はたらけど猶わが生活楽にならざり
ぢつと手を見る
石川啄木 著「一握の砂」
さっきまで「あーあー」唸っていた赤ちゃんが、黙って手を見つめています。不思議そうに手を見つめる赤ちゃんは可愛いくて、見てるこっちがニヤニヤしてしまいます。
ただし赤ちゃんが見つめる手は石川啄木のように開いた手ではなく、ほとんどが握りこぶしです。手を大きく上に上げて見ていることもあり、ガッツポーズにも見えたり。
赤ちゃんの発達の過程で見られるこの行為は、「ハンドリガード(hand regard)」と言います。このハンドリガードができるのはすごいことなんです。
- ハンドリガードって何?何で赤ちゃんはハンドリガードをするの?
- ハンドリガードの何がすごいの?どんな発達をしてるの?
- うちの子ハンドリガードしないんだけど……障害なのかな。
赤ちゃんの手の動きに関して詳しく知りたい人はこの記事を読んでください。赤ちゃんがなぜ手をじっと見つめるのか、そこにどんな発達があるのかをお話します。
目次
ハンドリガードとは
まーさ
ハンドリガードとは、生後2-3ヶ月の赤ちゃんが仰向けのまま拳を握り、手を上げるなどして見つめる行為です。
握りこぶしを見つめるだけじゃなく、手を開いたり、振ったり、握り拳をパクっと咥えることもあります。また自分の髪の毛をむしって、それを不思議そうに見る子もいます。
生まれたばかりの赤ちゃんは自由に体を動かせないだけじゃなく、自分を認識できません。哺乳や排泄など、赤ちゃんが生きるために必要な行為の多くは反射で賄われます。
そんな赤ちゃんが自分の意思で手が動かせるようになると、ある日ふと手の存在に気付きます。そして「これ動かせるんだ!」とわかって、ハンドリガードにつながります。
つまりハンドリガードは赤ちゃんが手を確認できるなど、いろんな発達の結果起こるものなんです。
ハンドリガードはいつからいつまで?
ハンドリガードは生後2-3ヶ月に始まって、生後5-6ヶ月ごろには徐々消失します。
この時期は寝返りをしたり、お座りを始めます。身体を動かしたり、手で遊んだりできるようにもなるのでハンドリガードだけでは満足できなくなるんでしょうね。
ハンドリガードができる赤ちゃんの発達
まーさ
赤ちゃんのハンドリガードは、以下の身体機能の発達によって行えるようになります。
視力の発達
新生児の視力は0.02-0.03ほどで、16-17cmまで近づいてようやく見える程度です。生後2-3ヶ月には0.04-0.06ほどになり、点が合って目で物を追う追視ができるようになります。
追視ができるようになった赤ちゃんは、動くもので一番近くにある手に興味を持ちます。
運動機能の発達
生まれたばかりの赤ちゃんは、まだ自分の意思で手足を自由に動かせません。その代わり生後数日から手足のバタバタが始まります。
赤ちゃんは手足をばたつかせて運動機能を高めたり、筋肉の発達を促すと言われます。手足のバタバタは生後2ヶ月まで続き、自分の意思で手足を動かす手助けをします。
筋肉の発達
赤ちゃんは、起きてるときも寝てるときも手をグーにしています。これは手を開く外転筋が未発達のためです。
赤ちゃんの外転筋が発達してくると、手を開いたり閉じたりの動作が増え、手を動かすことができる認知につながります。
認知機能の発達
赤ちゃんが意識的に手足を動かしたり、追視できるようになると、「自分が動かしている手が目の前にある」と理解できるようになります。つまり、独立した物事を連動させて認識する認知機能が発達していることになります。
好奇心の発達
赤ちゃんは動かせる手の存在を認識すると、いろんな動きをしたり観察しようという好奇心が強くなります。
そこで握りこぶしを見つめたり、自分の意思で手を振ったり、両手を合わせたり、口の中に入れるなどのハンドリガードを行うようになります。
フットリガードとは
ハンドリガードが、赤ちゃんの手の確認作業であることに対し、赤ちゃんの足の確認作業を「フットリガード(foot regard)」と言います。
フットリガードは足の行為なので、手のように止まった姿勢でじっと見つめることは難しいんですが、赤ちゃんが手で足を触ったり、大股開きで両足を持つ姿が印象的です。
また赤ちゃんは足の裏をパンパンと合わせたり、足の指を開いたりも器用に行います。
手足どちらもどう動くか、どんな形状をしてるかなどの確認作業ですが、ハンドリガードは手をじっと見つめる行為が多いので「かわいい……。」と感じ、フットリガードは動作が大きいので「元気ね。」と嬉しくなります。
フットリガードはハンドリガードよりも少し遅く、生後4-5ヶ月ごろから始まり、生後6-7ヶ月ごろに消失していきます。
ハンドリガードをしないのは自閉症?
まーさ
ハンドリガードやフットリガードが重要だと認識してるママは、赤ちゃんがなかなかハンドリガードをしないと「もしかして、自閉症?」と心配になるはずです。
ただ赤ちゃんのハンドリガードは生後2-3ヶ月より遅れる場合がありますし、手の存在を認識する行為は赤ちゃんによって違います。
たしかに自閉症など発達障害がある子は、○○ができない、○○が遅れているなどが判断基準の1つになりますが、その判断はこの時点では行えず、一概に自閉症だとは言えません。
一般的な手を見つめるハンドリガードをしないで、すぐに指しゃぶりを始めたり、おもちゃをつかんで口に含むなど遊び出す子もいます。
赤ちゃんは物の形や感触を舌(口の中)で認識する「共感覚」があるので、指をしゃぶったり、おもちゃを口に咥えることで手の存在を認識して、次のステップを踏んでいると考えた方が良いでしょう。
自分の手を認識した赤ちゃんは目の前のものを触ったり、おもちゃをつかんで遊ぶようになり、少しずつ自分の存在を認識して自分と他人の違いも認識できるようになります。
そして、1番近くにいるママの認識につながっていきます。
そのため、赤ちゃんのハンドリガードが見られたら、「もうすぐわたしのこと認識してくれる♪」と楽しみにしておいてください。
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