対象者限定!アンケ回答者全員に5000円ギフト券

わたしってハイリスク妊婦?妊娠リスクスコアの評価と対策

妊婦は妊娠の危険にどう備えるの?

まーさ

わたしってハイリスク妊婦になるのかな……。ハイリスク妊娠ってどうやって判断すればいいの?

「妊娠や出産に妊婦や胎児のリスクはつきもの!」と頭ではわかっていても、やっぱり妊娠が怖い人は多いと思います。

ただ実際は日本の周産期医療は優秀で、2014年の赤ちゃんの周産期死亡は1,000人当たり2.5人、2013年の妊婦の妊産婦死亡が10万人当たり3.4人しかいません。

周産期死亡とは妊娠満22週以後の死産と早期新生児死亡を合わせた数のことで、1000対(1000人中n人)で表します。妊産婦死亡とは、妊娠期+妊娠終了後満42日未満に妊娠・出産に関する病気などが原因で死亡する妊婦の数のことで、10万対(10万人中n人)で表します。

ただし健康な人でもリスクはありますし、最初から妊娠・出産に高いリスクを伴う人もいます。これを「ハイリスク妊娠」と呼び、近年の周産期医療ではよく使われる言葉です。

  • ハイリスク妊娠ってどんな妊娠のことなの?
  • 妊娠のリスクってどうやって判断すればいいのかな。
  • もしハイリスク妊娠だったらどうすればいい?わたし大丈夫?

ハイリスク妊娠に不安を持ってる人は、妊娠リスクスコアによる危険判定の方法を知っておきましょう。まずは自分の状態を正しく知ることが大切ですよ。

ハイリスク妊娠とは

まーさ

ハイリスク妊娠って何?どうやってハイリスクだってわかるの?

ハイリスク妊娠とは、妊娠から分娩の間に母子に妊娠に基づく病気や死亡などのトラブルが起こる可能性がある妊娠状態です。

ハイリスク妊娠のまま出産を迎えることを「ハイリスク出産」、ハイリスク妊娠になる妊婦を「ハイリスク妊婦」と言います。

妊娠は女性に与えられた権利ですが、同時に胎児に責任が伴います。そのため自分の身体と赤ちゃんのために、リスクを理解して妊娠に向き合う必要があります。

このハイリスク妊娠を定義する妊娠リスクの評価「妊娠リスクスコア」があります。

妊婦の条件から個々の妊娠リスクを把握してリスクに応じた医療施設の役割分担を明確にし、より効率的な施設利用を促すためにも妊娠リスクスコアは重要な考え方です。

日本では愛育病院の中林医師が中心となって厚生労働科学研究班で日本の現状に合った項目や重み付けをして、以下の妊娠リスクスコアを作成しています。

妊娠リスクスコア(初期)

妊娠初期は妊婦の基本情報、病気などの既往歴、産婦人科でも既往歴、前回の分娩歴を確認して妊娠リスクスコアをチェックします。

ハイリスク妊婦の評価と周産期医療システム|日産婦誌59巻9号

診療所、個人病院における「妊娠リスクスコア」の適応評価に関する調査報告|日本産婦人科医会

妊婦の基本情報

年齢15歳以下の若年妊娠である1点
35歳以上の高齢妊娠である1点
40歳以上の高齢妊娠である5点
経産数初産婦である1点
身長妊婦の身長が150cm未満である1点
妊娠前体重BMI値が25以上ある(65-79kg)1点
体重が80-99kgである2点
体重100kg以上の肥満体型である5点

既往歴(内科疾患合併など)

高血圧高血圧の投薬中である5点
心臓疾患NYHAクラスIまたはIIである1点
NYHAクラスIII以上である5点
内分泌疾患管理良好な甲状腺疾患である1点
管理不良な甲状腺疾患である2点
SLEである2点
糖尿病、腎疾患糖尿病で食事療法のみ行っている1点
慢性腎炎などの疾患である2点
糖尿病の薬物療法中である5点
その他肝炎である1点
先天性股関節脱臼である1点
細胞診異常(classIIIb以上)である1点
麻疹、風疹、水痘などの感染症である1点
予防接種をしたことがない1点
精神神経疾患である2点
気管支喘息である2点
血液疾患である2点
Rhマイナスでてんかんである2点
てんかんである2点
虐待を受けた既往がある2点
抗リン脂質抗体症候群である5点
HIVの陽性である5点
嗜好たばこを1日20本以上吸う1点
毎日お酒を飲む1点
薬物を乱用している2点

産婦人科既往歴

妊娠歴軽症の妊娠高血圧症候群だった1点
難産だった1点
巨大児だった1点
産後出血多量だった1点
子宮筋腫だった1点
円錐切除術を行なった1点
何度か流産をしている2点
早産だった2点
死産だった2点
新生児死亡だった2点
胎児発育不全(FGR)だった2点
帝王切開を行なった2点
大きな子宮筋腫があった2点
子宮手術を行った2点
重症の妊娠高血圧症候群だった5点
常位胎盤早期剥離だった5点

妊娠リスクスコア(後半期)

妊娠後半期は、すでに妊娠をしている妊婦が現在の妊娠経過を確認して、妊娠リスクスコアをチェックしていきます。

現在の妊娠経過

妊婦健診28週以降で妊婦健診が初診、または3回未満1点
分娩時に初診を受けた2点
妊娠成立遺伝子、染色体異常の疑いがある1点
予定日が不明な妊娠である1点
多胎妊娠の減数手術を受けている1点
遺伝子、染色体異常が確定している2点
人口排卵による妊娠である2点
多発排卵による妊娠である2点
卵巣切除後の排卵である2点
顕微授精(ICSI)を含む生殖補助医療(ART)による妊娠である2点
感染症B型肝炎(HB)が陽性である1点
性病・性感染症(STD)治療中である2点
HIVの陽性である5点
Rh陰性血液型がRhマイナスである2点
Rhプラスに感作されたRhマイナスである5点
多胎妊娠胎児がDD双胎の双子である2点
胎児がMD双胎の双子、三つ子以上である5点
糖尿病妊娠糖尿病(GDM)である1点
インスリン療法中である5点
糖尿病(DM)と合併している5点
出血妊娠20週未満で出血がある1点
妊娠20週以後で出血がある2点
前期破水・切迫流産妊娠34-36週の前期破水(PROM)である1点
妊娠34週以前の前期破水(PROM)である2点
切迫早産である2点
妊娠高血圧症候群軽症妊娠高血圧症候群である1点
重症妊娠高血圧症候群である5点
子癇やヘルプ症候群である5点
羊水量AFI5.0cm以下の羊水過少である2点
羊水過多である5点
胎盤低位胎盤である1点
前置胎盤である2点
帝王切開の既往があり前置胎盤である5点
胎児の発育2SD以上の巨大児である1点
-2SD以下の胎児発育不全(FGR)である2点
胎位児頭骨盤不均衡(CPD)の疑いがある1点
骨盤位や横位である2点

妊娠リスクスコアの評価方法

まーさ

妊娠リスクスコアでだいたい何点かわかったけど、これをどうやって評価すればいいのかな。

判定には専門用語や検査が必要な項目もあるので自己評価は難しいです。そのため医師と話したうえで、妊娠リスクスコアを診断します。

低リスク・中程度リスク・ハイリスク群の割合

妊娠リスクスコアは0-1点が低リスク群、2-3点が中程度リスク群、4点以上がハイリスク群に分類されます。

中林医師らが周産期センターの2804事例及び、診療所・個人病院の2808事例に対する妊娠リスクスコアをまとめたものが以下の表です。

妊娠リスクスコアの検討

診療所、個人病院における「妊娠リスクスコア」の適応評価に関する調査報告|日本産婦人科医会母子保健部

妊娠初期までのスコアでは低リスク群が30.5%、中程度リスク群が40.0%、ハイリスク群が29.5%で、診療所の事例では低リスク群が59.5%、中程度リスク群が27.1%、ハイリスク群が13.4%です。

妊娠リスクスコアによる周産期予後判別

妊娠初期の妊娠リスクスコアと妊娠後半期の妊娠リスクスコアの合計値から低リスク群、中程度リスク群、ハイリスク群に起こるリスクの確率を見ていきましょう。

診療所、個人病院における「妊娠リスクスコア」の適応評価に関する調査報告

低リスク群中程度リスク群ハイリスク群
帝王切開(予定+緊急)の割合4.3%15.7%43.6%
緊急帝王切開の割合3.4%6.6%17.8%
分娩時大量出血の割合3.3%9.4%21.6%
輸血の割合0.6%0.9%3.3%
早産(28週以前)の割合0.4%1.1%4.1%
早産(36週以前)の割合2.3%8.2%25.3%
超低出生体重児(1000g未満)の割合0.4%1.0%3.9%
極低出生体重児(1500g未満)の割合0.5%0.6%8.0%
低出生体重児(2500g未満)の割合4.2%12.0%33.1%
重症新生児仮死(APS4点以下)の割合1.3%2.2%7.3%
軽症新生児仮死(APS7点以下)の割合4.3%8.3%18.8%
NICU入院の割合2.8%7.4%21.6%
児死亡(死産+新生児死亡)の割合0%0.3%1.6%

輸血率、早産率(28週以前)、超低出生体重児率(1000g未満)、極低出生体重児率(1500g未満)、重症新生児仮死率(APS4点以下)、児死亡率(死産+新生児死亡)には低リスクと中度リスクに違いはありませんが、それ以外は明確な違いがあります。

妊娠リスクスコアの判断

ハイリスク妊婦の評価と周産期医療システム|日産婦誌59巻9号

妊娠リスクスコア0-1点|低リスク群

妊娠リスクスコアが0-1点の場合は、低リスク群です。

前述した5612例では低リスク群の帝王切開率は4.3%、分娩時に1リットル以上の出血多量は3.3%、37週未満の早産率は2.3%、NICUへの入院率は2.8%となっています。

妊娠リスクスコア2-3点|中等度リスク群

妊娠リスクスコアが2-3点の場合は、中等度リスク群です。

前述した5612例では中等度リスク群の帝王切開率は15.7%、分娩時に1リットル以上の出血多量は9.4%、37週未満の早産率は8.2%、NICUへの入院率は7.4%となっています。

妊娠リスクスコア4点以上|ハイリスク群

妊娠リスクスコアが4点の場合は、ハイリスク群です。

前述した5612例ではハイリスク群の帝王切開率は43.6%、分娩時に1リットル以上の出血多量は21.6%、37週未満の早産率は25.3%、NICUへの入院率は21.6%となっています。

ハイリスク妊娠への対処の仕方

まーさ

わたしは中等度リスク群だった……。これってやっぱりリスクが高いのかな……。

もちろん中等度リスク群は低リスク群よりもリスクはありますが、それよりも大切なのは何のリスクがあるかを知ることです。

自身の妊娠リスクを把握する

たとえばわたしの場合、2人目の娘はちょうど35歳の妊娠で帝王切開の既往があったので、妊娠リスクスコアは3点の中程度リスク群です。

ここで「低リスクじゃなくて中程度リスクか……。」と表面的な受け止め方をしないで、1つ1つのリスク要因を医師に確認して安心材料を増やしてください。

妊娠管理の基本として初診時に家族歴、既往歴、妊娠分娩歴、生活習慣などの問診、肥満度、血圧、尿蛋白などの検査からハイリスク群のスクリーニングが行われます。

ハイリスク妊娠対応の病院に移る

ハイリスク妊娠だと判断された場合は、早めに医師と相談してリスクに対応できる設備が整った総合病院に移ることも考えましょう。

胎児や新生児に影響がある場合はNICU(新生児集中治療室)、妊婦に影響がある場合はMFICU(母体胎児集中治療室)を備えた病院を選びます。

MFICU・NICUを持つ総合周産期母子医療センターや地域周産期母子医療センターも押さえておくと、ハイリスク群でもスムーズな移転のきっかけにできます。

普段の生活習慣に気をつける

自分の妊娠リスクを把握できていれば、自然とこれまでの悪い生活習慣を改めようと考えるはずです。

生活習慣の乱れは妊娠初期にはない妊娠リスクを生む可能性もあります。そのため低リスク群でも、良い妊娠・出産にこだわって生活習慣を見直してください。

なお医師からハイリスク妊娠だと診断された場合は、病気の発症予防や症状の悪化を防止する生活指導が行われます。

さらに病気の療養や管理された生活指導のために早期入院の可能性もあります。そのため、いつ入院を告げられても良いように心と身体を準備しておきましょう。