まーさ
出産前後の就業率の背景には、妊娠が周囲から理解されないことも関係します。とくに妊娠初期のつわりで、心身に負担がかかって退職する人は多いです。
厚生労働省では妊娠した女性を守る「女性労働基準規則」で、「男女雇用機会均等法における母性健康管理の措置」「労働基準法における母性保護規定」を定めています。
女性の体調がすぐれない場合は、「指導事項を守ることができるようにするための措置(第13条)」で医師の指導を全うできるよう事業主が措置を講じなければいけません。
働く女性の母性健康管理措置、母性保護規定について- 厚生労働省
そこで必要になるのが、「診断書」または「母性健康管理指導事項連絡カード(母健連絡カード)」です。
目次
つわりで診断書をもらえる基準
まーさ
つわりは尿中ケトン体の量で数値化をするなど、軽度・重度を可視化することができ、その診断結果で診断書をもらえます。
たとえば尿中ケトン体が陽性の場合は勤務時間短縮などの措置が必要ですし、1週間に3-4kgの体重減少、尿中ケトン体が(2+)以上、脳症状や肝機能障害(GOT、GPTが100lU/l以上)を示す場合は入院措置が必要です。
つわりで診断書をもらうために上記以外の明確な基準はありません。そのため正式な診断結果以外では、自己申告したうえで担当医の判断によると考えてください。
個人の感覚で業務が困難だと思っても、医師が問題ないとする場合があるということです。ただつわりは個人差があるので、数値は問題なくても症状に悩まされる人はいます。
また診断書があっても、職場の理解につながるとは限りません。そんな妊婦を助けるために、診断書以外にも母性健康管理指導事項連絡カード(母健連絡カード)があります。
母性健康管理指導事項連絡カードとは
母健連絡カードとは医師の診察内容、必要な措置と期間を記載したカードで、妊婦が医療指導を受けていることを会社に伝えるものです。
つわりは個人差があるので、会社に症状を伝えても理解してもらえるか不安ですよね。
母健連絡カードは診断書と同等の効力があり、医師の指導事項が記載されているので会社が勝手な判断はできません。
会社は母健連絡カードの内容に応じて、男女雇用機会均等法第13条に基づく措置を講じる義務があります。
母性健康管理指導事項連絡カードの活用方法について- 厚生労働省
医師の指導事項があれば職場の理解にもつながりますが、診断書同様、記載してもらえるかどうかは医師の判断によります。
そう考えるとやっぱり不安ですし、診断書や母健連絡カードがあって会社に承諾してもらっても、同僚や上司の個人的な感情に考慮が必要かもしれません。
母健連絡カードのもらい方・使い方
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母健連絡カードのもらい方
母健連絡カード自体は厚生労働省のサイトからダウンロードできます。
母性健康管理指導事項連絡カードの活用方法について- 厚生労働省
あとは妊婦健診や通常の診断を受けるときに病院に提示し、医師が認めた症状がある場合に症状と措置内容を記載してもらえます。
母健連絡カードの使い方
医師に母健連絡カードを記載してもらったら、あとは会社に提出して記載された措置内容に従うだけです。
(1)妊娠中及び出産後の健康診査等の結果、通勤緩和や休憩に関する措置などが必要であると主治医等に指導を受けたとき、母健連絡カードに必要な事項を記入して発行してもらいます。(①②)
(2)女性労働者は、事業主に母健連絡カードを提出して措置を申し出ます。(③)
(3)事業主は母健連絡カードの記入事項にしたがって時差通勤や休憩時間の延長などの措置を講じます。(④)
母健連絡カードと診断書の費用
母健連絡カードの記載には、診察とは別に費用がかかります。
母健連絡カードの記載費用は病院によってまちまちで、通常の診断書が3000-4000円ほど(種類で変わる)に対して母健連絡カードは2000円前後が多いようです。
母健連絡カードをもらえない理由
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医師の中には診断結果を踏まえて、基準に当てはまらないなどの理由で母健連絡カードを記載してくれない場合もあります。
診断結果や症状が基準に当てはまらなくても、医師の判断で母健連絡カードに記載してもらえることもありますが、記載を強制することはできません。
症状に対する基準は、以下の厚生労働省の定めを参考にしてください。
妊娠症状と標準措置
妊娠症状と指導内容(標準措置)は、母健連絡カードに記載されています。内容は以下の通りです。
妊娠症状 | 標準措置 |
---|---|
重いつわり | 勤務時間の短縮 |
妊娠悪阻 | 休業(入院加療) |
妊娠貧血負担の大きい作業の制限又は勤務時間の短縮 | |
妊娠貧血(Hb9g/dl未満) | 休業(自宅療養) |
子宮内胎児発育遅延(軽症) | 負担の大きい作業の制限又は勤務時間の短縮 |
子宮内胎児発育遅延(重症) | 休業(自宅療養又は入院加療) |
切迫流産(22週未満) | 休業(自宅療養又は入院加療) |
切迫流産(22週以後) | 休業(自宅療養又は入院加療) |
妊娠浮腫(軽症) | 負担の大きい作業、長時間の立作業、 同一姿勢を強制される作業の制限又は勤務時間の短縮 |
妊娠浮腫(重症) | 休業(入院加療) |
妊娠蛋白尿(軽症) | 負担の大きい作業、長時間の立作業、 同一姿勢を強制される作業の制限又は勤務時間の短縮 |
妊娠蛋白尿(重症) | 休業(入院加療) |
妊娠高血圧症候群(高血圧が見られる場合/軽症) | 負担の大きい作業、長時間の立作業、 同一姿勢を強制される作業の制限又は勤務時間の短縮 |
妊娠高血圧症候群(高血圧が見られる場合/重症) | 休業(入院加療) |
妊娠高血圧症候群(高血圧に蛋白尿を伴う場合/軽症) | 負担の大きい作業、ストレス・緊張を多く感じる作業の制限 又は勤務時間の短縮 |
妊娠高血圧症候群(高血圧に蛋白尿を伴う場合/重症) | 休業(自宅療養又は入院加療) |
妊娠前から持っている病気(軽症) | 負担の大きい作業の制限又は勤務時間の短縮 |
妊娠前から持っている病気(重症) | 休業(自宅療養又は入院加療) |
妊娠中にかかりやすい病気(静脈瘤/症状が著しい場合) | 長時間の立作業、同一姿勢を強制される作業の制限 又は横になっての休憩 |
妊娠中にかかりやすい病気(痔/症状が著しい場合) | 長時間の立作業、同一姿勢を強制される作業の制限 又は横になっての休憩 |
妊娠中にかかりやすい病気(腰痛症/症状が著しい場合) | 長時間の立作業、腰に負担のかかる作業、 同一姿勢を強制される作業の制限 |
妊娠中にかかりやすい病気(膀胱炎/軽症) | 負担の大きい作業、長時間作業所を離れることのできない作業、 寒い場所での作業の制限 |
妊娠中にかかりやすい病気(膀胱炎/重症) | 休業(入院加療) |
多胎妊娠 | 必要に応じ、負担の大きい作業の制限又は勤務時間の短縮 多胎で特殊な例又は三胎以上の場合、特に慎重な管理が必要 |
産後の回復不全(軽症) | 負担の大きい作業の制限又は勤務時間の短縮 |
産後の回復不全(重症) | 休業(自宅療養) |
母性健康管理指導事項連絡カード|職場と母性に関する母性健康管理推進サイト
本来は母健連絡カードも診断書も必要ない
労働基準法64条の3項には「使用者は、妊娠中の女性及び産後1年を経過しない女性(以下「妊産婦」という。)を、重量物を取り扱う業務、有害ガスを発散する場所における業務その他妊産婦の妊娠、出産、哺育等に有害な業務に就かせてはならない。」と記載があります。
また65条では「使用者は、妊娠中の女性が請求した場合においては、他の軽易な業務に転換させなければならない。」と記載があります。
そのため本来は妊婦が業務の軽減を求めた場合、会社は求めに応じた措置をとる必要があるので、記載も診断書も必要ないんです。
記載は会社に報告しにくい立場の人の理由付けだったり、会社が不適切な対応をしないようにするためのものなんです。
ただし医師の判断で母健連絡カードに記載してもらえないときは、労働基準法64条と65条の条文で直接交渉をしないといけません。
妊娠初期症状のつらさは周囲には理解されにくいものです。ただ無理に働いて母子に負担がかかると大変ですし、余計に周囲に迷惑をかけてしまうことにもなります。
そのため「自己申告して周囲に疎まれるなら……。」と退職する気持ちもわかります。
妊婦が仕事を休むための事前の根回しの仕方
まーさ
つわりなどの妊娠初期症状が辛くても、仕事を休んだら誰かが自分の仕事を代わりに負担していることを忘れてはいけません。
そのうえで無理をしないため、余計な気を使ってストレスを溜めないため、事前の根回しをきちんとした方が良いです。
上司・同僚に断りを入れておく
妊娠を会社に報告する際は、体調変化で迷惑をかけるかもしれない旨を伝えましょう。
仲の良い同僚や直接の上司には、現在の体調や今後考えられる状態を細かく伝えてください。事前に状況を伝えるだけで周囲の受け入れ方が変わります。
つわりで休む基準を伝えておく
つわりで「起き上がれない」「仕事ができない」「迷惑をかけるかもしれない」などいくつか基準を設けて、相手に今の状態が理解できるようにしましょう。
このような違いがあることを認識してもらうだけで、「つわりで起き上がれない=休む」などが伝わりやすくなります。
休日出勤・残業などで代替する
つわりで休んだときは代休として別の日に出勤したり、(可能な限り)残業する旨を伝えましょう。意志を伝えるだけで単純に休みたいだけとは思われなくなります。
仕事の締め切りなどで周囲に迷惑をかけることもあります。その場合は次は自分が依頼を受けて仕事を引き継ぐなどの意志を示すことで、周囲もサポートをしてくれます。
母性健康管理指導事項連絡カードのまとめ
対処が明確な診断結果に患者本人が診断書や母健連絡カードを望んだ場合、医師法によって医師は発行を拒むことができません。
ところが医療行為が必要な症状だと医師が認識しなければ、医師は診断書も母健連絡カードも書く必要はありません。そんな医師の対応にイライラした妊婦は少なくないでしょう。
妊娠初期症状はそれぞれなので、本来は妊娠がわかった時点で柔軟な働き方ができるように周囲の人が妊婦をサポートすべきですが、そうじゃないのが現状です。そのため仕事関係者への根回しは重要です。
またそれ以前につわりなどの症状を軽減する方法を知っておくことも大切です。つわりを軽減する方法は以下を参考にしてください。
個人でできる対策で効果があるのは、ビタミンB6を毎日一定量摂取することです。米産科婦人科学会と日本産科婦人科学会でも、ビタミンB6を推奨しています。
ただしビタミンB6単一だと栄養が偏るので、ビタミンB6を多く含んでいて、妊婦に必要な栄養素をバランスよく摂取できるサプリを選びましょう。
わたしがおすすめする「マカナ」は他のサプリと違い、栄養成分基準値を満たした栄養機能食品に認定されています。ビタミンB6も1日4粒で2.5mg含まれていて効率良く摂取できます(調べた限り他の妊活サプリは0.3-1.8mgほど)。