まーさ
かけっこしても足が遅い、ボールに対する反応が悪い、自転車に乗れない……などを見て「運動神経って遺伝だし……。」って諦めてないですか?
実は、運動神経は遺伝ではないんです。
まーさ
いいえ、遺伝するのは運動神経よりも運動能力や身体能力です。運動神経、運動能力、身体能力は違うものです。
運動神経、運動能力、身体能力の違いを知っておけば、今よりも子供の可能性を信じていろんなことに挑戦させてあげられますよ。
目次
運動神経と身体能力の違いとは
まーさ
スポーツができることを「運動神経が良い」「運動能力が優れている」「身体能力が高い」、最近では「フィジカルが強い」などの表現をしますが、これらは意味が違います。
身体能力が高いとは
身体能力とは体格・瞬発力・持久力など身体的資質の総称で、競技の技術とは関係ありません。文部科学省が定義する身体能力の要素は以下のとおりです。
- 筋力
- 筋持久力
- 瞬発力
- 心肺持久力
- 敏捷性
- 平衡性
- 柔軟性
つまり身長や体重に対して適正な骨格や筋力があり、骨格や筋力を活かした走力・跳躍力・持久力などの能力値が高い人を「身体能力が高い」と表現します。
そのため身長が高く必要な筋力があれば、身体能力値は上がります。
運動能力が優れているとは
運動能力とは、身体能力を活かして、走る・飛ぶ・投げるなどのパフォーマンスを上げる能力のことです。
身体能力が高くても早く走れなかったり、遠くまで投げることができないと運動能力が優れているとは言えません。
運動能力を上げるには、身体の動きをコントロールして反復した動きを覚えるなどの調整力が必要です。
運動神経が良いとは
運動神経とは、身体の部位や筋肉の動きをコントロールする(信号を伝える)神経の総称のことです。
運動神経が良い子は、「足が速くて、ジャンプ力があって、サッカーが得意」など運動やスポーツ全般が得意と思われがちです。
ただ足が遅かったり、ジャンプ力がなくても、サッカーボールの扱い方がうまい、走り方がきれい、水泳で息継ぎがスムーズなら運動神経が良いと言えます。
つまり運動神経が良いとは、身体能力を活かす脳の処理判断とその命令による身体のコントロールができている状態のことで、運動神経が良いと運動能力をさらに活かせるようになります。
フィジカルが強いとは
フィジカルは身体や肉体という意味なので、肉体的な強さのみを表す言葉と考える人もいるでしょう。
スポーツトレーナー、コンディショニングコーチを務める山田大介氏は、スポーツメディア「MUSTER」で以下のように述べています。
スポーツにおいてのフィジカルは、今回取り上げたフィジカルコンタクトだけを指すのではなく、各競技において必要な体格(身長、体重、筋肉量など)及び体力要素(筋力、持久力、敏しょう性、平衡性など)だと考えるべきです。
したがって各競技スキルで必要なフィジカルが変わってくるということを理解し、選手はメンタルを含め各種体力トレーニングを実施すること、また競技スキルを強化することがフィジカルの強化につながるということ忘れてはいけません。
【日本人の弱点?】「フィジカル」とはなんなのか | MUSTER
つまりフィジカルが強いとは、スポーツに必要な身体能力を機能させる運動能力を高め、運動神経によってコントロールできた状態ということなんでしょう。
運動神経の良し悪しは親の遺伝?
まーさ
メリーランド大学運動生理学部教授のStephen Roth氏によると、運動神経や運動に関する能力には遺伝するものと遺伝しないものがあり、人によって違うそうです。
運動特性の遺伝率についての大まかな数値をいくつか挙げておきましょう。遺伝率が高ければ高いほど、カウチポテト族とスター選手の違いは、トレーニングではなく遺伝のせい、ということになります。
有酸素運動:遺伝率は約40~50%
筋力および筋肉量:遺伝率は約50~60%
「遅筋線維」と「速筋繊維」の混在率(簡単に言えば、持久力と瞬発力のどちらが優れているかを決定する要素です):遺伝率は約45%
身長:遺伝率は約80%
スポーツでの全般的な競争力:遺伝率は約66%
身体能力の方が遺伝する
数値を見る限り要素の半分以上は遺伝しているように感じますが、よく見ると遺伝の影響が多いのは身体能力です。
子供のころは有酸素運動や筋力などの身体能力には大きな差はありません。
それよりも自由に体を動かせるか、体の部位の運動神経が正しく接続できるかの方が重要で、そこは自分で高めることができるんです。
早くから専門スポーツを始めるとプロになれる?
まーさ
子供が早いうちから運動を始めることと、将来のトップアスリートを目指して専門的なスポーツに打ち込むことはまったく意味が違います。
繰り返しの動作によって怪我をしやすい
スポーツでプロになるには、同じ動作の精度を上げることが重要です。そのため、小さいころから反復練習を繰り返すとプロスポーツ選手にになれそうな気もしますよね。
ところが筋肉や骨格が未発達な子供は、専門的なスポーツの繰り返しの動作によって怪我をしたり、体を痛める可能性も高いそうです。
まーさ
たしかにプロスポーツ選手の中には、スパルタ教育を受けて大成した人もいます。ただ、スパルタ教育で体を痛めてしまった人の方が圧倒的に多いんです。
特定のスポーツだけやるのは避けるべき
早稲田大学スポーツ科学学術院の広瀬統一教授は、早くから専門競技を開始することは科学的な根拠に欠けていると指摘しています。
筋肉や骨格が未発達な子どもは、繰り返しの動作によって障害が引き起こされる可能性が成人に比べて高い。それを回避するには、専門的なトレーニングにかける時間を他の運動に使って、さまざまな部位に負荷を分散させることが有効な手段と考えられます。
(中略)
複数のスポーツ経験は、物の捉え方の幅を広げ、将来に対する的確な見通しを持つ力を養います。この点からも、早くから特定のスポーツの世界に没入してしまうことは避けた方がいいといえるでしょう。
運動神経は親の遺伝ではないですが、プロスポーツ選手になるには優れた身体能力と運動能力が必要です。この3つをかけ合わせた頂点にいるのがプロスポーツ選手です。
そして、身体能力は遺伝です。そのため、運動神経がある程度良くても、優れた身体能力が遺伝しないとプロスポーツ選手になるのは難しいのかなと思います。
親の運動神経は子供に遺伝する?のまとめ
まとめます。親からの遺伝の多くは身体能力で、運動神経とはあまり関係がありません。
そのため、小さな頃からいろんな遊びやスポーツをさせることで、子供の運動神経は伸ばすことができます。
子供に運動をさせるのは、身体を動かす楽しさを理解し、自信を持って将来の可能性を広げるためです。
ほとんどの子がプロスポーツ選手にはなれないので、「わたしがスポーツ苦手だから、どうせこの子も……。」と思わずにまず体を動かす楽しさを教えてあげましょう。
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