保育園によって子供を預けられる時間は多少変わりますが、目安は朝の7時から夕方の19時ごろまで、時間は以下の様に決められています。
- 保育標準時間……保護者が月に120時間以上の勤務がある場合、保育時間のうち最大11時間預けられる
- 保育短時間 ……保護者が月に64時間-120時間未満の勤務がある場合、保育時間のうち最大8時預けられる
仕事に生きがいを感じているママ、仕事を続けなければいけないママが、育児と仕事を両立するにはどこかで時間の割り切りが必要です。
もし今の仕事を今の立場で続けたいなら「育児時短勤務」で仕事の時間を減らし、育児と仕事を調整する方法を検討しましょう。
- 育児時短勤務ってどういう制度?わたしも使える?
- 育児時短勤務をすると給料とか残業はどうなるの?
- 育児時短勤務をするのに注意した方がいいことって何?
育児時短勤務は育児と仕事と生活を考慮すれば、有効に活用できます。もちろんうメリットとデメリットがあるので、よくわからない人はこの記事を最後まで読んでください。
育児時短勤務の利用に向いている人、向いていない人がわかりますよ。
目次
育児時短勤務制度を使う条件
まーさ
育児時短勤務とは
育児時短勤務とは、労働者が育児を理由として1日の労働時間を短く(5時間45分から6時間まで)できる制度のことです。
育児時短勤務は「育児・介護休業法」で定められた法人の義務で、就業規則にも規定する必要があります。対象者は以下の条件が必要です。
- 6時間を超える週3日以上の所定労働日がある労働者
- 3歳未満の子ども(3歳の誕生日の前日)を持つ労働者
- 雇用形態は関係がない
育児時短勤務は所定労働時間が6時間超かつ週3日以上の所定労働日数があれば、1年以上雇用されている契約社員やパートタイマーでも適用可能です。
たとえば休憩1時間を挟む午前9時-午後6時の8時間労働のママが育児時短勤務制度を活用すると、勤務時間は午前9時-午後4時です。
労働基準法では6時間超の勤務時間は45分休憩、8時間超の勤務時間は60分休憩が義務ですが、時短勤務は会社が許可するなら休憩なしで6時間連続勤務もできます。
育児時短勤務は子供が何歳まで?
時短勤務は子供が3歳未満の場合に使えますが、子供がそれ以上の年齢の場合は会社の裁量によります。中には小学校卒業まで対象の会社もあるようです。
育児時短勤務を活用すると以下の働き方が可能です。以下は3歳未満の保育園児の例なので、3歳以上の子供が通う幼稚園だと対象にならない人が多いでしょう。
育児時短勤務の例1)
- STEP.1朝8時に子供を保育園に送り、9時に出社。
- STEP.29時から12時まで働き、12時から13時まで休憩して、また13時から16時まで働く。
- STEP.317時にスーパーに寄ってから17時30分に子供を保育園に迎えに行き、18時過ぎに帰宅(保育標準時間)。
育児時短勤務の例2)
- STEP.1朝7時30分に子供を保育園に送り、8時に出社。
- STEP.29時から14時まで働く。
- STEP.3家に帰って遅めの昼食と家事を済ませ、17時30までに子供を迎えに行って18時に帰宅(保育短時間)。
このように時短勤務と保育時間をうまく合わせることで、今より仕事と育児を両立できる生活スタイルがいくつか思い浮かぶはずです。
育児時短勤務の給与など労働条件は?
まーさ
育児時短勤務の給与の扱い
育児時短勤務を使っても、育児休業給付金や出産手当金のような手当はありません。会社も短縮した時間には給与保証しないので、単純に給与は減ります。
時短勤務の給与計算は、標準報酬日額を時間で割った金額で計算することが一般的です。
育児時短勤務の残業の扱い
たとえば育児時短勤務の勤務時間が9時-16時の場合に18時まで働いた場合、2時間残業したことになるんでしょうか。
労働基準法上の時間外割増賃金は、1日8時間または週40時間を超える労働に対して標準報酬日額を時間で割った金額を最低1.25倍にした支払い義務が生じます。
そのため1日8時間or週40時間を超えない時間外労働の時間外割増賃金は発生しません。
ただし休日出勤をして労働を行った場合は、時間単価を1.35倍にした時間外割増賃金が発生します。
育児時短勤務を利用する労働者には所定外労働が免除されるので、会社と労働者の双方が望まない限り残業はできないはずです。
育児時短勤務の社会保険料の扱い
育児時短勤務のメリットの1つが社会保険料の取り扱いです。
仮に育児時短勤務で給与が30万円から20万円に減った場合、労働者と会社が支払うべき社会保険料額は標準報酬月額20万円に基づく社会保険料です。
ところが年金事務所に対して「3歳未満の子を養育する場合の厚生年金保険料の特例措置」の申請を提出すれば、標準報酬月額30万円に基づく社会保険料を支払っていると見なされるので、将来の年金受給額は減額されません。
日経新聞に記載されていた事例では、以下のように考えます。
月24万円の給与が22万円に下がった場合、厚生年金保険料は1万9,694円から1万8,053円に下がりますが、育児時短勤務中の労働者は1万9,694円を払っているとみなされます(2016年9月現在)。
この特例は2年前まで遡って申請できるので、時短勤務の申請が遅れても育児時短勤務の実態に合わせた恩恵が受けられます。詳細は社会保険労務士、税理士に尋ねてください。
育児時短勤務の各種手当の扱い
育児時短勤務は労働者の権利です。そのため女性に限らず男性も取得できます。
また育児時短勤務に対して、会社は「不利益行為の禁止」が原則です。そのため労働者に対して昇進や昇格・昇給など人事考課で不利益な評価をすることは禁止されています。
同様に皆勤手当、住居手当、家族手当、資格手当がある場合、それらを不当に削ることも不利益行為に当たます。
- 労働者を解雇すること
- 契約社員などにおいて、期間など契約更新をしないこと
- 労働契約内容の変更を強要すること
- 制度の使い方を限定すること(自宅待機など)
- 減給・降格・不利益な人事を行うこと
- 賞与・退職金などに不利益な算定を行うこと
ただしある特定の業務を行う役職者に対して支払う職務手当は該当しません。
たとえば営業課長が時間外の電話対応ありで「職務手当」が支払われていた場合、育児時短勤務でこの業務が行えなければ、手当削除の対象になります。
育児時短勤務の賞与・退職金の扱い
賞与や退職金に関しても、不利益行為の禁止を原則に考えます。
育児・介護休業法の賞与・退職金の項目には「賞与及び退職金の算定に当たっては、短時間勤務期間中も通常勤務をしたものとみなして計算します。」という1文があります。
これは育児時短勤務の間は以前の賞与から減額してはいけないという意味じゃなく、育児時短勤務で賞与算定項目を変えてはいけないということです。
そのため賞与算定のベースが標準報酬月額の会社だと、育児時短勤務で給与が30万円から20万円に減った場合、同様に賞与や退職金の計算基準も減額されます。
育児時短勤務を使うメリット・デメリット
まーさ
育児時短勤務のメリット
生活スタイルを考えられる
育児時短勤務を使えば育児時間を確保できるので、保育園の保育時間(保育標準時間と保育短時間)を合わせて考えると、以下の様にいろんな生活スタイルを考えられます。
- 時短勤務の例1)
朝8時に子供を保育園に送り、9時に出社。9時から12時まで働き、12時から13時まで休憩して、また13時から16時まで働く。17時にスーパーに寄ってから17時30分に子供を保育園に迎えに行き、18時過ぎに帰宅(保育標準時間)。 - 時短勤務の例2)
朝7時30分に子供を保育園に送り、8時に出社。9時から14時まで働く。家に帰って遅めの昼食と家事を済ませ、17時30までに子供を迎えに行って18時に帰宅(保育短時間)。
キャリアを継続できる
正社員の場合、パートや契約社員にならずにキャリアを継続して勤務時間を短縮できるので、フルタイムに復帰した際は新たに仕事に力を注げます。
また仕事に生きがいを感じているママは、充実感を持って生活できます。
社会保険料が標準時間でみなされる
先に書いた通り給与が減っても、「3歳未満の子を養育する場合の厚生年金保険料の特例措置」の申請を出していれば、標準時間の社会保険料を支払っていると見なされます。
育児時短勤務のデメリット
収入が減ってしまう
育児時短勤務で仕事時間を短縮すると、その分収入も減ります。これまで8時間勤務をしていた人が6時間勤務になった場合、単純計算で収入は4分の3ほどになります。
さらに職務手当が付与されていた場合、時短勤務で職務を全うできないときは該当手当もカットされます。
重要な仕事を任されない
時短勤務をするので、任される仕事は「責任が重くない仕事」「短時間で終わる仕事」「ルーチンワーク」などが多くなる可能性があります。
時短勤務を活用する人に対する不利益行為は禁止ですが、責任がある仕事が任されない分キャリアパスや将来の給料に支障が出る恐れはあります。
昇進・昇給機会を逃す
時短勤務には不利益行為があってはいけませんが、任せた仕事で結果を出せない場合は昇進・昇給の機会を逃す可能性があります。
「責任が重くない仕事」「短時間で終わる仕事」「ルーチンワーク」では、仕事の大きな成果は残しづらくなりますね。
同僚などに迷惑をかける
育児時短勤務を使うことで、仕事を同僚や上司にしわ寄せが行きます。そのため同僚や上司に負担や迷惑をかけたり、それがストレスだと感じます。
仮に会社側が時短勤務の環境整備をしても、時短勤務に不満を持っている同僚や上司の心まではコントロールできません。
コミュニケーションが取りづらくなる
時短勤務をすると短い時間で結果を残したり、仕事のやり残しをないように努めなければいけません。
そのためこれまでコミュニケーションの場になっていた飲み会や談笑の機会も減り、人間関係にストレスを感じる可能性があります。
育児時短勤務の注意点と確認事項
まーさ
就業規則に記載されているか確認する
育児時短勤務は会社の就業規則に記載されてなければいけませんし、は社員の就業規則閲覧を禁じることはできません。
就業規則に育児時短勤務が記載されていない、そもそも就業規則が存在しない場合は、会社が時短勤務を認識してない可能性があるのでトラブルの原因になります。
また就業規則の閲覧を禁止する会社とは、トラブルが起こる可能性があります。会社や同僚とトラブルを起こしたくない人は、穏便に転職を検討して良いかもしれません。
育児に対する社内意識の確認する
出産や育児に対して、会社や同僚がどんな意識を持っているかを確認しましょう。と言っても、直接聞きにくい場合もあります。
その場合は他の同僚が産休や育休をしっかり取得できたかなどを調査し、育児時短勤務に対する会社の意識を考えましょう。
また仲の良い同僚を通じて、社内の育児に対する意識を何気なく聞いてみても良いでしょう。「迷惑」「うざい」と思われていないか、ちょっと怖いですが……。
自分の仕事を誰が代わりに行うのか確認する
自分が育児時短勤務をした場合に誰がその穴を埋めるのか、穴を埋める人の現在の仕事の状況がどうかも知っておくと良いでしょう。
育児時短勤務を切り出した際に、自分の仕事がどうなるかは他人事じゃありません。
「会社が決めることだから後は知りません。」というスタンスだと、せっかく時短勤務を使っても人間関係で仕事にやりづらさを感じ、会社を辞めざるを得ないこともあります。
育児時短勤務を上手に使うために
育児時短勤務に対する会社、同僚・上司のスタンスは企業文化で大きく違います。
表向きは育児支援や産後の職場復帰に協力的な会社でも、それが企業文化になってなければ経営者と社員に温度差があります。
職場復帰のしやすさで就職先を選ぶ人はほとんどいません。そのため運が良ければ育児時短勤務をフル活用できますが、運が悪いと他の選択も検討しなければいけません。
時短勤務を使って同じ立場で仕事を続けるなら、十分な根回しや同僚・上司の評価が必要です。難しいならパートになったり、転職するなどストレスが少ない選択が賢明です。
育児時短勤務で過度にママが保護されてると思って行動すると、社内から反感を食らうかもしれません……。
「法律で決められてるんだから、後は誰がどう思うかわたしには関係ありませーん。」という強靭な精神の人なら、とくに何も言うことはないです(^_^;)
以下の記事を読む限り、育児と仕事の両立の苦労は日本だけではないようですね。
アメリカの病児保育事情: 「病児保育」は存在せず、子供が病気なら父母が休む。「看護休暇」も20州で法的には認められている。しかし会社を休みづらい状況は日本と同じ。休み過ぎでクビになるリスクは日本より高いかも