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新生児の胎脂の役割は?産湯が減ってドライテクニックが増えた理由

ikujilog

「ほら!あんたは急いでお湯を沸かして!」

時代劇などを見ると、産婆さんが赤ちゃんを取り上げるときに妊婦の旦那さんにこんなセリフを言うシーンがあったりします。

用意するお湯を「産湯うぶゆ」と言いますが、なぜ出産時に産湯を用意するか知ってますか。

それは出産直後の赤ちゃんに付いた羊水、血液、胎脂などの汚れや産道で付着した細菌を沐浴で洗い流すためです。また沐浴で赤ちゃんの低体温を防ぐ目的もあります。

ところが最近の出産では赤ちゃんの沐浴は少なくなって、ドライタオルで赤ちゃんを軽く拭く「ドライテクニック」を行い、数日経って初めて沐浴するように変化しています。

沐浴をしなくなった理由は、赤ちゃんの体についた胎脂の存在にあります。そこで今回は、赤ちゃんの沐浴が減った理由と赤ちゃんの胎脂についてお話します。

ドライテクニックを行う産院の割合

まーさ

そんなにドライテクニックっていうのが当たり前になってるの?どれくらいの病院がしてるものなの?

大分県立看護科学大学の調査によると、出産直後にドライテクニックを行う産院の割合は78.6%にも上ります(893施設中341施設から回答=有効回答率38.2%)。

早期新生児期の保清方法は、表2に示すように86パターンに分類され、洗浄剤や使用物品も、施設によってさまざまでした。しかし、出生直後はドライテクニックが268施設(78.6%)、生後1日目は沐浴が266施設(78.0%)と最も多く、出生直後から連日沐浴を行っているのは4施設(1.8%)のみでした。保清後にスキンケアを行っている施設は26施設(7.6%)であり、スキンケアはあまり行われていませんでした。

日本における早期新生児期の保清ケア・スキンケアの実態とその決定要因 | 新着情報 | 大分県立看護科学大学

他にも出産直後にドライテクニックを行う割合が65.3%という調査結果もあります。

新生児清潔ケアの実態とケア選択の探索|日本助産学会誌 J. Jpn. Acad. Midwif., Vol. 29, No. 2, 240-250, 2015

ドライテクニックとは

ドライテクニック(Dry technique)とは、出産直後の赤ちゃんについた胎脂たいしを拭き取らないよう、乾いた清潔なタオルで汚れだけを拭いて自然な状態のままにすることです。ドライケアとも言います。

ドライテクニックが増えた理由

まーさ

ドライテクニックって何がいいの?産湯できれいに洗ってあげた方がいい気がするんだけど?

もともと産湯で沐浴をしていたのは、汚れを落として温かいお湯で低体温を防ぐ目的でした。近年は以下の理由でドライテクニックが増えています。

沐浴は余計に体力を消耗するため

赤ちゃんは沐浴で体力を使います。そのため出生直後に沐浴を行うと赤ちゃんの体力が消耗して、体調が不安定になる可能性があります。

沐浴で低体温になる可能性があるため

出生後すぐに沐浴をすると全身が濡れますね。いくら温かい産湯に入れても、一度体が濡れてしまうと体温低下の原因になります。

皮膚が傷付く恐れがあるため

産まれたばかりの赤ちゃんにとって沐浴は刺激があります。そのため、赤ちゃんの弱い皮膚を傷つける可能性があります。

胎脂が流れ落ちてしまうため

赤ちゃんの皮膚に付いた胎脂には重要な役割があります。そのため沐浴で胎脂を流すより、ドライテクニックで胎脂を落とさない方が赤ちゃんにメリットがあります。

胎脂の重要な役割

まーさ

胎脂ってそんなに重要なものなの?何がメリットなの?

胎脂とは脂分のこと

胎脂とは、産まれたばかりの赤ちゃんの全身を覆っている白いクリーム状の脂分のことです。胎脂は水(80.5%)、脂質(10.3%)、タンパク質(9.1%)で構成されています。

赤ちゃんに付いた胎脂

JazlynRoseVernixByPhilKonstantin – 胎脂 – Wikipedia

胎児は妊娠17-20週ごろから胎脂に覆われますが、成熟期に近づくと羊水で剥がれ落ちます。そのため早産で生まれた赤ちゃんほど、胎脂が多く付いています。

産婦人科医の視点から新生児を治療する | 福井大学

胎脂のメリットと役割

胎脂を落とさないようドライテクニックする理由は、胎脂に重要な役割があるためです。

分娩時の潤滑油になる役割

胎脂は水分と脂質が多く含まれるので、分娩で産道をスムーズに通る潤滑油になります。

水分蒸発と細菌から守る役割

胎脂の脂質には皮膚バリア機能があるセラミドが多く含まれてるので、赤ちゃんの肌の水分の蒸発を防いで細菌から守る効果があります。

また胎脂のタンパク質にはプロテアーゼ阻害、寄生虫の不活性化、オプソニン作用、抗真菌などの効果があります。

Vernix caseosa as a multi-component defence system based on polypeptides, lipids, and their interactions

低体温を防ぐ役割

出産後の赤ちゃんは低体温になりがちですが、胎脂の脂質で肌の水分の蒸発を防ぐだけでなく、水分を弾いて体温の低下を防ぐ役割があります。

アトピー性皮膚炎を防ぐ役割

新生児期に皮膚の水分量が下がると、アトピー性皮膚炎の発症率が上がります。セラミドは肌の水分蒸発を防ぎ、皮膚のバリア機能を高める役割があります。

胎脂の効果の期間

胎脂の機能は、胎脂が付着している間持続します。一般的には48時間以内と言われますが、胎脂の付着量でも変わります。

「たった48時間で意味ある?」と思うかもしれませんが、生後1週間以内から新生児に保湿剤を塗ることでアトピー性皮膚炎の発症リスクが3割以上低下することがわかっています。

世界初・アレルギー疾患の発症予防法を発見 | 国立成育医療研究センター

乳児期にアトピーを発症した子は食物アレルギーの発症リスクが高いこともわかってるので、出産直後の赤ちゃんの肌を守ることは大きな意味があるんです。

このことから胎脂を落とさないドライテクニックが重要で、胎脂の効果が早く消えるのはもったいないとわかりますね。

沐浴はドライテクニック後に行う

出産後にドライテクニックをした赤ちゃんは、1-4日ほど間を空けて沐浴を行います。

その間の赤ちゃんの体の汚れによる乳児湿疹を心配する人もいますが、この時期の赤ちゃんはほとんど発汗しないので、沐浴しなくても問題ありません。

もちろんドライケアが重要で、沐浴は重要じゃないという話じゃありません。早めに母親の血液を洗い流すことが母子感染防止になるという考え方もあります。

沐浴はしないほうがいいって本当!?新生児の体を守る「ドライケア」って?| たまひよ

退院するころには赤ちゃんの発汗が始まって日々の沐浴も必要になるので、以下で沐浴の重要性もしっかり理解しておいてくださいね。