赤ちゃんにテレビを見せるメリットは、ママの家事がしやすくなったり、赤ちゃんが音楽や歌を早く覚えたり、言葉を覚えるのが早くなることが考えられます。
赤ちゃんにテレビを見せるデメリットは、コミュニケーション能力が不足したり、映像の刺激が脳を覚醒させてお昼寝を妨げたり、それによって生活リズムが不規則になるなどが考えられます。
ではテレビの内容を理解できるようになった2歳、3歳、4歳などの子供がテレビを見ると、どのような影響があるのでしょうか。
今回は、子供にテレビを見せることによる良い影響と悪い影響についてお話します。
テレビが子供に与える悪い影響
家庭の教育方針で、子供にまったくテレビを見せないという家庭はたまにあります。テレビが子供に悪影響だと考えているのは、以下の理由からです。
悪い対話能力が発達しない
子供が長時間テレビを見て、一方的に情報を受け取るだけでは、十分なコミュニケーション能力が養われない可能性があります。
言葉の発達を阻害してしまう
子供がテレビを見て言葉を学習するとしても、その言葉を自分の口から出さない限り知識として定着しないため、言葉の発達を阻害してしまう可能性があります。
視力が低下する
0-1歳とは違って、ある程度視力が発達した2-3歳以降にテレビを必要以上に近くで長時間見続けると、視力が低下する可能性があります。
活動的に遊ぶ時間が少なくなる
テレビを長時間見ている子供は、その分体を動かして遊ぶ時間が少なくなります。幼児期は身体能力を向上させ、とくに足腰を鍛えなければいけない時期です。
友達との関係性が希薄になる
テレビを長時間見ることで、お友達と遊ぶ時間も減ってしまいます。その結果、コミュニケーション能力が高まらない可能性があります。
食事に集中することができない
子供は同時に複数のことをうまく行えません。そのため、テレビを見ているとスムーズな食事ができなくなります。もちろん、親子の会話も減りますし、良い食の体験を形成できないため、偏食が増える可能性があります。
暴力的な映像に影響を受ける
子供がテレビの内容に影響を受けることで、一時的とはいえ暴力的な行動を起こすきっかけにもなるそうです。
世界中でさまざまな調査が行われてきました。たとえば、子供たちに暴力シーンを含むドラマなどを見せたあと、行動の変化を観察するといった実験です。これらの実験・調査によりますと、確かに暴力シーンが頻繁に出てくるドラマなどを見せると、そのあとの行動に乱暴な行為がある程度増えることが確認されています。テレビやビデオ・DVD画面での行為がモデルとなっている可能性が示唆されているわけです。しかし、それが長く続くかというとそうではなく、しばらくたつとその影響は消えてしまうことも同時に確認されています。
親子のコミュニケーション不足
テレビを長時間見る子供は、テレビの興味関心が強くなることで、親子の触れ合いが希薄になる可能性があります。
「息子はテレビを見ている時にはゾンビみたいだ。テレビを見ていない時に帰宅すると駆け寄ってハグしてくれるんだが、テレビを見ている時に帰ったら僕の存在にさえ気付かない有様さ。1日のうち数時間もそんな状態にならないよう気をつけているよ」
テレビが子供に与える良い影響
では反対に、テレビが子供に与える良い影響とはなんでしょうか。
ママが育児以外のことができる
子供が2人以上いるとより実感できますが、子供にテレビを見せるメリットは、ママの手が空くことです。
子供がママに話しかけるときは、「自分が話したいことを話したいだけ」が基本です。ママの都合は考えませんし、兄弟姉妹が同時に話しかけてきて、誰も譲ろうとしません。
車の中で席を立ったり、暴れない
普段車に乗るママは、後席モニターなどでテレビやDVDを見ることができるとメリットを感じられます。
子供は、チャイルドシートに長時間座っていることができません。何度叱っても席を立って暴れたり、遊びまわるため、好きなDVDを静かに見ていてくれると安心します。
知らない情報に触れられる
子供はテレビから新しい情報を仕入れ、それを元にいろいろなことを考えたり、覚えたりすることができるようになります。
うちの子の場合は、時間の概念はテレビがスタートでしたし、天気予報の見方や日本・都道府県の概念もテレビからの情報です。
幼稚園や保育園で話題についていける
子供には子供のコミュニティがあります。このコミュニティは子供が自分で築くもので、親が「○○ちゃんと遊んじゃいけません!」と規制するものではありません。
ところが、テレビを見ていないことで、子供がコミュニティをうまく作れない場合があります。大人に比べて多様性がない子供のコミュニティでは、今話題のアニメやキャラクターを知っていることはとても重要です。
テレビの影響は善悪二元論で考えない
さて、子供がテレビを見ると良い影響と悪い影響がありますが、親はこれらをどう考えれば良いでしょうか。
子供がテレビを見ることを「良い影響」「悪い影響」の二元論で考えてはいけません。
テレビの良い影響の中で、「知らない情報に触れられる」ということをテレビ以外で親が全てカバーすることは不可能です。もちろん、保育園や幼稚園の集団生活で補うこともできません。
また、「幼稚園や保育園で話題についていける」は、テレビを見せないことによる悪い影響を考慮しましょう。
「テレビを見ないことでお友達と話題が合わなくても、それを克服してコミュニティを作れる子になって欲しい!」……というのは、自分事で考えれば難しいとわかるはずです。
では、テレビが与える悪い影響の方はどうかというと、全てテレビを”見過ぎ”ることによって受ける影響ばかりです。
つまり、テレビを見ることにルールを設けておけば、悪い影響は最小限にできるはずです。
家庭で決める子供がテレビを見るルール
子供がテレビを見るときのルールを家庭で決めて、親子で守ることで、テレビの悪い影響を排除して良い影響を受けられる環境を作りましょう。
何を見たいのか話し合う
子供が見たいテレビ番組がある場合は、親子で何を見たいのか話し合ってみましょう。
突発的に「あ、これ見たい!」と言うこともありますが、子供の口から自分が見たいテレビ番組の許可を求めるという姿勢を作ることが大切です。
見る時間を決める
見たいテレビ番組が把握できれば、見る時間もわかります。「テレビは1日2時間!」などの基準を作ると良いと言いますが、うちは曜日によって見たい番組が変わるため、見る時間も変わります。
NHK世論調査部が2013年に行なった「幼児視聴率調査」によると、各年齢のテレビ視聴の平均時間は以下の通りです。
年齢と視聴時間 | 月曜日 | 日曜日 |
---|---|---|
2歳 | 2時間19分 | 1時間34分 |
3歳 | 2時間14分 | 1時間47分 |
4歳 | 2時間08分 | 2時間08分 |
5歳 | 1時間58分 | 1時間57分 |
6歳 | 1時間57分 | 2時間13分 |
何が適切な視聴時間なのかは家庭によりますが、まずは平均時間を目安にしましょう。
ただし、米国小児科学会のガイドラインでは、1歳半未満の子供のテレビやDVD、またスマートフォン、タブレットPCなどのデジタルメディア視聴は避けるべきだとし、2-5歳の子供も1日1時間までが適切だとしています。
米国小児科学会のガイドライン – 日経トレンディネット
離れて見る
テレビは部屋を明るくして、離れて見ることが基本ルールです。アニメの最初に「テレビを見るときは部屋を明るくして離れて見てね」などのテロップが表示されますね。
もちろん、子供の視力を守るために必要な要素ですが、このような細かいルールを設けることが大切です。
リモコンは触らない
子供は機械の操作を覚えるのも早く、リモコンを触らせるとすぐにいろいろなボタン操作をできるようになります。
テレビのリモコンを使えるとザッピングしますし、DVDのリモコンを使えるとすぐにDVDを見るようになるため、しばらくは触らせない方が良いでしょう。
食事のときは見ない
子供の遊び食べを防ぐためにも、子供の集中力を切らさないためにも、食事のときはテレビを見せないようにしましょう。
子供がテレビを見ていると、ママの食器の片付けも遅くなりますしね。
やることを終わらせてから
子供は、テレビが付いていると歯磨きや着替え、片付けなど、決められたことをなかなかできません。
そのため、たとえ子供が見たいテレビ番組の途中でもテレビは切って、やることを終わらせない限り見せないようにしましょう。
テレビを見ていても返事をする
子供は、テレビを見ているとママやパパが名前を呼んでも気付かないことがあります(無視していることも……)。そのため、返事をしない場合はテレビを消してしまいましょう。
生返事だけして、顔がこちらを向かない場合もテレビを消しましょう。
いろいろと細かいルールを決める
これら以外にも、家庭環境に応じてテレビを見る際のルールを細かく決めましょう。たとえば、「夜○時以降はテレビを見ない」「パパが帰ってきたら必ず玄関に行く」「テレビよりも外で遊ぶことを優先する」などです。
言うことを聞けないなら見せない
もし、ルールを設定していないことでも、「ママやパパの言うことを守れない場合は、テレビは見せない」というオールマイティなルールも設定しておきましょう。
親子のせめぎあいも大切
6歳の息子と3歳の娘は、ちょっと目を離すとテレビに張り付き状態です。いつの間にかチャンネルを変えていますし、歯を磨きに行ったと思ったら、戻ってきてテレビを見ていることもあります。
もちろん、子供にはルールに沿って厳しく対応することもあれば、特別に……と何らかの理由をつけて親子のコミュニケーションに利用することもあります。「間欠強化」ですね。
間欠強化とは何かをすることで毎回報酬がもらえるよりも、時々報酬がもらえることの方が嬉しさを感じる心理効果のことです。内発的動機付け、外発的動機付けのどちらを設定するときも、間欠強化を意識しましょう。
うちでは子供とテレビを見るルールは決めていますが、ルールを巡って「お願い!見たい!」「今はダメ!」というせめぎあいがたまにあり、わたしが折れることもあります。
テレビに限らず、子供に少しでも悪影響があるものを親がバッサリと切り捨てるのではなく、
親子でルールを決める
↓
親が子供にルールを守らせる
↓
子供がルールを破る
↓
親がそれを叱る
↓
子供が条件付きでお願いする
↓
親が許諾する
という過程を何度も経験することは子供の心の成長につながりますし、自分たちで決めたルールの意味を知るためにも必要な経験になると思います。
まぁ、わたしも子供がテレビを見てくれていることで恩恵を得ているので、少し甘いときもありますが。