わたしは帝王切開で子供を2人を産みましたが、麻酔が効いた朦朧としている中で「オギャー!(仮)」という産声を聞いて、安心して気を失った(気付いたら気を失っていた)記憶があります。
そのため、よくドラマやドキュメント番組で見るように、枕元に赤ちゃんを持ってきて「元気な男の子ですよぉー。」という流れは経験していません。もしかしたら、してくれていたのかもしれませんが。
でも、それでも良いんです。ひとまず赤ちゃんの産声を聞けて安心できたので。五体満足のさらに前に、まず赤ちゃんが生きていることが重要なので。
ところで、シェイクスピアの「リア王」の一説で「人はみな泣きながら生まれてくる」とありますが、赤ちゃんは泣きながら生まれてくることはほとんどありません。個人差はありますが、出産後少ししてから「オギャー!」と泣き始めます。
そのため、わたしは「赤ちゃんの泣き声を聞くまでは……。」と耐えていました。
そこで疑問が……なぜ赤ちゃんは生まれて少し経ってから泣くんでしょうか。また、赤ちゃんが最初に泣くタイミングには何があるんでしょうか。
今回は、赤ちゃんが産声をあげる理由と仕組みについてお話したいと思います。
目次
赤ちゃんが産声をあげる理由
生まれたばかりの赤ちゃんは「オギャー!」と泣きます。この泣き声を「
赤ちゃんは、ママのおなかの中で羊水の中に浸かっています。肺の中も羊水で浸っているため、赤ちゃんには胎盤からへその緒を通して酸素が送られ、へその緒を通して二酸化炭素をママに返すことで呼吸しています。
つまり、赤ちゃんはママのおなかの中では肺呼吸をしません。
ところが出産すると胎盤が子宮から剥がれ、へその緒も切られてしまうので、赤ちゃんは自力で肺に酸素を取り入れて肺呼吸しないといけません。
赤ちゃんにとって初めての肺呼吸です……が、産まれたばかりの赤ちゃんの肺はまだ羊水で浸っています。
そのため赤ちゃんはまず大きく息を吸い込み、息を吐き出すことで羊水を体外に排出し、さらに空気を吸い込んで肺を膨らませることで、最初の肺呼吸を開始します。
これが赤ちゃんが生まれてから少しして泣く理由です。
赤ちゃんは肺呼吸で全身に酸素と血液が循環し、肌に赤みを帯びていきます。この赤身みが赤ちゃんと呼ばれる由来の1つですね。
赤ちゃんが産声をあげない原因
まーさ
赤ちゃんが産声をあげないのは以下の原因が考えられます。
必ず産声をあげるとは限らないから
生まれたばかりの赤ちゃんは必ず「オギャー!」と泣くとは限りません。「くぅー」と小さな声で泣く子もいれば、まったく泣かない子もいます。
赤ちゃんは生まれてすぐに「オギャー!」と泣かなければいけないんじゃなく、静かでも良いので肺呼吸ができればいいんです。
ただ、赤ちゃんにとっては初めての肺呼吸なので、まず身体の中(呼吸器の中)にある羊水を吐き出す必要があり、勢い良く吐き出しながら肺呼吸を始めるために、「オギャー!」と泣いた方が効率が良いのです。
ところが、赤ちゃんが「オギャー!」と泣くこともできず、つたない肺呼吸もできない場合があります。主な原因は、以下のものが考えられます。
羊水が呼吸器に詰まっているから
赤ちゃんはママの胎内にいる間は羊水に浸かり、肺の中まで羊水に満たされています。初めて胎外に出た赤ちゃんは、肺呼吸をするために羊水を肺から排出しなければいけません。
そのため、赤ちゃんは勢いよく空気を吸い込み、肺胞を広げ、一気に羊水を吐き出してから「オギャー!」と泣くのですが、うまく空気が吸い込めなかったり、羊水が吐き出せない場合は、ゴポゴポと羊水が肺の中で行ったり来たりするため、泣くどころか肺呼吸もできません。
そこで、吸引器で肺の中の羊水を吸い出し、肺呼吸ができる準備をするとともに自力で呼吸ができるように刺激を与えます。
もし赤ちゃんがうまく肺呼吸ができなければ(泣かなければ)、足を持って逆さにし、背中を叩いたり、おしりを叩いたり、つねったりして泣かせることもあります。
また、赤ちゃんが肺呼吸を始めたとしても、勢いよく泣かない場合もあります。ただ、大きな声で泣かなくても、羊水を吐き出し肺呼吸をしていれば心配する必要はありません。
へその緒が巻き付いているから
赤ちゃんの首や身体などにへその緒が巻き付いている場合は、分娩の過程で赤ちゃんに酸素が供給されていない可能性があります。
これは赤ちゃんの首にへその緒が巻き付くことで窒息をするのではなく、巻き付いたへその緒が圧迫されることで、酸素を含んだ血液が赤ちゃんに供給されないためです。
そのため、へその緒をおなかや手足で挟みこんだり圧迫することでも、赤ちゃんが窒息をする可能性があります。
このようにへその緒が身体に巻き付いている状態を「
赤ちゃんは、重度の臍帯巻絡によって新生児仮死を起こし、産声をあげられないことがあります。
臍帯巻絡の赤ちゃんはエコーで心拍の様子が確認され、臍帯に重度の圧迫が見られる場合は、迅速な出産が求められます。状況によっては臍帯を切断したり、経腟分娩の途中で緊急帝王切開に切り替える場合もあります。
その他の原因で新生児仮死になったから
出産に入る前は胎動が見られた赤ちゃんが、何らかの理由で仮死状態で生まれる可能性があります。これを「新生児仮死(しんせいじかし)」と言います。
新生児仮死が分娩時に起こる原因は、母体因子、胎児因子、妊娠・分娩因子があります。
たとえば、へその緒が赤ちゃんに絡まる臍帯巻絡、赤ちゃんよりも先に臍帯が出てしまう
また分娩前の段階では赤ちゃんの発育不全、胎盤の機能不全・常位胎盤早期剥離などの胎盤異常が原因で循環不全が起こり、新生児仮死や死産になることがあります。
さらに妊婦が内臓疾患を患っていたり、妊娠高血圧症候群などで胎盤の機能が充分に形成されていない場合も、新生児仮死のリスクが高まります。
新生児仮死の原因や新生児仮死の場合にどのような処置が行われるかは、以下を参考にしてください。
赤ちゃんが泣かない場合どうする
まーさ
生まれたばかりの赤ちゃんは、息を吸い込み、最初のひと泣きを始めることで呼吸を開始しますが、それがうまくできない子もいます。
もし羊水が肺などに詰まっている場合は、人工的に羊水の吸引(サクション)を行い、赤ちゃんの初めての肺呼吸を助けます。
それでも泣かなければ足を持って逆さにし、背中を叩いたり、おしりを叩いたり、つねったりして泣かせます。このような刺激を与えることで、なんとか最初のひと泣きをさせる必要があります。
赤ちゃんが無事に産声をあげることができれば、後は自力で肺呼吸できるため、みんな一安心ということになります。
また、赤ちゃんが泣かない理由は羊水が呼吸器に詰まっている以外にも、
・へその緒が首に巻き付いていた(臍帯巻絡)
・仮死状態で分娩された(新生児仮死)
ということも考えられます。どのような理由にしても、対応が遅くなって赤ちゃんが肺呼吸できず、脳に酸素が行かなければ、脳性麻痺などの後遺症を残す可能性もあります。
このような場合、へその緒の圧迫の解除、気道確保や酸素投与などで赤ちゃんの呼吸を助ける必要があります。赤
産声は”泣く”とは違う
赤ちゃんは、生まれてすぐに羊水が詰まった呼吸器に空気の通り道を作り、肺呼吸をしなければいけません。そこで、大きく息を吐くために最適な「産声をあげる」行為をします。
そして、産声によって一番出しやすい声が、泣き声のように聞こるのです。また、赤ちゃんがしばらく泣き続けるのは、肺呼吸を続けるためです。これで赤ちゃんが生まれて初めて泣く瞬間がわかりました。厳密には大人が認識する「泣く」ではありません。
ちなみに、新生児期の赤ちゃんが泣く行為は、不快感などの生理的要求をママにお知らせする行為です。ここにも明確な感情はありません。
わたしたちが認識する「泣く」は、感情を伴って涙を流すことです。そのため、赤ちゃんが感情で泣くことを「赤ちゃんが生まれて初めて泣く瞬間」とするなら、おそらく生後3-4ヶ月ごろでしょう。
涙が流れるためには、側頭葉内側にある扁桃体で形成された感情によって交感神経が優位になり、涙腺が刺激されて涙が分泌される神経系の情報伝達が発達しなければいけません。
発達心理学者のマイケル・ルイス氏は、人は生まれながらにして「苦痛」「満足」「興味」の3つの感情を持っており、生後3ヶ月を過ぎると「満足」から「喜び」という感情が生まれ、「苦痛」から「悲しみ」と「嫌悪」という感情が生まれるとしています。
つまり、赤ちゃんは「悲しみ」と「嫌悪」という感情によって、涙を流すということになります。「嫌悪」はわかりますね。不快感を感じることで赤ちゃんは泣き、涙を流します。
ちなみに冒頭のリア王の一説は、「人間が泣きながら生まれるのは、アホばかりの(人生という)舞台に上がってしまったことを悲しんでいるからだ。」と人生の皮肉が続きます。
もちろん生まれたばかりの赤ちゃんにそんな感情はありませんが、赤ちゃんが早く安心できるよう毎日愛情を注いであげたいものです。