まーさ
なんとなく少量なら妊婦でもお酒を飲んでいいと思ってる人はいませんか。タバコに比べたら大丈夫と思ってる人も多そうです。
ただ妊娠中は一切お酒を飲んではいけません。米小児科学会も2015年に、妊娠中の飲酒は一切してはいけないという報告書を提出しています。
CNN.co.jp : 「妊婦の飲酒は一切ダメ」、米小児科学会が勧告
もちろんお酒を飲んではいけない理由は、おなかの中にいる胎児にアルコールの影響があるためです。
まーさ
どうしてもお酒が飲みたい人は、この記事を読んでアルコールが胎児や妊婦に与える重大な影響を知ってください。後悔しないためにアルコールの影響を知ることは大切ですよ。
目次
妊娠中にお酒を飲んではいけない理由
まーさ
妊娠中のお酒がダメ理由は、胎児に「胎児性アルコール症候群(Fetal alcohol syndrome:FAS)」が起きて身体機能や成長に悪影響を及ぼす可能性があるからです。
また「アルコール関連神経発達障害(Alcohol-related neurodevelopmental disorder:ARND)」や「アルコール関連先天異常(Alcohol-Related Brain Damage:ARBD)」が起こる可能性もあります。
胎児性アルコール症候群(FAS)とは
妊婦がお酒を飲むことで流産や死産、胎児の先天性異常の可能性が高まります。アルコールで胎児が先天性異常を起こすことを「胎児性アルコール症候群」と言います。
胎児性アルコール症候群の原因は、アルコールの代謝で発生するアセトアルデヒドが胎児の細胞を傷つけたり、神経細胞の発育に必要な作用を阻害することです。
胎児性アルコール症候群の影響
胎児性アルコール症候群を患って出生した赤ちゃんには以下の症状がみられます。
1.子宮内胎児発育遅延ならびに成長障害
2.精神遅滞や多動症などの中枢神経障害
3.特異顔貌、小頭症など頭蓋顔面奇形
4.心奇形、関節異常などの種々の奇形
胎児性アルコール症候群の赤ちゃんは目が小さい、鼻の下の溝がない、唇が薄いなどの顔つきの特徴も持っています。
胎児は発育遅延や成長障害だけでなく、神経障害・知的障害や胎児奇形を伴って産まれる可能性があるということです。
アルコール関連神経発達障害(ARND)・アルコール関連先天異常(ARBD)とは
アルコール関連神経発達障害(ARND)、アルコール関連先天異常(ARBD)とは、胎児性アルコール症候群の一部の症状です。
アルコール関連神経発達障害は行動や認知の異常が見られ、アルコール関連先天異常は心臓、腎臓、骨、聴覚などに異常が見られます。
妊娠中に飲んでも良いお酒の量は?
まーさ
アルコールの分解能力(無毒化)や胎児への影響は個人差があります。そのため妊婦の1日の飲酒量・アルコール量による安全性を担保する基準は設けられません。
日本産婦人科医会では1日のアルコール摂取量の基準を15mlとしたときに、妊婦の飲酒が胎児に及ぼす影響について以下のように述べています。
アルコール摂取量の基準
お酒の種類によるアルコール含有量15mlの換算は以下の通りです。
日本酒|コップ1/2杯(アルコール度数15-16%)
ビール|350ml缶1本(アルコール度数4-5%)
アルコール摂取による影響
日本産婦人科医会は、アルコール摂取量と胎児への影響を以下のように考えています。
90ml以上|奇形の発生が明らかに高くなる
120ml以上|胎児アルコール症候群発生率30-50%
これらは日本産婦人科医会の目安ですが、たとえビール1口でもアルコールが胎児に影響を及ぼす可能性はゼロではありません。
アルコール摂取量に安全基準はない
妊娠中のアルコールに対する考え方で最も大切なことは、1日のアルコール摂取量に安全な基準はないと理解することです。
そのため1日のアルコール摂取量が15ml未満でも、胎児が中枢神経障害を起こした場合は、妊婦の飲酒など生活習慣の乱れが疑われます。
胎児が罹患していた母親の多くは60~90ml を連日ではなく時々飲んでいた。この場合は一日量に換算すると少なくなる。胎児への影響は一日飲酒量だけでは判断できず、飲酒パターンが関与すると考えられている。中枢神経障害が主体である児の80%の母親は70~80ml (または75ml )以上を週に数回程度飲んでいた。これらのことより中枢神経障害に関しては、飲酒回数との関連が示唆されている。
日本助産学会では妊娠期の「エビデンスに基づく助産ガイドライン2016」で、以下のように妊娠期の飲酒による胎児への影響を記しています。
母親が摂取したアルコールは容易に胎盤を通過し、母親のアルコール摂取 1~2 時間以内に胎児血中アルコール濃度は母親の血中濃度に達する(Burd 2012)。妊娠中の母親の少量の飲酒は、時期に関わらず、発育遅延、中枢神経障害、特異的顔貌などの症状を有する胎児性アルコール症候群を引き起こす可能性が指摘されている(Weitzman 2015)。母親が摂取するアルコール量が同じであっても、児への影響に違いがみられる。これは血中アルコールの消失が母親の代謝能力に影響を受けるためとされている(Buckley 2015; Chang 2014)。NICE、Lewis(2012)において、少量のアルコール摂取によっても児の発達への影響が指摘されている。
胎児性アルコール症候群の割合
まーさ
日本では胎児性アルコール症候群の調査や情報が少なく、どの程度の飲酒量でどのくらい胎児性アルコール症候群の赤ちゃんが産まれるというデータはありません。
ただ日本医事新報には、胎児性アルコール症候群は1-2万人あたり1人と記されています。
田中晴美、高島敬忠、馬場一雄、他:わが国における胎児性アルコール症候群、日本医事新報、1979;2897:27-30./田中晴美:日本における母親の飲酒による子供の異常の現状、日本医事新報、1995;3714:45-49、1995.
世界の胎児性アルコール症候群の割合
米国疾病管理センター(CDC)の調査によると、アメリカの胎児性アルコール症候群の発生率は0.02-0.2%で、アルコール関連神経発達障害・アルコール関連先天異常は約3倍程度の発生率と考えられています。
またフランス国立衛生医学研究所(INSERM)の調査によると、フランスの胎児性アルコール症候群の発生率は0.05-0.3%ほどと推測されています。
妊婦のアルコール飲料の摂取による胎児への影響|食品安全委員会
各国の妊娠中の飲酒量
アメリカの調査によると妊娠中に週7回以上または1回5杯以上飲酒した妊婦の割合は1.9%、妊娠中に1度でも飲酒した妊婦の割合は10.1%です。
フランスの調査によると妊娠中に1日1杯以上飲酒した妊婦は1995年の調査で5%、1998年の調査では3.9%です。
2000年に厚生労働省が実施した妊娠中の飲酒に関する調査によると、妊娠中に飲酒した回数が10回未満の人は9.3%、妊娠中に1度でも飲酒をした妊婦は18.1%です。
日本の妊婦が1度でも飲酒をした割合はアメリカの2倍近くあり、飲酒リスクの認知が低いことがわかります。
妊娠中の飲酒が少しだけなら良い説は間違い?
まーさ
妊婦が妊娠中にお酒を飲んではいけないことは当たり前です。中には「少しだけ……。」と飲む妊婦もいますが、勝手に判断してはいけません。
お酒を飲んでも良いと医師が判断するのは、お酒を飲まない影響の方が大きいとされた場合のみですが、これは余程のことです。
もし妊婦の飲酒がわかった場合、今の周産期医療ではすぐ禁酒が勧められます。「少しのお酒なら良い」という誤解は昔の話です。
今はノンアルコール飲料があるので、気を紛らわせることはできます。ただノンアルコール飲料の定義は度数1%未満なので、度数を確認して飲みすぎないようにしてください。
出産すればお酒を飲むチャンスはいくらでもあります。まずは大切なひと仕事を終えるまで節制しましょう。その方が何倍も美味しいお酒を飲めると思いますよ。
同じく授乳中の飲酒が気になる人、どうしても飲む方法を知りたい人は以下を参考にしてください。