり、また反射の様に食べた物がこみ上げたりなどの種類があります。
つわりのせいで食欲不審に陥り、妊娠前より体重が減ってしまうなど、胎児の成長が心配されることもあります。
- つわりって怖い……。具体的にどんな症状があるものなの?
- つわりっていつごろ始まって、いつまで続くものなのかな……。
- つわりにならない方法とか、治す方法ってないの?
つわりは人によって重さが変わりますが、医学的につらさを和らげる方法はあります。
いまつわりに苦しんでいる妊婦、妊娠したいけどつわりが怖い人はこの記事を最後まで読んで、妊娠生活を乗り切る参考にしてください。
目次
つわりってどういもの?症状は?
まーさ
つわりとは
つわり(悪阻)とは、一般的に妊娠5-6週前後に始まり、妊娠14-17週前後に消失する嘔吐、吐き気、食欲不振、食べ物の好みの変化などを伴う一連の消化器症状です。
また吐き気、嘔吐などの消化器症状の他にも全身の倦怠感、頭痛、眠気を感じるつわりもあります。
妊婦がつわりになる割合
つわりを経験する妊婦は一般的には50-80%以上言われますが、ルナルナ(運営元|エムティーアイ)が行なったアンケート調査では妊婦の92.8%に発症しています。
個人差はありますが、妊娠したらつわりの症状が現れる覚悟をした方が良いですね。とくに普段の生理(生理前症候群|PMS)で吐き気がある人は、症状が重い場合があります。
またつわりは経産婦より初産婦の割合が多いとされますが、症状は経産婦の方が重い傾向があります。さらに多胎妊娠、以前に妊娠悪阻や妊娠高血圧症候群を経験した妊婦の方が重くなります。
つわりの症状が重度になると「
つわりは全妊婦の50~80%に発症するが,妊娠悪阻の頻度は全妊婦の0.1%前後といわれる.また,経産婦より初産婦にその頻度は多いとされているが,重症化するものは経産婦に多い.季節的変動はみられない.妊娠悪阻の頻度を上げる他の因子としては多胎妊娠,妊娠悪阻の既往,妊娠中毒症の既往などがある
つわりの種類と症状
つわりの種類と症状は意外と多いので、後ほど詳細解説します。
つわりの原因
つわりのメカニズムは明確に解明されていませんが、原因の1つに妊娠初期の急激なホルモン分泌、代謝の変化、環境変化に母体が適応できないため起こると考えらます。
つわりの原因は以下の6つに分かれると推測されます。
- ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)
- 甲状腺ホルモン
- プロゲステロン(黄体ホルモン)
- エストロゲン(卵胞ホルモン)
- 子宮・胎盤形成による低血糖
- 精神・心理学的因子
これらの原因で、直接的な嘔吐神経の刺激で生じる「中枢性嘔吐」と交感神経を介して嘔吐中枢が刺激され生じる「反射性嘔吐」のどちらも引き起こします。
つわりの種類と症状
まーさ
吐きつわり
吐きつわりとは吐き気を催す一般的なつわりで、胃や胸がムカムカして一日中気持ち悪かったり、突然吐き気を催す症状です。
吐きつわりの症状
吐きつわりは慢性的に吐き気が続いたり、突然嘔吐するなど日々症状の重さが変わるので厄介です。吐きつわりが重いと「重症妊娠悪阻」と診断され、病院での治療や指導が必要になります。
吐きつわりの対処法
吐きつわりがある人は、食べられるときに食べることが大切です。慢性的な吐き気がある人はさっぱりした素麺などを食べ、栄養はサプリメントで補ってください。
米産科婦人科学会では、2015年度の「悪阻治療に関するガイドライン」で、ビタミンB6またはビタミンB6+抗ヒスタミン薬doxylamineを薬物治療として推奨しています。
つわりのファーストライン治療にビタミンB6+doxylamine|ニュース|Medical Tribune
食べつわり
食べつわりとは空腹になると胃痛や胸焼け、吐き気が襲ってくる症状です。
食べつわりの症状
食べつわりの原因は低血糖だと言われています。妊婦は妊娠で子宮拡大や胎盤形成に大量の糖を使うので、低血糖になりがちです。
低血糖を起こすと脳が糖を摂取するよう促しますが、その際の副交感神経症状で吐き気や頭痛、めまいが起こります。
食べつわりの対処法
食べつわりはおなかが空くと気持ち悪くなるので、食事量を減らして食事回数を増やしたり、癖のない食べ物を間食して低血糖を防ぎます。
睡眠中は空腹時間が続くので、朝に重い症状が出る人が多いようです。そのため枕元にビスケットやクラッカーを用意し、空腹時間を減らしてください。
またブドウ糖が多い飲料水で低血糖症状を軽くしましょう。低血糖回避が目的なので、医師の指示に従って飲む量を調整してください。スポーツドリンクや炭酸抜きの炭酸飲料、ビタミン飲料がおすすめです。
においつわり
においつわりとは妊娠前は平気だった匂いにも敏感になり、気持ちの悪さや吐き気に襲われる症状です。
においつわりの症状
においつわりはタバコ、歯磨き粉、香水、生ゴミなど物の匂いだけじゃなく、キッチン、生鮮売り場、スーパーなどの場所、匂いがない湯気も気持ち悪くなります。とくに以下の匂いで気持ち悪くなるようです。
つわり中にあなたが嫌いになった場所、匂いワースト20|若葉マーククラブ
- 01|たばこ(17.4%)
- 02|キッチン(16.6%)
- 03|生鮮売り場(15.5%)
- 04|冷蔵庫(8.9%)
- 05|歯磨き粉(8.1%)
- 06|湯気・湿気(6.2%)
- 07|スーパー(5.2%)
- 08|生ゴミ(4.8%)
- 09|香水・化粧・整髪料(2.7%)
- 10|すべて(2.6%)
- 11|お風呂場・石けん類(2.6%)
- 12|夫|48(2.2%)
- 13|洗濯・洗剤(1.7%)
- 14|食べ物のCMやちらし(0.9%)
- 15|生ツバ(0.7%)
- 16|部屋(0.7%)
- 17|満員電車(0.6%)
- 17|職場(0.6%)
- 19|トイレ(0.6%)
- 20|排気ガス(0.5%)
- 20|ペット(0.5%)
これらは実際の匂いだけじゃなく、想像だけで気持ち悪さを感じることもあります。つわり中じゃなくても想像したくない匂いはありますね。夫という回答も(^_^;)
においつわりの対処法
においつわりの対処法は、嫌いな匂いがある場所・物に近づかないことが基本です。
- 匂いを感じる場所に近づかない
- 匂いをごまかすガムや飴を常に食べる
- 鼻栓、マスクなど物理的に匂いを遮断する
匂いの元に近づく必要があれば、ガムや飴を食べて匂いが薄れるか試してください。
それでも気持ち悪い場合は家では鼻栓をして、外出時は鼻栓の上にマスクをすると効果的です。匂いのイメージで吐く人もいるので、気を紛らわせる方法も持ちましょう。
また蒸し暑い場所は匂いを強く感じるので、とくに夏は人ごみを控えた方が良いですね。
眠りつわり
眠りつわりとは普段の何でもないときに急に眠気に襲われる症状です。
眠りつわりの症状
妊娠初期はプロゲステロンが大量分泌されて高体温になるので、昼夜関係なく眠くなります。また身体の疲れや倦怠感を感じたり、頭がうまく回らず判断力が乏しくなったり、記憶力が低下します。
眠りつわりの対処法
眠りつわりはあまり知られてないので、周囲の人に誤解されるのがつらいですよね。そのため眠りつわりの症状があるなら、まず周囲の人に症状を話して理解を求めましょう。
眠いときは素直に寝ればいいんですが、寝すぎると夜の睡眠に影響します。効果的な仮眠は昼過ぎの20分ですが、慣れるまでは眠る時間よりも回数を増やしましょう。
どうしても眠っていけない場合は、軽く身体を動かしたり、シャワーを浴びて乗り切ります。もちろん車の運転は控えてください。また、血糖値が上がらないよう食事や飲み物に気を使いましょう。
よだれつわり(唾液過多症)
よだれつわりとは唾液の分泌が増え、唾液に不快に感じて飲み込めなくなったり吐き気を催す症状です。
よだれつわりの症状
よだれが出るのは、hCG分泌で嘔吐中枢が刺激されてプロゲステロンが胃腸の働きを抑制するためです。
唾液の不快感は個人差がありますが、常に唾液が多い状態が続くので飲み込むよりも吐いた方が楽と感じる人も多いようです。
また唾液に不快な匂いを感じたり、唾液に粘り気を感じることもあり、それが吐き気の原因になる場合もあります。
よだれつわりの対処法
よだれつわりは唾液量が増えるので、出すか飲み込むしかないです。
唾液が飲み込めないときはタオルを咥えたり、ティッシュで拭いて対応し、外出中はペットボトルに唾液を吐いたり、ガムなどで味をごまかして飲み込むよう対処しましょう。
人前で話す仕事をしている人は唾液を吐き出すことが難しいため、コットンや小さく丸めたティッシュを舌の裏に入れて、何度も取り替えて対処しているようです。
つわりはいつからいつまで?ピーク時期は?
まーさ
一般的なつわりは妊娠5-6週に始まり、妊娠14-17週に消失すると言われますが、ルナルナ(運営元|エムティーアイ)の調査情報をグラフにすると以下の様になります。
「“つわり”について」の調査結果~妊娠と共にやってくる“つわり”という試練を乗り越えよう!~|株式会社エムティーアイのプレスリリース
つわりが始まった時期は?
- 妊娠3週以前|5.0%
- 妊娠4-5週|40.0%
- 妊娠6-7週|30.1%
- 妊娠7-8週|6.1%
- 妊娠8-9週|11.2%
- その他|7.6%
75%以上の人が妊娠7週までにつわりが始まったと答えています。そのため妊娠を意識してない人も、吐き気で妊娠に気付く可能性があります。
まれに妊娠3週未満で症状が出る人もいます。この妊娠超初期のつわりも、hCGや甲状腺ホルモンなどの女性ホルモンが原因と言われます。
つわりが治まった(終わった)時期は?
- 妊娠8-11週|8.2%
- 妊娠12-15週|28.6%
- 妊娠16-19週|33.2%
- 妊娠20-23週|13.4%
- 出産まで続いた|6.3%
- その他|10.3%
妊娠19週までにつわりが治まった人は70%以上、妊娠23週までが83%以上なので、多くの人は妊娠中期につわりが終わります。
一方出産までつわりが続く人も6.3%います。長いと10ヶ月も吐き気などの症状に苦しめられるということです……。
つわりのピーク時期は?
人によって違いますが、一般的につわりのピーク時期は妊娠8-10週です。その理由の1つはhCGの分泌量がピークだからです。
この時期を過ぎてもつわり症状が改善がしない場合は、その他の要因で吐き気や頭痛、肩こりが起こったり、症状が悪化すると妊娠悪阻に至る可能性もあります。
- 妊娠3週の尿中hCG量|0-50 mIU/ml
- 妊娠4週の尿中hCG量|20-500 mIU/ml
- 妊娠5週の尿中hCG量|500-5,000 mIU/ml
- 妊娠6週の尿中hCG量|3,000-19,000 mIU/ml
- 妊娠8週の尿中hCG量|14,000-169,000 mIU/ml
- 妊娠12週の尿中hCG量|16,000-160,000 mIU/ml
- 妊娠24週の尿中hCG量|2,500-82,000 mIU/ml
- 妊娠36週の尿中hCG量|2,400-50,000 mIU/ml
ヒト絨毛性ゴナドトロピン(定性)|シスメックス プライマリケア
つわりの予防や対処法
まーさ
つわりの原因の多くは女性ホルモンなので、残念ながら予防は難しいです。
ただ吐き気や嘔吐は消化器官に負担をかけ、身体の水分や電解質を多く失います。そのため、つわりでつらいときはその後の対処がとても大切です。
つらいつわりの対処法
つわりを意識すると、精神的な要因で余計に吐き気を催す場合があります。そのため散歩したり、映画を見て気分転換するなど自分なりのリラックス方法を探しましょう。
また身体を締め付けない服を着たり、積極的に横になって休みましょう。嘔吐後は匂いで気持ち悪くなるので、水で口の中をゆすいで匂いや吐物をこまめに取り除きます。
匂いつわりは妊娠前まで大丈夫だった匂いも苦手になり、何も食べられない場合があります。そのため、サプリメントで出産に必要な栄養を摂取しましょう。
嘔吐で不足する栄養素は、葉酸、鉄分、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、食物繊維、タンパク質、ビタミンC、ビタミンB群です。詳しくは以下を参考にしてください。
また嘔吐後は水分といっしょに電解質も失います。とくに夏場に嘔吐が続くと脱水症状のリスクがあるので、水分と塩分(ナトリウム)を同時に摂取してください。
つわりの治療法
まーさ
「単なる吐き気や嘔吐の症状だから……。」と医師に相談しない人がいますが、つわりは症状が重くなると重症妊娠悪阻に至る可能性もあります。
日本やアメリカでは、つわりの治療に対するガイドラインがあり、場合によって薬物治療も行なわれます。
アメリカ産科婦人科学会(ACOG)の推奨
アメリカ産科婦人科学会(ACOG)では、2015年度の「悪阻(つわり)治療に関するガイドライン(Practice Bulletin)」で、ビタミンB6またはビタミンB6+抗ヒスタミン薬doxylamineを薬物治療として推奨しています。
つわりのファーストライン治療にビタミンB6+doxylamine|ニュース|Medical Tribune
ガイドラインでは「つわりの薬物治療は個人が決めるべきことだが、重いつわりは重症妊娠悪阻に至る可能性があるため、ある程度コントロールできる方が良い」としています。
できるだけ薬に頼りたくない人はビタミンB6を多めに摂取するなど、早いうちから民間治療も試してみましょう。
もし薬に頼る前に別の方法でつわりに対処したい場合、いくつかの「民間療法」(例えばショウガ入りの飲料、クッキーなど)も有用な選択肢であり、自分でビタミンB6を摂取してみることも有効だとCaughey 氏らは話している。
日本産婦人科学会(JSOG)の推奨
日本産婦人科学会(JSOG)では、「産婦人科診療ガイドライン–産科編」でつわりの治療法として以下を推奨しています。
- 少量頻回の食餌摂取と水分補給を促す(推奨A)
- 脱水に対して充分な輸液を行う(推奨A)
- 輸液にはthiamine(塩酸チアミン;ビタミンB1)を添加してWernicke脳症を予防する(推奨A)
- 抗ヒスタミン薬やpyridoxine(ビタミンB6)などの薬物療法を考慮する(推奨C)
- 深部静脈血栓の発症に注意する(推奨C)
こちらでもビタミンB6が推奨されているので、積極的に摂取してください。
ビタミンB6と葉酸は必須栄養素
つわりが重いと飲食できない時期が続くこともあります。そのため「単なるつわり」とは思わずに、早めに医師に相談してください。
また少しでも吐き気を解消する対策として、サプリメントでビタミンB6や葉酸も摂取してください。
妊娠初期に葉酸が不足すると胎児が神経管閉鎖障害を発症する可能性があり、厚生労働省は1日0.4mgの葉酸摂取を推奨しています。産婦人科医が行った実験では、ビタミンB6と葉酸を毎日摂取することで、つわりが改善するという結果が見られました。
ただしビタミンB6単一、葉酸単一だと栄養が偏るので、葉酸とビタミンB6を多く含み、妊婦に必要な栄養素もバランスよく摂取できるサプリを選びましょう。
わたしがおすすめする「マカナ」は他のサプリと違い、栄養成分基準値を満たした栄養機能食品に認定されています。
ビタミンB6も1日4粒で2.5mg含まれていて効率良く摂取できます(調べた限り他のサプリは0.3-1.8mgほど)。また葉酸も厚生労働省推奨の0.4mg含まれています。
つわりが妊娠中期(妊娠16-27週)に入っても治まる気配がない、つわりが辛くて何も食べられない場合は、医師の指導のもとで対処療法や生活指導を受けてください。