一人っ子だとなかなか気付けませんが、年の離れた子を育てていると育児方法の移り変わりの速さに驚きます。
新しい育児書を何冊か読んでますが、息子を生んだ7年前と比べても「えー、当時は良かったのに(ダメだったのに)……。」という育児方法がたくさんあって混乱します。
たとえば「断乳」と「卒乳」の考え方の違いがあります。日本母乳の会によると2002年4月には、母子手帳から断乳という言葉が消え、卒乳が推奨されるようになったとのこと。
子育てを終えた女性の中には、1歳過ぎで授乳中という話を聞くと「あー、まだおっぱいが必要なんだぁ。」と少々ネガティブに思う人もいるかもしれません。
では断乳、卒乳とはどういう意味なんでしょう。今回は断乳と卒乳、似た言葉の「離乳」の意味の違い、またママが授乳をやめる平均的な時期についてお話します。
目次
断乳、卒乳、離乳の違い
まーさ
断乳とは授乳を強制的にやめること
ちなみに、断乳は主に母乳の場合に使う言葉です。哺乳瓶を使った授乳は赤ちゃんの執着が比較的薄いため、母乳よりも比較的簡単にやめることができます。
卒乳とは子供の意思で哺乳をやめること
アメリカ小児科学会(AAP)やWHOでは、2歳まで授乳を続けることを推奨しています。日本小児科学会(JPS)では、授乳の明確な時期は掲げていません。
離乳とは授乳から食事に移行すること
現在の授乳の流れは、生後6ヶ月に離乳が始まると母乳やミルクの摂取頻度が減り、子供の意思で2歳ごろに母乳やミルクを飲まなくなる卒乳を迎えるのが自然だとされています。
卒乳・断乳の平均時期
まーさ
断乳の平均時期
コンビタウンが2014年に行った”断乳時期”に関するアンケート(有効回答数157)では、以下の結果が出ています。
- 1ヶ月-6ヶ月|11人(7.0%)
- 7ヶ月-1歳|43人(27.4%)
- 1歳1ヶ月-1歳半|56人(35.7%)
- 1歳7ヶ月-2歳|30人(19.1%)
- 2歳1ヶ月-2歳半|5人(3.2%)
- 2歳7ヶ月-3歳|5人(3.2%)
- 3歳以降|7人(4.5%)
卒乳の平均時期
また2016年にたまひよが行った”卒乳時期”に関するアンケート(有効回答数261)では、以下の結果が出ています。
- 5ヶ月未満|6%(16人)
- 6ヶ月-11ヶ月|20%(52人)
- 1歳-1歳5ヶ月|41%(107人)
- 1歳6ヶ月-1歳11ヶ月|12%(31人)
- 2歳-2歳5ヶ月|7%(18人)
- 2歳6ヶ月-2歳11ヶ月|7%(18人)
- 3歳|4%(10人)
- 4歳以降|1%(3人)
- 覚えていない|2%(5人)
※カッコ内はおよその人数
卒乳・断乳時期からわかること
まったく別の2つのアンケート結果から、断乳時期と卒乳時期でわかることを見ていきます。
前提として有効回答数の違い、回答者が卒乳と断乳の意味を理解しているか、卒乳と断乳の境が明確かなどは考慮に入れないものとします。
グラフを見ると子供の授乳がなくなる時期は1歳から1歳半が多く、続いて1歳前が多いことがわかります。どちらも平均時期の違いはないようです。
断乳と卒乳で差があるのは2歳以降の授乳継続割合です。2歳以降の断乳の割合が11%、対して2歳以降の卒乳の割合は19%と1.7倍になっています。
ただ、どちらにしてもアメリカ小児科学会やWHOが推奨する2歳までの授乳には足りてません。ちなみに世界の平均授乳期間は4.2歳だそう……日本では考えられません。
世界の授乳平均が4.2歳なのは出所不明(WHO調査?)で、発展途上国を含めた平均なので参考にはならない
ただ、家庭環境やママの体調・状況で卒乳よりも断乳が必要になる場合もありますよね。では、なぜ断乳よりも自然な卒乳が推奨されるようになったんでしょうか。
なぜ断乳から卒乳に変わったのか
まーさ
断乳が推奨されていた理由
昔の育児では、明らかに1歳で赤ちゃんの授乳をやめる断乳が推奨されていました。昔の育児の観点で、断乳が必要だとされていた理由は以下のものです。
- 1歳過ぎの授乳は甘えん坊になる
- 好奇心や自立心が育たない
- おっぱいに執着して止めにくい
- 授乳によって虫歯になりやすい
- 断乳で離乳食を食べるようになる
これらの理由に医学的な根拠はありません。「赤ちゃんの抱き癖がつくと甘えん坊になるし、呼吸器が強くならないよ。」という抱っこの否定と同じようなものです。
卒乳が推奨されるようになった理由
断乳から卒乳を推奨するように変わったのは、以下の理由が考えられます。
- 授乳が親子のスキンシップになる
- 授乳で子供のストレスが軽減する
- 効果的に親子の愛着形成ができる
- 母乳によって免疫効果が続く
こちらは医学的な根拠があります。親子のスキンシップは子供の脳と心の発達に良い影響を与えますし、授乳はわかり易く簡単に行えるスキンシップです。
子供がママに愛情を求める愛着行動は2歳ごろまで続くので授乳で愛着形成ができますし、オキシトシンの効果で子供のストレスも軽減します。
また、母乳に含まれる免疫グロブリンA(IgA)は徐々に減りますが、それでも飲み続けることで免疫効果は期待できます。
ずっと授乳が続くわけではありません。ただこれらの理由で、子供が自分の意思でやめるまでは授乳を続けた方がいいというのが今の考え方なんです。
卒乳・断乳は環境に合わせて選ぼう
まーさ
断乳より卒乳が良いのは間違いないですが、無理して続ける必要はないです。環境や状況で断乳を考えても良いと思います。とくに以下のママは無理しないでください。
卒乳より断乳を選ぶ理由
ママが職場復帰するから
職場復帰を控えてると、卒乳を待つのが難しくなります。赤ちゃんを慣れさせるために、少しずつ断乳を考えないといけないですね。
2人目の子供を作りたいから
すぐ2人目に挑戦したいときは、断乳を選ぶ理由になります。母乳育児をしていると卵巣刺激ホルモンと黄体化ホルモンの分泌が遅れ、生理が始まらない場合があります。
ママの体力が続かないから
母乳の分泌が悪く搾乳に時間と体力を使ったり、夜間授乳で体調を崩すママもいます。そんな人は、健康的な育児のために断乳が必要です。
乳腺炎を起こしているから
子供が乳首を噛んで乳腺炎を起こすと授乳はできません。乳腺炎を繰り返すママもいるので、その場合は断乳をする必要があります。
周囲から断乳強要があるから
「子供は1歳までに断乳が必要!」という圧力を受ける場合もあります。育児方針は家庭内で決めるべきですが、どうしても理想の育児を貫けない家庭環境もあります。
卒乳も断乳も環境に合わせて
完全母乳育児が大切だと言われても、自然な卒乳が大切だと言われても、育児の「ベキ論」でママが無理をする必要はないです。
家庭環境やママの体調で育児の方法が変わることは仕方ありません。そのため、断乳を選択するママも多いと思います。
卒乳が推奨されるのは親子の愛着関係を築いたり、赤ちゃんのストレス軽減のためです。そのため、断乳するなら今まで以上に愛情を注ぐ本質は忘れないようにしたいですね。
断乳したいママは以下を読んで、断乳のやり方とデメリットを押さえておきましょう。