世の中には妊娠したくないのにやむを得ずしてしまった人、妊娠をしても途中で赤ちゃんを諦めなければいけない人がいます。
妊娠をやめる手段のことを一般的に「中絶」と言い、その行為を「子供を堕ろす」など表現しますね。
まーさ
中には「できたら堕ろせば良いじゃん。」なんて人もいますが、それはごくごく一部の人たちで、中絶を望む人すべてが軽く子供を堕ろす選択をするわけじゃないです。
もちろんかんたんに考えてはいけない理由は子供の命のこともありますが、妊婦自身の心と体に負担がかかる理由もあります。
- 日本の中絶件数ってどれくらいなのかな。
- わたしと同じ年の人ってどれくらい中絶してるの?
- 中絶手術をしたらどんなリスクがあるの?
中絶を迷っている人、中絶手術のリスクが気になる人はこの記事を最後まで読んでください。
可能なら中絶手術は受けない方が良いですが、客観的に中絶手術の現状を知ることが大切です。この記事があなたの中絶を真剣に考える機会になれば幸いです。
目次
日本の年間中絶件数はどれくらい?
まーさ
自然妊娠中絶と人工妊娠中絶
中絶には2つの種類があり、「
わたしたちが普段「中絶」と呼ぶのは人工妊娠中絶のことです。一方自然妊娠中絶とは、胎児がおなかの中で死んでしまい流産または死産に至ることです。
つまり自然にしろ人工的にしろ、中絶とは妊娠が出産に至らずに「胎児の死」で終わることです。ちなみに「流産」と「死産」にも違いがあり、以下のように定義されています。
日本産科婦人科学会で定義されている「流産」とは、妊娠22週未満(妊娠21週6日以内)の胎児が娩出されることを言います。流産は妊娠時期によって、初期流産と後期流産に分かれています。
妊娠22週未満を流産と定義する理由は、妊娠22週以降の胎児は何らかの原因で母体から出されても未熟児医療で生存できる可能性があるため「人の死」と考えることに対して、妊娠22週未満の胎児は生存できないため「人になる前の死」と捉えるためです。
そのため日本産科婦人科学会では妊娠22週未満の死児の出産を「流産」、妊娠22週以降の死児の出産を「死産」と定義しています。
人工妊娠中絶の年間件数
厚生労働省によると、平成26年度の人工妊娠中絶の件数は181,905件です。月間15,000件、1日500件の人工妊娠中絶が行われています。
人工妊娠中絶の数は以前より減ってますが、現在の年間出生数が約100万人なので2割近くの赤ちゃんが人工妊娠中絶されていることになります。これはすさまじい数です。
自然妊娠中絶の年間件数
自然妊娠中絶の数は調べてもわからなかったので予測します。年間出生数が100万人で、流産(自然流産)の割合は厚生労働省発表の数値をベースに考えます。
全体の平均流産率が13.9%なので、単純に考えておよそ16-17万人が1年間の流産件数です。さらに死産が全国で約2万件なので、流産と死産で18-19万人ほどと予測します。
中絶の年間件数予測
日本における1年間の人工妊娠中絶と自然妊娠中絶の件数は、
- 1年間の人工妊娠中絶の数……18-19万人ほど
- 1年間の自然妊娠中絶の数……18-19万人ほど
つまり年間で中絶に至る胎児の数は40万人弱いるという予測です。
この中絶数は予想でしかないですが、全国の妊婦が流産で悲しみにくれている中で赤ちゃんを堕ろす選択する妊婦(または家族)も同じ数だけいるということですね……。
人工中絶件数・割合は減少している
まーさ
知らない人にはこの数字はショッキングかもしれませんが、実は人工中絶の割合は以前よりもかなり減っています。
国立社会保障・人口問題研究所の資料を見ると、出生に対する人工中絶の割合は1950年代をピークとしてほぼ右肩下がりで推移しています。
人工中絶のピークは1954-55年で、妊娠に対して50.2%もの中絶手術が行われていました。それに対して、2013年は妊娠に対して7.0%まで減少しています。
中絶手術の経験割合は15%!
日本家族計画協会が16-49歳の男女1,540人(男性671名、女性869名)を対象にした調査によると、中絶手術経験者の割合は以下の通りです。
これまでに人工妊娠中絶の手術を受けたことが「ある」という女性は15.5%。女性だけに絞り込むと、本調査からは16~19歳では人工妊娠中絶の手術の経験者はなく、20~24歳で7.0%、25~29歳で14.4%、30~34歳(14.3%)、35~39歳(16.0%)、40~44歳(21.2%)、45歳以上(22.8%)と回答しています。さらに、中絶のリピーターは女性の35.6%と高率となっています。
- 16-19歳|0%
- 20-24歳|7.0%
- 25-29歳|14.4%
- 30-34歳|14.3%
- 35-39歳|16.0%
- 40-44歳|21.2%
- 45歳以上|22.8%
中絶手術経験者は全体の15.5%、45歳以上で22.8%、つまり40代の4-5人に1人は中絶手術を経験しているんです。しかも、中絶手術を繰り返す女性が35.6%もいます……。
冒頭でも話しましたが、中絶手術はかんたんに考えてはいけません。それは妊婦自身の心と体にも負担がかかるからです。
人工妊娠中絶手術の痛みや後遺症リスク
まーさ
どんな手術にも体の痛みや術後リスクはあります。エリオット研究所創設者のデビッド・C.リアドン博士は、中絶手術に伴うリスクを以下のように述べています。
国の統計によると、人工中絶した女性の10%は手術後すぐに合併症にかかり、その内の1⁄5(2%)は重い症状である。
中絶してから最初の数週間の間では、質問を受けた女性の40∼60%はネガティブな反応を表している。中絶後8週間では55%が罪の意識を表し、44%が精神異常を訴え、36%が不眠症にかかっており、31%が中絶した事を後悔しており、11%が主治医から向精神薬を処方されている。
注意リアドン博士はアメリカ人のため、以下の内容は全てアメリカにおける統計だと思います。
中絶手術は感染症など身体のリスクがあるだけじゃなく、堕胎したことの後悔や罪の意識など負の感情を抱えたり、精神的なストレスを受けることがわかっています。
中絶手術の身体のリスク
人工中絶手術には、以下の身体へのリスクがあります。とくに術後の感染症などの合併症リスクには注意が必要です。
- 麻酔によるアレルギー|麻酔の成分にアレルギー反応が出てしまう
胎盤遺残 |子宮内に胎盤やその他子宮内容物が残ってしまう- 子宮内感染|子宮内に細菌が感染してしまう
子宮穿孔 |子宮の壁に穴が空いてしまう子宮頚管裂傷 |子宮頸管が裂けるなど傷ついてしまう- 子宮破裂|陣痛が強すぎた場合に子宮が破裂してしまう
- 子宮内出血|子宮内部の傷によって出血が起こる
- 子宮内感染|子宮頚管を拡げて手術をするため、細菌による子宮内感染を起こす
- 子宮内腔癒着|無月経などの原因になる子宮頚管や子宮腔の癒着が起こる
中絶手術の精神リスク(中絶後遺症候群)
また中絶手術後は精神的リスクもあります。中絶後遺症候群(PAS)とは、中絶手術を経験したストレスでPTSD(心的外傷後ストレス)の症状が出ることです。
中絶手術経験者の約20%が中絶後遺症候群を経験し、精神不安定、フラッシュバック、うつ症状、自傷行為、アルコール依存症などの症状で苦しみます。
中絶手術の不妊リスク
よく中絶手術には不妊リスクがあると言いますが、中絶手術自体が直接不妊を起こすわけではありません。
ただし中絶手術で子宮破裂、子宮頚管裂傷、子宮内感染などの二次被害が起こったり、中絶後遺症候群(PAS)で妊娠にトラウマを抱えて不妊につながる恐れがあります。
妊娠と中絶について真剣に考えてみよう
事件などに巻き込まれなければ、妊娠しないように避妊具を使うことで人工中絶はある程度避けられます。
金銭的な負担、手術に伴う痛みやリスク、精神的な負担、将来の不妊リスクは軽いことじゃなく、安易な性交や気の緩み・不注意が、割に合わない事態を招きます。
そのため普段からピルを服用したり、お互いが納得して避妊を心掛け、いろんな負担やリスクの可能性を避けなければいけません。
このような考え方が浸透したのはコンドームが普及した1980年代で、きっかけはAIDS予防でした。当時小学生のわたしでもAIDSという言葉を知ってるくらい広まってました。
紹介した通り人工中絶が減っているとは言え、20%以上の女性がリスクを伴う中絶手術を経験して、そのうち20%の3万人以上が中絶後遺症候群(PAS)で苦しんでいます。
やむを得ず中絶手術をしなければいけない場合でも、女性は身体に負担を感じたり、おなかの中にいた赤ちゃんに後悔の念を感じるはずです。
妊娠と出産を経験できるのは女性だけなので、本当の意味で妊娠と出産を現実的に考えられるのは女性だけでしょう。それは怖くもあり、幸せなことでもあると思います。
もし中絶手術することになったら、将来の中絶件数を減らすためにも今後はあなたが中心になって、同じことを繰り返さないようにパートナーと避妊について考えましょう。