物や人に対して「愛着がわく」と言いますが、「
愛着とは、ずっと使い続けているタオルやずっといっしょにいる人など慣れ親しんだ物や人に心を惹かれて、離れがたい特別な思い入れを感じることです。
子供にとって、初めて愛着がわく存在は親(養育者)です。それは、単純に慣れ親しんだ存在というだけじゃありません。
何もできない子供にとって、愛着がわく人と関係を築くことは生きるために必要な支えで、支えがあるから子供の心身は成長します。
そのため、子供は親に対して積極的に愛着がわく行動をとり、愛着関係を築こうとします。親は子供の行動に応えることで、愛着関係をいっしょに築く必要があります。
では子供は親にどのような愛着行動をとり、親はどのように応えればいいんでしょうか。
目次
子供の愛着行動とは
まーさ
愛着行動とは、ストレスのある状況で愛着を抱いている特定他者に親密さを求める行動のことで、心理学者ジョン・ボウルビィ(John Bowlby)が「愛着理論(Attachment theory)」で提唱したものです。
子供の愛着行動は生後6ヶ月-2歳まで行なわれ、そ以下の3つに分類されます。
発信行動
発信行動とは、子供が愛着を抱いている対象の注意を引く行動です。
赤ちゃんや子供は泣いたり、表情を作ったり、声を出したり、手足を動かすなどしてママの注意を引く発信行動をして愛着関係を築こうとします。
接近行動
接近行動とは、子供が愛着を抱いている対象に近づいていく行動です。
赤ちゃんや子供はママに抱っこをせがんだり、後追いしたり、寝てるときに擦り寄ったりなどの接近行動をして愛着関係を築こうとします。
定位行動
定位行動とは、子供が愛着を抱いている対象を探す行動です。
赤ちゃんや子供はママのいる方を目で追いかけたり、ママの声がする方に顔を向けるなどの定位行動をして愛着関係を築こうとします。
親子の愛着関係を築くための要素
まーさ
子供にとって、愛着は簡単に感じられるものじゃありません。とくに乳幼児は精神的にも身体的にも機能が未熟なので、自ら考えて行動して愛着関係を築くことはできません。
そのため子供との愛着関係を築くには、親(養育者)に以下の行動が求められます。
子供に栄養を与えること
乳幼児は、生きるために栄養を与えてもらう必要があります。もちろん目の前にミルクを出されても自分で飲むことはできないので、授乳が必要です。
授乳は子供にオキシトシンの分泌を促すだけでなく、ママにもオキシトシンが分泌されるため、母乳生成の促進や子供に対する愛着の増加につながります。
子供とスキンシップを取ること
子供の肌に触れると程良いぬくもりを与え、オキシトシンが分泌されます。オキシトシンは単純に触るよりも、一定のリズムで優しく触れ合うことで分泌が促進されます。
たとえば子供を寝かしつけるときの背中をトントンする行為、泣いている子供を泣き止ませるときに頭を撫でる行為、腹痛の子供のおなかをさする行為などがそれにあたります。
子供の行動に反応すること
子供は愛着行動でストレスを解消するんじゃなく、親密さを確認することでストレスを解消します。そのため、親は子供の愛着行動に対して適切に応えることが大切です。
子供の愛着行動がストレス解消につながると子供に自己肯定意識が芽生え、自発的な行動を伴った発達につながります。
子供に行動を促すこと
子供に自己肯定の意識が芽生えた場合、ママは行動に移すように促さなければいけません。その促しは、愛着関係にある親とのコミュニケーションを意味します。
自発的な行動に慣れていない子供は、愛着関係にあるママを安全基地に見立てることで、一定の距離においては安心して自発的な行動をとれるようになります。
何度も繰り返すこと
愛着関係を形成するには、上記の要素を常に何度も繰り返す必要があります。
子供の心の成長のためには、常に安心感を与えてくれる存在、ストレスを解消できる存在、触れて見守ってくれる存在がいることを子供自身が認識できなければいけません。
愛着関係の安定型・不安定型
まーさ
子供と愛着関係を築くことができれば子供は安定しますが、うまく愛着関係を築けないと不安定な子になります。それぞれ以下のタイプに分かれます。
Main, M., & Solomon, J. (1986). Discovery of an insecure-disorganized/disoriented attachment pattern: Procedures, findings and implications for the classification of behavior. In T. B. Brazelton, & M. Yogman (Eds.), Affective development in infancy (pp. 95-124). Norwood, NJ: Ablex.
愛着関係の安定型
愛着関係の安定型は、愛着関係が築かれたママを安全基地と認識しているので、安心して自発的に行動するタイプのことです。全体の55-65%が安定型になります。
安定型の子供は保育園でママと離れると泣きぐずりはしますが、再会すれば喜んで迎えます。またママに接触したがりますが、気持ちが安定すれば自発的に行動ができます。
愛着関係の不安定型|回避型
愛着関係の回避型は、ママにあまり興味を示さず自発的な行動を取り、ママと離れても泣いたり悲しんだりしないタイプのことです。全体の25%が回避型になります。
回避型の子供はママに再会しても避けたり、無視することがあります。
このような子供はママのコミュニケーションが不足している場合に見られることがあり、赤ちゃんの場合はサイレントベビーになったり、成長して反抗が強くなる可能性があります。
愛着関係の不安定型|両価型
愛着関係の両価型とは、子供が自発的な行動を取らず、常にママの動きを気にしているタイプのことです。全体の10-15%が両価型になります。
両価型の子供はママに再会した際に、接触をしたがりつつも接触を拒絶するなど両端の行動を取ります。また急に怒りだしたり、突飛な行動を取ることもあります。
このような子供は、ママの過保護や過干渉の差が激しい場合に見られることがあり、人見知りの恐怖症が強く出たり、成長してから「不安障害」を発症する可能性もあります。
愛着関係の不安定型|未組織/無方向型
愛着関係の未組織/無方向型とは、親からの愛着を感じることができず、変わった行動を取るタイプのことです。全体の10-15%が未組織/無方向型になります。
未組織/無方向型の子供は顔をそむけながらママに近づいたり、 ママを見て凍りついたような反応をするなど混乱した行動を取ります。
このような子供は、ママが精神的に不安定な場合や親などから虐待を受けているときに多く見られ、将来的に「境界性人格障害」などを発症する可能性もあります。
「親はなくとも子は育つ」の本当の意味
まーさ
子供が愛着関係を築くのは親で、ママがその対象になることが多いです。ではシングルファーザーや親がいない場合は、子供に愛着関係を築く対象は現れないんでしょうか。
「親はなくとも子は育つ」ということわざがありますが、これは単純に親がいなくても子供が成長するという意味じゃありません。
「産みの親がいなくても、周囲の人の心づかいと自分自身の努力があれば子供はどうにか育っていける」という意味で、世間のあたたかさと子供のたくましさを表す言葉です。
つまり愛着関係を築く対象は子供に対して愛着を抱ける人なら良く、必ずしも親の必要はないんです。
もちろんこれは、親の育児放棄を肯定しているわけじゃないですし、親の愛情が必要ないという話でもありません。
たとえ周囲の人の心づかいがあり、誰かが親代わりをしてくれても、本当の意味でお互いが信頼しあい愛着関係を築くことは大変なことです。
本当の親子関係がある方が形がある分、愛着がわきやすく、結びつきも強くなるのかなと思います。また、親が我が子を可愛いと思う要素も自然に備わっています。
愛着関係を形成しやすい相互の対象がいることは幸せなことです。そのため、わたしたちは実の子との愛着関係を築けることを幸せに思い、子供にもそう思ってもらえる育児を心掛けるべきなんだと思います。
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