厚生労働省によると平成26年度の人工中絶件数は約18万件です。つまり月間1.5万件、1日500件の人工中絶が行われています。年間出生数が100万人ほどなので多さがよくわかります。
これだけ人工中絶が多いということは、人工中絶は一般的な行為なんでしょうか。
「んー、なんか子供できちゃったけど、まだ遊びたいし今回は堕ろしちゃお。」と、軽い気持ちで中絶手術を受けて良いものなんでしょうか。
中絶手術は主に母体保護法で規定されていて、決して簡単に考えて良いものじゃありません。妊婦と胎児の父親(婚姻済みの場合は配偶者)の責任が問われる行為です。
- 中絶同意書って何?なくても中絶できるって聞いたんだけど……。
- 未成年の中絶で親の同意書ってなんで必要なの?
- 親の同意書なしで中絶した場合ってバレるのかな?
今回は中絶手術を行う医師の判断基準と中絶同意書についてお話します。
目次
中絶同意書ってどういう書類?
まーさ
中絶同意書とは、中絶手術にあたって妊婦や妊婦の家族、胎児の父親が中絶に同意する書類のことです。中絶手術を受ける年齢に決まりはないですが、手術には必要です。
ただし社会的・個人的な事情で中絶同意書が準備ができない場合もあり、条件次第で中絶同意書が不要だと判断される場合もあります。
中絶同意書の様式
中絶同意書に決まった様式はなく、中絶手術を行う病院でその病院の様式の書類を受け取ります。
その病院以外の中絶同意書でも良い場合があるので、詳しくは病院で聞いてください。病院以外の中絶同意書には、日本産婦人科医会が用意している中絶同意書があります。
中絶同意書の記載事項と必要なもの
病院でもらう中絶同意書に記載されている内容は以下の通りです。
- 母体保護法に基づく人工妊娠中絶手術であること
- 中絶手術におけるリスクに同意すること
- 説明をした病院の医師の氏名・捺印など
また中絶同意書には以下の事項を記載しなければいけません。
- 妊婦本人自署による氏名・住所・電話番号・捺印
- 胎児の父親の自署による氏名・住所・電話番号・捺印
- 中絶同意書の提出日付
中絶同意書は妊婦と胎児の父親が自分で必要事項を記載、捺印して病院に提出します。
中絶同意書の他に必要なものは、身分証明書、妊婦が未成年の場合は保護者の同意書(保護者自署による氏名・住所・電話番号、捺印)です。
中絶同意書の署名を必要としないケース
中絶手術をする場合は以下の事項を除いて、必ず妊婦本人と胎児の父親が署名をした中絶同意書が必要です。
相手がサインしてくれない
妊婦が中絶手術を望んでも、胎児の父親が中絶同意書にサインをしてくれない場合があります。この場合は父親不明という形で中絶同意書を提出できます。
胎児の父親が中絶同意書にサインすることと妊娠の責任を取ることは別です。仮に中絶同意書にサインしても、手術費用の負担などに同意したわけじゃないので注意が必要です。
胎児の父親が中絶同意書にサインしないからといって、代筆者を立ててはいけません。
相手と連絡が取れない
胎児の父親が誰かわからない、胎児の父親の連絡先がわからない、胎児の父親が死亡しているなどは中絶同意書に相手の署名は必要ありません。
性犯罪被害による妊娠
性犯罪被害で妊娠した場合は、中絶同意書の署名は必要ありません。
妊婦・胎児の父親が未成年の場合
まーさ
未成年の妊婦が中絶手術を受ける場合は、必ず保護者の同意書が必要です。また胎児の父親が未成年の場合も保護者の同意書が必要です。
病院が親の同意書を求める理由
親の同意書が必要な理由は2つあります。
初期中絶手術でもリスクが伴います。そのため医師は手術のリスクを説明する必要があり、リスクについて同意があることを保護者も同意しなければいけません。
また中絶手術は保険適用されないので、高い手術費用がかかります。その手術費用は親が担保する必要があります。
中絶同意書は妊婦の心身のため
未成年が妊娠した場合、親に知られたくないと考えることもあります。実際に何かの方法で親に内緒で中絶手術をした未成年もいます。
ただし後で説明しますが、医師には母体保護法の中絶手術の責任が伴うので、妥当だと判断できないなら中絶手術を拒否しなければいけません。
そのため一般的には中絶同意書がないと、中絶手術は断られるものだと思ってください。
中絶手術は未成年でも受けられますが、中絶手術で後遺症が残ったり、別の医療行為が発生した場合は保険適用で処置が行われます。
アメリカの統計では中絶手術をした女性の10%が合併症にかかり、2%は重い症状に発展しています。
また約50%の女性がネガティブな感情を抱いたり、中絶後遺症候群(PAS)に悩んでいます。中絶後遺症候群(PAS)とは、中絶手術によるPTSD(心的外傷後ストレス)です。
保険が親の扶養家族の未成年なら、親は必ず知ることになります。親には親の責任があります。相手との関係性と責任のとり方も考えないといけません。
そのため未成年が妊娠を知られたくない気持ちはあってもリスクの方が圧倒的に大きいので、将来のために早めに親に相談して後の対応を決めた方が良いです。
中絶手術を断る医師がいる理由
まーさ
中絶手術は指定医師だけが行える
中絶手術は、母体保護法で指定を受けた医師でなければ行えません。そのため指定医師以外が中絶手術を行うと、手術を受けた妊婦も手術をした医師も堕胎罪になります。
中絶手術は医師の判断で断れる
中絶手術は個人の生命、健康の保持・増進の目的で行いますが、妊娠の背景には複雑な社会事情があり、人口問題や社会道義、秩序とも深いつながりがあります。
そのため妊娠が妊婦とパートナーの責任でも、中絶手術は妊婦の希望ではなく中絶の適応があると医師が判断した場合にのみ行うものだと母体保護法に定められています。
つまり個人の生命、健康の保持・増進、社会事情などの適応が無いと医師が判断した場合は、中絶手術を積極的に拒まなければいけないんです。
―母体保護法に定められた適応条件―
母体保護法 第三章 母性保護
第十四条 都道府県の区域を単位として設立された公益社団法人たる医師会の指
定する医師(以下「指定医師」という。)は、次の各号の一に該当する者に対して、本人及び配偶者の同意を得て、人工妊娠中絶を行うことができる。
一 妊娠の継続または分娩が身体的または経済的理由により母体の健康を著し
く害するおそれのあるもの
二 暴行若しくは脅迫によってまたは抵抗若しくは拒絶することができない間
に姦淫されて妊娠したもの
2 前項の同意は,配偶者が知れないとき若しくはその意志を表示することがで
きないとき又は妊娠後に配偶者がなくなったときには本人の意思だけで足りる。「学校医と養護教諭のための思春期婦人科相談マニュアル」より引用。
中絶に関する法律は未完成
中絶手術の背景は人によっていろいろです。一般的には中絶同意書を提出して中絶手術を受けられたとしても、その女性は身体だけじゃなく心に大きな負担がかかります。
もちろん中絶手術の後遺症によって、後々の不妊に影響を及ぼす可能性もあります。
ただ中絶手術を行う女性の一部には、不倫などの不貞行為を隠すため、パートナーとの子供を産みたくないため密かに中絶手術を行う場合もあるそうです。
中絶手術には中絶同意書に胎児の父親の名前が必要ですが、父親不詳で提出することも不可能ではありません。そのため以下のようにトラブルになることも多いようです。
中絶同意書の偽造。この場合、妻は有印私文書偽造罪になると思いますが、署名した友人は罪に問えるのでしょうか? – 弁護士ドットコム
同意無しの中絶について。別の産婦人科で同意書偽造や、パートナー偽造をし、勝手に中絶した場合、訴えれるのでしょうか? – 弁護士ドットコム
ちなみに不同意堕胎罪は妊婦本人の同意を得ずに堕胎した罪なので、胎児の父親に知らせるかどうかは関係ありません。
このように中絶手術は女性の身体と心に大きな影響があるだけじゃなく、一部の男性の心にも傷を残す可能性があります。
中絶手術は妊婦の心身のためにも、本来産まれてくるべき命のためにも行わないに越したことはないです。というよりも、そのような状況にしない心構えが必要です。
ただしやむを得ず中絶手術を行なわなければいけない場合は、早い時期の決断が必要です。中絶手術は妊娠22週未満でなければいけないことも認識しておきましょう。